柔らかいお肉こそ「おいしい」なの!? 全てのお肉が「おいしい肉」になる調理方を試してみた | どっこいしょニッポン

柔らかいお肉こそ「おいしい」なの!? 全てのお肉が「おいしい肉」になる調理方を試してみた

No.236

たべる

このページを印刷する

こんにちは〜!京都で編集業・ライター業をしているおかんと申します!

みなさん、お肉は好きですか?私は好きです、もちろん。

個人的には噛みごたえのあるガッツリ赤身のステーキとか、ローストポークが好みです。じっくり煮込んだスジ煮込みとかも最高ですよね〜。ブリブリのホルモンも大好物!

世の中いろんなお肉があるけれど、みなさん「いい肉」といえばどんなお肉を想像するでしょうか?

霜が全面に入り、見るからに柔らかそうで、お箸で簡単に切れるお肉を想像するって人も多いのではないでしょうか?

それって日本人が「柔らかいお肉こそがおいしいお肉」って感覚を持っているってことなのではないでしょうか!?

しかし、この「柔らかいお肉がおいしい」って感覚、ひょっとしたら日本人特有の感覚なのでは?試しに「アメリカ ステーキ」で画像検索してみると、めちゃくちゃ噛みごたえありそうな赤身の肉ばっかり出てきたし、私が過去に旅行した海外では、日本のようなびっしりと、サシの入ったの霜降りで柔らかそうな肉を見たことがないんですよね……。

食肉の専門家に聞いてみよう

食肉の専門家にお聞きしました。

沖谷明紘さん/日本獣医生命科学大学名誉教授東京大学農学部卒。食肉のおいしさを対象とした研究に長年携わる。監修した著書に『肉の科学(朝倉書店 )』や『食品学各論 (朝倉書店 )』など。

ーーどうして日本は「柔らかい肉=おいしい肉」っていうイメージが定着しているんでしょうか? 海外旅行した際に食べたステーキは、噛みごたえのあるお肉ばかりで日本のような柔らかいお肉に出会ったことがなくて。でも、海外の噛みごたえのあるお肉もすごくおいしかったんですよね。柔らかいお肉がおいしい……とされる感覚って、日本人独自の感覚なんでしょうか

まずですね、食肉をおいしいと思う条件がいくつか存在します。調理前の外観つまり視覚的な要因と、調理後の口の中に入れてから知覚されるものに分別されるんですね。

ーーどういうことでしょう?

まず、前者を説明すると、赤身と脂肪の色および光沢。 つまり、赤身への脂肪交雑(サシ)で判断するわけです。後者になると、味わいや香り・食感という点を評価するんですね。

ーーほうほう。

沖谷さん:なかでも外観によるおいしさっていうのは、学習によって決まるんです。例えば、日本ではご馳走の代表として「霜降りのすき焼き」だったり「サシのびっしり入ったステーキ」が挙げられますよね。それは、TV番組や雑誌などで見た映像や画像を記憶しているからなんですよ。

ーーなるほど……!確かに、そういう刷り込みがあるかも……!

そう。現行の牛肉の格付けもそういう理論でなされていて。

ーーちなみに、先ほど先生がおっしゃっていた後者の場合はどうなるんでしょうか?

食肉のおいしさを知覚で感じることにおいて重要なのは、歯触りと舌触り。歯触りというのは、硬軟・弾力性・脆さなどを指しています。一方で舌触りは滑らかさやジューシーさが起因しているんです。

ーーわかりやすい……!

これらの基準は学習によって作られるもの。言い換えれば食肉文化や、個人の嗜好によって差が出るんですよ。つまり、食肉の柔らかさの好ましい基準は民族によってかなり差が出るんですね。だから、お肉は柔らかいほどおいしいとする日本人の基準は、世界のどの国でも認められる基準ではないという訳です。

ーーなるほど!日本の「おいしいお肉とは」という格付けは、民族の好みが反映されているんですね。

そもそも日本で食肉文化が一般化したのは江戸末期から明治期。鍋で煮込むすき焼きや肉鍋が普及したことにはじまります。鍋として食べるのであれば、噛みごたえのあるものよりも柔らかくてサシの入ったお肉の方が食べやすいですよね。ご飯のお供としても合う。そこから日本人の「柔らかい肉はうまい」というイメージが形成されたのだと私は考えています。

ーーでは、日本人に染み付いたおいしいお肉のイメージを変える。つまり硬い・柔らかいを度外視して、お肉をおいしく食べてもらうためのポイントってなにかあるんでしょうか?

