5年に一度の和牛のオリンピック開催!“和牛日本一”鹿児島の畜産の強さの理由に迫る | どっこいしょニッポン

5年に一度の和牛のオリンピック開催!“和牛日本一”鹿児島の畜産の強さの理由に迫る

No.369

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※撮影時のみマスクを外していただきました。

5年に一度行われる「和牛の祭典」、全国和牛能力共進会(全共)が10月6日〜10日に鹿児島県で開催される。開催は今年で12回目。前回の宮城大会では、鹿児島県内各地から選抜された30頭を出品。鹿児島県は、9部門のうち4部門で1位を受賞、出品牛すべてが上位6位に入賞し、総合優勝(団体賞)に輝いた。

鹿児島県の肉用牛および豚の飼育頭数は、現在全国1位、農業産出額の約6割を畜産が占めている。鹿児島がここまで畜産に強いのはなぜか?
その理由探しに、鹿児島県まで飛んでみた。



この記事では、【行政】【農高生】【生産者】の角度からその理由に迫る。
取材前夜、鹿児島空港へ降り立ち、ホテル近くのスーパーで肉売り場を覗いてみたところ、「黒毛和牛」と「国産牛」がまず目に入った。もちろん、どちらも鹿児島県産だ。

読んでくださっている方が畜産県の方であれば、「それがどうした?」と思われるかもしれないが、少なくとも関東・関西の都心部では、まず外国産、そして国産牛、売り場の端っこに申し訳程度に和牛のパックがある、という構図が一般的である。

すでに鹿児島県の和牛文化に圧倒されながら、翌朝、鹿児島県庁を訪れた。
正面玄関を入るや、この看板。

二階へ上がるエスカレーターは西郷さんと共に、県産の焼酎の瓶で埋め尽くされている。階段使用が推奨されている模様。



鹿児島県農政部畜産課
全国和牛能力共進会推進室
(第12回全共鹿児島県実行委員会事務局)
室長 福重哲也さんに、話を聞いた。

「鹿児島県での全共開催は、昭和45年、第2回大会以来52年ぶりの開催となります。2回目の開催地となるのは全国でも当県が初めてで、私たちとしても和牛の美味しさを国内外に改めて発信する絶好の機会だと思っています。また、肉用牛の改良推進や農家の生産意欲の向上、新たな担い手の確保、生産基盤の維持・拡大など畜産の振興につながると考えています」

宮城県で開催された前回大会では約40万人が来場。県内外から訪れる多くの方に鹿児島の魅力をアピールできる場でもある。

では今大会の推しポイントはどこにあるのか?


一般来場者にも嬉しい
鹿児島全共の“美味しい”楽しみ方

【種牛の部 会場】
会場は2会場。メインとなる「種牛の部」は審査会場と催事会場から成り、牛の審査や和牛の魅力はもちろん、鹿児島の食・観光・文化などが楽しめるよう企画されている。

「和牛振興エリア」
・全国銘柄牛のPR・試食(無料)
・鹿児島黒牛のバーベキュー(有料)

全国の銘柄牛の試食コーナーが用意され、バーベキューコーナーでは、鹿児島黒牛の5等級の肉を通常より格安で食べられるよう計画中。試食とバーベキューは宮城大会でも行列ができていた人気コーナー。和牛の祭典、まずは食べて楽しみたい。

・和牛PR館「かごうしママミュージアム」

VRを使って哺乳瓶で子牛にミルクをあげる様子を見るなど、バーチャルに牛舎体験ができ、子供たちが楽しみながら和牛について学べるブースも予定されている。

他にも鹿児島県の農林水産物や特産品などが購入できる「鹿児島県PRエリア」などがある。

▲鹿児島大会のマスコットキャラクター「かごうしママ」は子供たちにも人気。


審査基準も時代に合わせて変化
鹿児島大会ならではの審査ポイント

牛の審査は、体形の良さや発育状況を競う「種牛の部」(繁殖のための牛が集結)と肉質等を競う「肉牛の部」(肥育牛が集結)に分かれる。

鹿児島大会での審査基準は?

「全共の目的は牛の美人コンテストではなく和牛の改良推進にあるため、今後目指したい目標というものがあります。例えば肉牛の部なら、これまではサシが多く入った牛が上位に入りやすい傾向にありましたが、今大会では昨今の消費者の傾向を鑑みて、枝肉の肉量・肉質・脂肪の質が同等(1:1:1)に評価され、オレイン酸等のうまみ部分、食べて美味しい肉という部分の審査に、宮城大会以上に重点が置かれるようになりました」

高校・農大生のための「特別区」が新設

「宮城大会では付帯行事として「復興特別区(高校の部)」が実施されましたが、今回は出品区として「高校及び農業大学校の部」が新設されました。和牛を飼育する高校および農業大学校を対象として、その学校で生まれ育てた若雌の出品と取組み発表の総合審査となります。現在24道県が参加予定です。特別区の設立には、やはり和牛生産者の担い手育成への強い思いがありますね」

「今大会の開催に向けて、5年前に県内80の関係機関・団体から成る県実行委員会を設立しました。大会期間中は、県、市町村、関係団体から、延べ約6,000人の従事者の動員を予定しています。まずは県内外から訪れてくださる方々を“おもてなし”の心でお迎えし、大会を通じて和牛の魅力はもちろん、鹿児島の「食」「観光」「文化」など、当県の魅力を最大限発揮できるよう万全の準備を進めているところです」


鹿児島の歴史から見る、
畜産の強さの理由は?

