闘牛女子・牛飼い・フリーカメラマン。久高幸枝さんにとって闘牛とは? | どっこいしょニッポン

闘牛女子・牛飼い・フリーカメラマン。久高幸枝さんにとって闘牛とは?

No.228

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沖縄うるま市で古くから続く闘牛の魅力を発信する、フリーカメラマン久高幸枝さん。2013年には闘牛の姿をおさめた「闘牛女子」を、2017年には「闘牛女子VOL.2」を出版。各地で大きな反響を呼んでいます。
今回は、そんな幸枝さんに闘牛の魅力や闘牛を撮影しつづける理由を伺いました。

久高さんとカメラの出会い。闘牛を撮り始めた理由

代々牛を飼育する家系に生まれ、子どもの頃から牛の世話をして育った幸枝さん。
例えば学生時代、友だちから映画を観に行かないかと誘われても、「牛に餌をあげなきゃいけないから」と断ったり。親から強制されるわけでもなく、何よりも牛を優先に考えてきました。

そんな幸枝さんが「牛」以外の趣味として親しんできたのが「カメラ」だったのです。

「子どもの頃、押入れの中から父が隠し持っていた一眼レフカメラを見つけたんです。興味を示す私のために、父はコンデジ(コンパクトデジタルカメラ)を買ってくれました。それからは牛の世話をしながら、毎日牛を撮影するようになりました。父は私が撮った写真をたまに現像して『この写真は上が空いているのに足が写っていなくてバランスが悪い』『これはあと5歩前に寄ればもっとちゃんと写ったはず』とか、細かくアドバイスをしてくれて。楽しみながら自然と写真の技術は上達していきました。」

お父さんの教えでカメラの腕を磨いた幸枝さんは、大人になるとそのスキルを活かして闘牛の試合を撮影するように。

そして、2013年には写真集「闘牛女子」を、2017年には「闘牛女子VOL.2」を出版。


あわせて開催した写真展も、大きな話題に。また、知り合いのデザイナーとともに、カレンダーやクリアファイル、ポストカードなど、さまざまな“闘牛アイテム”を制作・販売しています。

女人禁制が根付く沖縄闘牛、最初は撮らせてもらえなかったことも


しかしそんな幸枝さんも、最初からスムーズに闘牛の撮影を始められたわけではありませんでした。
というのも、沖縄の闘牛は古くから「女人禁制」が根付く伝統文化。10年前は「絶対に自分の牛の写真を撮らせない」という闘牛士も少なくなかったのだそう。
それでも幸枝さんは、誠意をもって闘牛士や牛たちと真摯に向きあい、関係性を築いてきました。

『闘牛女子』として闘牛に関わるようになってからこれまで、全大会・全試合を観戦し、撮影してきました。そして、試合後は勝ち牛の闘牛士さんに必ず写真をプリントしてプレゼントしてきたんです。誰でも自分が愛情を注ぐ牛が負けている姿は見たくないもの。だからこそ、勝っているときの勇姿を記念に残し、プレゼントすることで、負けているときも含め、すべてのシーンを撮らせてもらえるようになりました。」

お金が目的ではない。闘牛を続けるたったひとつの理由


現在の幸枝さんにはさまざまな顔があります。
自宅の牛舎で闘牛の飼育や和牛の繁殖・飼養を行う傍ら、闘牛の写真を撮り、さらにはフリーのカメラマンとして冠婚葬祭での記念写真の撮影などもしています。
本音をいえば『闘牛だけで生きていきたい』そうですが、なかなか厳しいのが現実。

そもそも闘牛は、試合に勝ったからといって沢山の賞金がもらえるわけではありません。勝っても負けてもその日の入場料などの売り上げを出演者たちで均等に配当したものがファイトマネーになります。

そのため、幸枝さんのように闘牛に携わる人はもちろん、闘牛士たちもみな別で仕事をしているのだそう。

「朝早く起きて、牛舎の掃除して、散歩をさせて、餌をあげて、草刈りして、それからようやく仕事に行く。そして、帰ったらまた牛の世話。闘牛はなかなか『お金を稼ぎたい!』という気持ちで続けられることではありません。それでもなんで闘牛に携わるのか……それはただ『愛』でしかありません。

牛は家族。幸枝さんが闘いの先に見つめるもの


闘牛を心から愛し、沖縄の闘牛の発展に尽力する幸枝さん。最後に、幸枝さんにとっての闘牛の魅力・闘牛を撮りつづける理由を伺いました。


「試合中、牛はたくさんの人に見守られながら闘います。その中でも、一番近くで声を枯らして牛を応援する闘牛士は、彼らにとっての“家族”。一頭の闘牛をひとりの人間だけで育てることはできません。たくさんの人が関わり、牛と人は共に成長していきます。私が本当に撮りたいのは、ただ牛同士が闘っている場面ではなく、牛と人の関係性が見える瞬間。つまり、牛と人との『家族写真』なんです。これからもたくさんの大切な家族写真を残していきたいです。」


大歓声に包まれる闘牛場で、幸枝さんが心静かにファインダーを見つめてシャッターを切るのは、牛と人が寄り添い合い、喜びや悔しさを共有する瞬間。

その写真には、闘牛を本気で愛する幸枝さんでないと捉えることのできない「優しさ」や、牛と人との「絆」が写し出されています。


2016年より沖縄闘牛カレンダーを発行。5年目になる来年を最後にカレンダー作成を終了します。
皆さんの期待に応えられるような素敵な作品に仕上げますので是非、お楽しみに。
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