どこまで変えられるかは分かりませんが、新たなおいしさを学習していくことが必要なんです。そのためには、適切な調理法と温度管理が大切。そこで守っていただきたいのが、絶対に「肉を常温の空気に触れさせておく」こと。

ーー常温の空気に……?

肉を常温に戻すと、加熱時に香りがより立つようになっておいしく感じることができるんですよ。牛肉には多くの「うまみ成分」アミノ酸が含まれていて、加熱によってカラメルやチョコレートに似たいい香りが発生します。また、脂肪のなかにも「ラクトン」という香気成分が含まれていて、これは肉が酸化することで発生するんです。

いいすき焼き屋さんなんかはね、肉をかたまりから切って30分は常温で置いておくんですよ。そうすると、肉の香りが立つ。

ーー肉の香りが立つ……。

「ブルーミング」って言うんですけどね。肉を常温に置いておくと、赤身の色素である「ミオグロミン」が酸素と結合して「オキシミオグロミン」になる。そうすると”BLOOM”、花が咲くように赤身がグッと濃くなります。そしてオキシミオグロミンが触媒になって、脂肪の酸化前駆体に働きかけるわけです。その結果、脂からよい香りが立ってくる……厳密には確定しているわけではないのですが、長年の研究を経て、そういう仕組みなのではないかと私は考えています。

ーー専門用語の波状攻撃でついていくのに必死!!えっと…つまり、酸素に触れさせたら肉がめっちゃグッドスメルってことですね?

ええ。人は味覚だけで味を判断するわけではないんですね。視覚や嗅覚も大きく影響を及ぼします。よく一般的に「いい肉は脂が甘い」と言われますが、実際は脂に甘みはありません。あれは香りなんです。食した人が香気成分をより感じられるよう調理することがお肉をおいしく食べるポイントではないでしょうか。

ーーありがとうございます!

ぜひ、いろいろとお肉を焼いてどんな変化があるのか試してみてください。

焼き方の違いで肉は変わる?肉好き4人に食べ比べてもらった

「柔らかい肉がおいしい」と感じる要因に、人間の学習能力が関わっていたとは!しかし、沖谷先生のお話を参考にするなら、お肉の温度管理と調理法で柔らかい肉も硬い肉も、おいしい肉としてイメージが覆せるのかもしれません。

という訳で

・赤身の厚切り肉(冷蔵・常温)
・霜降りの厚切り肉(冷蔵・常温)
・赤身の薄切り肉(冷蔵・常温)
・霜降りの薄切り肉(冷蔵・常温)

柔らかい霜降り肉と、硬いとイメージされがちな赤身のお肉を焼き比べてみました。本当は牛肉だけじゃなくいろんなお肉を比べてみたかったのですが、時間の都合上、代表して牛肉でいろいろ焼き比べてみたいと思います。

せっかくいろんなお肉を焼くので(しかもちゃんと専門店で買ってきた肉)、硬い・柔らかいという観点だけではなく、冷蔵・常温によって香りの違いを出し、おいしさに違いがどう出るか検証するぞ!

肉の脂でベッタベタになりそうだから、わざわざコンタクト装着で挑む!

脳がそうさせていたとは理解しつつも、やっぱり霜降り肉を見るとテンションが上がってしまう……。

と、いうわけで「肉には一家言アリ!」な人々をお呼び立てしました。

(画像左から)

・丸田 草太さん/京都大学農学部 食品生物科学科、京大カレー部部長(好きなお肉:噛みごたえのある赤身)
・浦 朋恵さん/肉コラムニスト(好きなお肉:赤身肉も霜降りも同列に愛す)
・古大工 寛さん/ステーキハウス ロマン亭マネージャー(好きなお肉:赤身肉)
・代走みつくにさん/肉好き芸人(好きなお肉:霜降り肉)

自分ひとりで焼いて食べて……だと偏っちゃうけど、これだけお肉好きが揃えば有益な情報が手に入りそう!

