畜産を学ぶ

北海道帯広農業高校で仲間とともに日々高め合う、「銀の匙」さながらの農高生の青春!

高校 北海道
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大正9年(1920年)に十勝農業学校として開校し、創立104年を迎える北海道帯広農業高等学校、通称「帯農(おびのう)」は、人気漫画「銀の匙」の舞台としても知られています。動物に囲まれ、仲間とともに寮生活を送る中で青春を謳歌し、将来を模索する姿は、銀匙の八軒くんたちそのものです。

道内はもちろん、全国から志の高い熱い学生が集まる酪農科学科

農業の担い手育成のため、それぞれの産業に合わせた専門知識が得られる農業科学科・酪農科学科・食品科学科・農業土木工学科・森林科学科の5学科がある帯農。

畜産について学ぶことのできる酪農科学科では、広大な自然環境の中で豊富な実験実習が行われ、酪農の基本である「土づくり」「草づくり」「牛づくり」を科学的視点から学習するとともに、経営管理能力や乳製品加工技術の習得、衛生管理や糞尿処理などの循環農業を学ぶことができます。

帯広農業高校では道外からも志願者を受け入れており、農業・酪農科学科の1年生は寮生活で、地元の学生も遠方から通う学生も皆、同じ生活を送ることから始まります。

広大な敷地内にある400mに及ぶカラマツ防風林の並木道は絶景

教室はいつも明るく、クラスメイトとは牛の話で盛り上がる

農高アカデミーにも参加してくれている高校3年生、豊澤拓実さんは、札幌の非農家に育ちながら酪農の道を夢見て、本校へ入学しました。「中学生の時に牛と出会ってその魅力に惹かれ、酪農の道に進みたいと思うようになりました。帯農での学校生活は本当に楽しくて、あの時この高校を選んだ自分を褒めてあげたい」というほど充実した3年間だったようです。

畜産の道を志す、モチベーションの高いメンバーが集まる教室の雰囲気は、「みんな明るくて、教室ではいつも牛の話で盛り上がっています。お互いの進路のことも全員が知っていて、どんな話もできるのは、酪農科学科が最初の1年間を寮生活で一緒に送ることも大きいのかもしれません」と豊澤さん。

自身の興味をさらに掘り下げられる授業カリキュラムが充実

豊澤さんにとって一番楽しみだったのは、「課題研究」の授業。乳牛班に所属し、牛にとっても人にとっても活動しやすいアニマルウェルフェアに沿った牛舎内の環境改善を学び、地域の幼稚園生たちに酪農の魅力を伝える酪農教育ファームなどを行ってきました。

農業クラブの全国大会においても常連校で、2022年には豊澤さんも農業クラブの意見発表で、チーズを作る際に産業廃棄物として大量に捨てられてしまうホエイの問題解決につながるブラウンチーズの研究について発表し、東北海道大会で最優秀賞を取りました。

彼らの学びは学内だけに留まりません。週末を使って積極的に牧場の視察に足を運んだり、部活で共進会に挑戦したり、高校3年間というかけがえのない時間を、目一杯大好きな牛や動物たちについて学ぶ時間に費やしています。

「僕は山岳部で部長をしていたので、引退するまでは、土曜日は山に登り、日曜日は牧場の視察やチーズ工房の見学に行ったりしていました。ほとんど自転車でまわり、遠いところだと片道305kmほどの場所にも行きました。農家さんにも知り合いの農家さんをたくさん紹介していただき、数えたら3年間で105軒行ってました(笑)」

今は毎週末、学校のチーズ工房で自ら大好きなチーズ作りに励むという豊澤さん。

「朝5時に学校の工房に行き、先生が6時に搾りたての生乳を届けてくださるので、すぐに作り始められるように準備を整えています」

と言って見せてくれたファイルがこちら。ここには、これまで3年間で訪問した農家さんの記録、自らが作ったチーズのことがすべて細かく記録されていました。

自他ともに認める「チーズオタク」!

チーズや放牧酪農、アニマルウェルフェア、肉用牛の肥育…畜産をさまざまな角度から学習し、さらに部活や課外活動で自分の興味のある内容を深め、積極的に学ぶ学生たち。そんな一人ひとりの学生をサポートしたいという先生方の姿勢もとても印象的でした。

実習室には「銀の匙」の原作者、荒川 弘先生のサインも飾られています
放課後、牛舎の外で大会に向け毛刈りなど牛の手入れを行なっていたは共進会部の部員たち

帯農産のベーコン、野菜、チーズを使った石窯ピザは絶品

恒例の学校行事も学生たちの大きな楽しみの一つ。

7月に行われる「帯農祭」は、1日目がダンスや出し物などのクラスステージ、2日目は模擬店や学科発表が一般公開され、大いに盛り上がります。

11月に酪農科学科で行われる「家畜に感謝する会」では、自分たちで育てた帯農産の畜産物や農業科学科が育てた野菜などを使い、3年生が準備をして石釜でピザを焼き、焼肉や豚汁、ヨーグルトなどを学科の3学年全員でいただきます。

実習室に干してあるとうもろこしは、次の年の帯農祭でポップコーンに使うためなのだとか! これらは1年生の仕事。 

クラスメイトも先生も、お互いの進路を励まし合える大切な仲間

高校卒業後は、各自その先で学びたいことや進みたい道に合わせて大学や農業大学校へ進んだり、実家を継ぐために農家へ研修に行くなどさまざまです。

「お互いに興味のあることや進みたい道もよく知っているから、受験の試験の前日は、出発する前にホームルームで教壇に立って、クラスメイトの前で『じゃ、行ってきます!』と言って応援し合っています」と豊澤さん。

中学生の頃に悩んで、帯農に決めた自分を褒めてあげたい

「僕が酪農の道に進みたいと思うようになったきっかけは、中学生の時にコロナ禍で何もできず、何かしたいと思って岩見沢のバイオダイナミックファーム 星耕舎さんに1週間ほど農業実習に行かせていただいた時でした。

そこで初めて牛と触れ合い、最初は大きくて驚いたのですが、近寄ってくる姿や美味しそうにごはんを食べている姿を見て「牛って可愛いな」と思って、酪農を学びたいと思うようになりました。

その後いくつかの農業高校のオープンキャンパスに行き、帯農に決めたのは、もちろん「銀の匙」を読んでいた影響もありますし、カリキュラムや設備が充実していて、このロケーションの中で学べたらどんなにいいだろうと思ったことと、先輩方や先生方の雰囲気がとてもよかったことでした」

「農家出身の子も多いので、最初は周りのクラスメイトがトラクターの話や経営の話をしていてもわからないことだらけで、羨ましいなと思ったり非農家の自分についていけるのかなと不安になる気持ちもありました。

実家を離れての寮生活も最初は大変でしたが、次第にクラスメイトとも仲良くなって、先生方にもたくさん助けていただき、乗り越えることができました。卒業後は道外のチーズ作りをさらに勉強するため、長野県の八ヶ岳中央農業実践大学校に進学します。

帯農で過ごした3年間は本当に色濃くて、「楽しかった!」の一言に尽きます。僕は本当に帯農に来てよかったと思っています。だから今悩んでいる中学生の皆さんも、自分は自分の道を進もうという気持ちがあれば絶対に大丈夫です!」

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