「鹿児島県は全国一の和牛の生産県ですが、飼養頭数が10頭未満の生産者の方の割合がいまだに多いんです。というのは、鹿児島はもともと土地が肥沃ではないシラス大地で、台風の常習地帯であるため高収益作物(野菜や果実など)には向かなかったこと、温暖で草資源が豊富だったことから畜産が盛んになったという背景があるんですね。

畜産の場合、牛は草を食べますから、草は台風が来ても大きな影響を受けません。そこで少ない頭数でも家畜を飼い、堆肥を畑に入れて少しずつ土地を肥沃にさせながら園芸作物も一緒に発展させてきたところがあります。

ただ、消費地までの距離が遠いという壁がありました。肥育牛を東京や大阪へトラックで運んでと畜しなければならず、輸送する際に事故なども起こります。しかし1963年(昭和38年)、全国で初めて“産地の”食肉処理施設(ナンチク:旧南九州畜産興業)ができました。これにより、現地でと畜して牛肉を消費地に運ぶことができるようになり、大きな一歩を踏み出すこととなりました」



連携の強さに裏打ちされる
鹿児島の畜産の底力

鹿児島県農政部畜産課 肉用牛酪農係 古殿誠さんはこうも続ける。

「鹿児島県の志布志港では、畜産に欠かせないとうもろこしや牧草、稲わらなどの飼料原料を海外から輸入し、すぐに港付近の工場で配合飼料がつくられ、県内各所に運ばれます。こうした環境が整っていることも畜産が根付く大きな理由になっているのかなと思います。

また、鹿児島県内のどの市町村にとっても畜産はメインの産業になっているので、県、市町村、農協、食肉事業者など全ての関係機関からなる「鹿児島県肉用牛振興協議会」を組織して、生産から流通までの課題解決や県内統一した指導体制による生産振興に取り組んでいます。我々は “チーム鹿児島” と呼んでいますが、そういった一体感もあるのかなと思っています」

指導体系が整っていることは、新規就農にもやさしい環境と言えそうだ。

「国の支援の条件に当てはまらない場合は各市町村が独自に定めている補助金支援もありますし、普及指導員と市町村が協力して金銭面の可能な支援についてや空き牛舎の情報などを共有しながらサポートする体制が整っていることは、鹿児島らしい点かもしれません」

一方でこんな弱みも覗かせる。

「鹿児島は、まず繁殖の文化が広がり、肥育文化は後からついてきました。生産基盤は強いのですが、「鹿児島黒牛」の名は、神戸牛などメジャーな銘柄牛には到底届きません。大消費地や海外の方が数多く出入りする地域に比べて、お肉として名を馳せる機会がほとんどなかったことが原因です。ただ、今はSNSやネットなどを通じて地方からでもアピールができますので、今後はもっと情報発信をしていくことが課題だと感じています」

行政の担当者も日々高まる
全共開催へのプレッシャー

「生産者の中には経営を度外視してもこの共進会に賭けておられる方々もいらっしゃいますし、審査が進む中で、やはり皆さん緊張感が高まって、我こそが鹿児島県の代表牛になるんだという意気込みを感じます。

全共は5年に一度とは言え、現場はお母さん牛を選抜するところから始まり、開催と並行して次の全共に向けて常に走っています。我々行政が牛舎に行って牛を磨くわけではないですが、現場の方々は甚大なプレッシャーと闘っておられますので、我々は我々にできること、やり残していることはないかを常に考えています。全共開催は県を挙げて取り組んでいる事業ですので、これはまったく他人ごとではありません。

毎朝県庁1階のカウントダウンボードを見るたびに、身が引き締まります」

▲皆さんが「身が引き締まる」とおっしゃっていたカウントダウンボード。本日時点ではあと「31日」。鹿児島の強さは“チーム”であること。行政も生産者と共に大きなプレッシャーを背負って開催に向かっている。

次は農高生の視点に迫ります。

第12回全国和牛能力共進会 和牛フェス in かごしま2022

https://zenkyo-kagoshima.com/

  • 営業時間: 大会ホームページにてご確認ください。
  • TEL: 099-286-3268(第12回全国和牛能力共進会鹿児島県実行委員会)
  • 定休日:会期中は定休日なし
  • アクセス: 大会ホームページにてご確認ください。

開催日時:
2022年10月6日(木)〜10日(祝・月)【入場無料】

開催場所:
【種牛の部】(鹿児島県霧島市牧園町)
【肉牛の部】(鹿児島県南九州市知覧町)

Twitter:https://mobile.twitter.com/kagoushimama
Facebook:https://m.facebook.com/kagoushimama

この記事を書いた人俵本 美奈

全国5エリアの高校図書館から発信する
月刊フリーマガジン「ch FILES」編集者。

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