常温肉の香り高さ!冷蔵肉はパサつく!?試食で見えたお肉の違い

肉を焼いてはみなさんに試食していただく、給食のおばさんと化す私。
それぞれのお肉を試食してもらいました。

常温に戻して焼くお肉は、焼き始める30分前に冷蔵庫から皿に移し、ラップをせず放置。たしかに肉の色が赤色から赤茶色になっているような。

心地よい歯ごたえとジューシーさが特徴・赤身の厚切り肉

・冷たいまま焼いた肉は硬くなる
・常温で戻した肉は、歯切れの良さがいい
・赤身肉好きにはたまらない味わいと食感

浦:常温で戻したお肉は焼いた時のいい香りが立ちますね。歯切れもいいです。冷蔵庫から出したお肉は肉の繊維を強く感じたし、硬さがどうかというよりも香ばしさがなかった点が気になりました。

古大工:常温肉はちょうどいい咀嚼回数で飲み込める感じがしますね。赤身肉ですが硬すぎることはなくて、ちょうどいい柔らかさです。

みつくに:たしかに、冷蔵肉は旨味の広がりが微妙ですね……。

甘い香りは霜降りならでは!常温でとろける霜降りの厚切り肉

・常温に戻した肉は香りが大爆発、やばい
・常温肉のとろけかたがすごい。脂が肉に馴染んで肉汁が甘いと感じる
・逆に冷蔵肉はサーロインのいいところが全部消されてしまう

丸田:肉の香りがすごい!やっぱり常温で置いた後だと火の通りがジャストになって最高ですね。

みつくに:歯ごたえのない、つまり柔らかい食感は「これぞ霜降り!」という感じ。

浦:常温肉は口に入れた瞬間から香りと旨味を感じます。冷蔵肉は多分肉と脂が馴染んでいないからでしょうが、舌に乗せた時に脂の味ばかりで硬い。肉汁が出てくるまで噛み続けないと味がゼロに近い印象です。

古大工:ステーキ肉は厚みがあるぶん、ジューシーさに一番差が出ますね。

冷蔵→加熱で生まれる食感はいっそジャーキー向き?赤身の薄切り肉

・火入れが難しそうな赤身薄切り肉も常温肉だとジューシー!
・サシがないぶん冷蔵肉だと香りがまるで立たない
・冷蔵肉はむしろジャーキーにしちゃった方がいいのでは

古大工:冷蔵肉のほうは繊維質が際立つ見た目。旨味も少なく思います。常温は噛み切りやすいし香りもいい!

みつくに:常温のほうが旨味が出ていると思います。冷蔵肉は少しパサつきを感じました。いっそ硬さを活かして、ビーフジャーキー感覚で、おつまみとするならアリかも。

丸田:冷蔵肉は鉄っぽさを感じましたね。常温肉と比べて火を通すのに時間差があるからでしょうか、香ばしさ自体は冷蔵肉のほうが強かったです。常温肉は味にまとまりがあって、甘いですね。

脂と肉の一体感にいちばん差が出やすいかも?霜降りの薄切り肉

・常温はめっちゃジューシー!肉のポテンシャルを感じる
・冷蔵肉の脂臭さが……。脂と肉が乖離してる味

浦:冷蔵肉は脂臭さを感じます。肉の旨味が弱くて、脂に負けてる感があります。常温だと牛肉自体の旨味が際立ちますね。

古大工:常温のほうは口の中で優しく噛める印象ですね。冷蔵のほうは若干ブリブリとした口当たりというか。個人的に、赤身の薄切り肉のほうが違いが明確だったんですが、霜降りの薄切り肉も温度によって食感に違いがある。

みつくに:常温で脂をなじませていただけあって脂が回っているなという印象です。冷蔵のほうがサッパリしているような……。

丸田:常温肉はとにかく甘い!チーズなんかに通じる強い旨味を感じます。脂がまんべんなく浸透しているなーというのがわかりますね。

加熱時間の違いで柔らかさに差は出る!?

さて、番外編として「常温/冷蔵」だけの比較ではなく、低温調理器でつくったローストポークも用意。豚かたまり肉をフリーザーパックに入れて約60度で加熱し、加熱時間にも変化をつけてみました。

写真左が12時間、右が6時間加熱した豚肉。

なぜローストポークも用意したかというと、豚の角煮とかって、煮込み時間で肉の柔らかさがだいぶん変わりますよね。先生の言う「焼く前の肉の温度の違い」以外にも、加熱時間の違いで肉のおいしさは変わるのでは……?

実際画像を見てもらうとわかるんですが、12時間加熱したお肉はすみずみまで火が通っていて「ハムっぽさ」があるのに対して、6時間のほうはしっとり弾力がある肉の断面になっていますよね。

ちなみにローストポークの試食評価はこちら。

・6時間のほうはジューシーさが強い
・12時間のほうは歯ごたえが強くなってブツリと嚙み切れる
・6時間のほうは肉らしさが残るぶん、噛み切るのに時間がかかる
・それぞれ別の料理って感じ

古大工:脂の旨味を感じやすかったのは6時間加熱のほうですね。12時間のほうはパサつきを感じたのですが、噛めば噛むほど味が出てくるのが面白かったです。

丸田:6時間のほうは低温調理特有のアミン系の香りを感じました。肉っぽさが強いので厚切りが好みです。12時間のほうは柔らかいなかでも肉の繊維を感じます。やっぱり低温調理といえども、長時間の加熱によってアクチンが変性してくるんですね。結果、肉から水分が追い出されて肉がギュッと締まる。ハム感を活かして、こっちは薄切りのほうがいいなあ。

みつくに:6時間のほうがお肉のツヤと弾力がありましたね。

浦:6時間のほうは、めっちゃジューシーなので飲みものがなくてもバンバン食べられます。そのぶん噛み切るのに多少のしんどさがあるので、薄切りが好みですね。12時間のほうは歯切れのいいハムっぽさが。肉の甘みはこちらのほうが強い気がします。分厚く切るか、薄切りをたくさん重ねて食べたい……!

柔らかい霜降りの肉も噛み応えのある繊維質の肉も、それぞれおいしい食べ方がある

ーー今日はありがとうございました。みなさんいろんなお肉を食べていただいたかと思うんですが、各お肉の味わいはどうでしたか?

▼赤身の厚切り肉

丸田:僕は歯ごたえのある肉が好きなので、赤身の厚切りがおいしかったですね。噛んでるうちに鉄(Fe)を感じる心地よさが……。冷蔵のまま焼いた肉はパサつきが気になりましたね。食感だけじゃなく、しばらく噛まないと香りが出ないんです。それも「イマイチな肉」っぽい不快感のある香り。霜がないぶん脂肪由来の香気成分に乏しいので、きちんと常温に戻してやらないと食欲をそそる香りが出にくいのかも。

▼霜降りの厚切り肉

浦:霜降りの柔らかくジューシーな肉は、いかにも「肉食べてる〜」って感じ!ただ霜降りなぶん、おいしいと感じるか否かは、肉と脂の一体感が重要だなと感じました。冷蔵のお肉は味がでてくるまでにかなりの咀嚼を必要としました。

▼赤身の薄切り肉

古大工:常温のお肉が肉本来の旨味も豊富で柔らかさもありました。薄切りの赤身肉だからこそ火入れの時間で食感の違いが出やすい気もします。冷蔵のままのお肉は味が締まった感じがしましたね。繊維質がより表に立って、旨味もすぐには感じにくい。冷えた肉に火を通すと、熱の伝わり方にムラができやすいんですね。全面に火を通そうとして焼きすぎてしまったのかも。

▼霜降りの薄切り肉

みつくに:霜降りの薄切りって、それこそすき焼きなどに使われることが多いかと思うんですけど、しっかり常温に戻して赤身の部分と霜の部分をなじませることで、より卵や野菜と合う肉になるなと思いましたね。薄くて咀嚼が少なくてすむ分、冷蔵肉は脂が先に消えてしまうような気がしました。

硬さ・柔らかさという要因だけでなく、常温に戻すことでいろんな肉は「おいしい肉」になる!

そもそもの個人の好みは置いといて、常温に戻したお肉の圧倒的なまでのパワーを皆さん感じてますね……!

浦:肉をシンプルに焼いた時の違いだけで絞ったら、完全に常温に戻したお肉のほうがおいしいですね。

丸田:常温に戻した肉と冷蔵のままでは、明らかに食感が違います。冷蔵は繊維っぽさ、つまり不用意な硬さが気になるというか。

ーーこれは家庭でも実践しやすいメソッドですよね。ご飯をつくり始めるちょっと前に、お肉を冷蔵庫から出しておけばいいだけの話なので。……あ、でも食べる人数が多いと、短時間で多くのお肉を常温に戻すのは難しいのかな。

浦:どれくらいで肉が常温に戻せるかって、それこそ科学的な話なんじゃない?

丸田:そうですね。季節によっても「常温」は変化するので難しいんですが。手っ取り早く肉の温度を常温に近づけるなら、水を張った鍋などに、ジップロックに入れた肉を漬け込むのがいいと思います。

ーー水に?

丸田:水の方が空気よりも熱を伝えやすいんですよ。サウナよりも湯船に浸かるほうが身体が早く温まりますよね。そういう原理で。

みつくに:ぼくは飲食店で働いているんですが、唐揚げを仕込む時に水はよく使いますね!冷凍の鶏肉を流水で戻すと圧倒的に早いですから。

食べてもらう前は「そんなに違いって出るのかなぁ」と思っていたんですが、柔らかい・硬い、霜降り・赤身、薄切り・厚切りの違いを越えて、満場一致で常温に戻したお肉はおいしい!という結果に。

いい肉というイメージが強い柔らかな霜降り肉までも、冷たいまま焼くと「肉のおいしさが出ていない」「繊維っぽいしおいしくない」という声もあがりました。

 

つまり……今回の実験を通じて「おいしい肉」を一言で言えば……。

調理前、最低30分は常温に戻して肉が持つ香りを十分に引き出したお肉

だということではないでしょうか!?

「肉をおいしい」と感じるかは、火入れや切り方によっても変化するもの

「柔らかいお肉=おいしい、なのか?」という疑問が今回の発端だったんですが、まさか「常温に戻したお肉」が解答として落ち着くとは……。食文化の発展した現代においては霜降りや赤身肉であるか否かだけが「おいしい」には繋がらないんですね。

古大工:そもそも、霜降りか赤身かで全然調理法が違ってくるんですよね。たとえばお店で提供しているようなメニューだと、サーロインは表面をサッと焼くんですが、赤身肉のかたまりだと、低温で30〜40分かけてじっくり焼くことで赤身本来の旨味を閉じ込めるんです。それに、部位によって繊維に沿って切るか、断つように切るかなどのカッティングで食感もずいぶん変わってくる。切り方ひとつで日本人が嫌がるような「肉の硬さ」は解消できるんですよね。

ーーほうほう。

古大工:この部位はサイコロ状に切るほうがおいしいし、これはひき肉にしたほうがいいな……とか。脂の有無以外でも、お肉の柔らかさをはかることができますし、単純に厚切りだから「豪華でいい!」という訳でもないなと。

みつくに:確かに、シャリもネタもバカでかい寿司がおいしいかって言われたらそうじゃないですもんね。

丸田:肩ロースのように、たくさん筋肉を使う部分は筋が入りますから、そういう部位の肉はじっくりと火入れをした方がいい。柔らかい云々というより、コラーゲンが分解されることで生まれる旨味という意味で。ちょっと焼いただけでは、おいしくない肉もありますしね。

古大工:でも煮込み系のお肉も、最初は高温で焼いて香りを立たせ、旨味を閉じ込めたほうがいいですね。例えばチャーシューとか。

ーーお肉の部位ごとに違ったおいしさがあるし、その日誰とどんなものを食べるかで、何がおいしいかという認識も変わってきますもんね。これを読んでくれた人が、自分にとっておいしいお肉って何だ?って知るきっかけになればいいな〜。

終わりに

柔らかい肉=おいしい!っていうのは本当なのだろうか?

実際にいろんな肉を焼いて、いろんな人に食べてもらい、いろんな意見やアイデアをもらって、理解したのは、

・肉は常温に戻したほうが圧倒的においしい
・常温で焼いたお肉は火の通りが均一で、香りが高い
・繊維の多い肉も、切り方一つで味わいや食感が変わってくる
・柔らかいお肉=霜降りというわけはないが、調理法で味のランクが下がることもある
・肩ロースなどの筋っぽい肉は、煮込み料理に向いている

ということ。

霜降りに赤身、熟成肉、いろんなお肉が世の中にはあふれています。「あの香り高い肉は常温に戻してあったんだな」とか「赤身肉なのにこんなに柔らかいってことは、切り方に工夫が!?」とか、提供される前にどんな工程を経ていたのか考えられるようになりました。

しかも、今回の実験はお店にあるような調理器具などは何も使っていないので、お家でも実践しやすいはず。丁寧に切ったり、常温に戻しておいたり……ほんの一工夫で「お肉ってこんなにおいしかったんだ!」という発見があると思います。

 

今日のご飯は、お家焼肉なんてどうですか?
きっと「家で食べるのに今までと全然味が違う〜!」ってなりますよ!

 

(おわり)

取材・文:おかん
撮影:古賀亮平
編集・企画:人間編集部