第13回農高アカデミー :テーマ「自分の可能性の広げ方」
畜産を勉強中の全国の高校生がオンラインでつながり、学べる機会を生み出す「つながる農高プロジェクト」の農高アカデミー。第13回目(7月26日開催)は、現在カナダで酪農コンサルタントをされている久富聡子さんをゲストにお迎えし、将来の可能性の広げ方について考えました!
もくじ
▲やりたいこと、いろいろあるけど自分で「無理かな」と思っていることってたくさん。全国の高校生たちが自分の将来について考えました!ぜひ皆さんもご一緒にお考えください。
~以下、内容のダイジェストです。~
Part1:まずは久富さんのプロフィールから
久富 福岡県出身で、北海道の帯広畜産大学へ進学、卒業後は北海道の飼料会社に勤めました。13年ほど事務・営業・技術指導の仕事をした後に仲間と一緒に酪農コンサルタントの仕事を開業。その後チャンスがあってカナダのアルバータ大学に留学して乳牛の栄養について学び、昨年冬に大学院を修了しました。今はカナダで酪農コンサルタント(デイリーコンパス)を始めたところです。アルバータ州で日本やアジアの畜産家向けに乾草を作っている会社とも仕事をさせてもらっています。
Part2:カナダ留学で可能性を広げた人生
…久富さんが畜産の道を目指したきっかけは何でしたか?
久富 もともと高校生の時は、動物が好きだったので獣医さんになりたいと考えていたんです。それなら北海道の大学に行きたいなと思って帯広畜産大学の獣医学科を目指したのですが、受験がうまくいかず、同じ大学の畜産学科に入りました。そこで初めて酪農のことを知るようになりました。
…仕事をやめて留学する決断に不安はなかったですか?
久富 長年勤めていた仕事をやめてコンサルタントの仕事を始め、その仕事も軌道に乗った頃に留学をしたので、不安はありました。特に悩んだのは、最初の会社をやめる時でした。当時私は35歳くらいで、自分に本当に何かできるのか自信はなくて。最終的には、失うものはないなという気持ちで決断しました。その後留学する時も、帰国しても仕事があるかどうかはわからないなという気持ちはありながらも、畜産業界って人手が足りなくて皆さん困っていらっしゃるから、いよいよ暮らしに困った時は、「雇ってください!」とお願いしたらどなたか使ってくださるんじゃないかと考えると、やってみるかという気になることができました。新しいことを始めたからこそいろいろな人とつながりができて、次にカナダへ留学する道にもつながったので、決断して本当に良かったなと思います。留学もしてみたからこそ見えることがあって、自分の視野も広がったと思っています。
…カナダに行って一番驚いたことはどんなことでしたか?
まずカナダにはいろんな人種がいて、いろんな文化、考え方の人たちがいることに驚きました。公用語は英語とフランス語ですが、街に出ると英語がほとんど話せない人もいて、英語が話せなくても海外で暮らしていけるんだなということも驚いたことではありました。私自身英語は平均よりはできると思っていたのですが、実際に行ってみると、言葉にはとても苦労して、泣きそうな気持ちになったこともあります(笑)
▲アルバータ大学のキャンパスの様子
▲「大学の牛舎。つなぎ牛舎で120頭ほど搾乳牛を飼っています」
▲一般の酪農家さんの様子。「アルバータ州は酪農より肉牛生産の方が盛んな地域。広大な土地に放し飼いで育てているんです。草しか食べていないのにこれだけ肉付きがよくなることに驚きました」
▲卒業後一緒にお仕事をされている、乾草を日本やアジアの国々へ輸出している 会社のチモシーやアルファルファ収穫の様子。「“ビッグベール”と呼ばれる 大きなかたまりの乾草を日本の牧場で見たことのある人もいるかな?」
Part3:高校生から質問タイム
大学ではいろんなことを学んで吸収したいと考えていますが、卒業後どの道を選んだら自分が後悔しないのか、そこで学んだことを落とし込めるのかに不安があります。久富さんはどうでしたか?
久富 私自身のことを言うと、大学時代に学んだことが社会に出てすぐに活きたかと言うとそうではなく、飼料会社で営業として現場の酪農家さんと関わるようになって、自分でもより勉強するようになった時に、大学の先生が言っていたのはこういうことだったのか、と気付いたことも多かったです。大学で栄養学や経営学などいろんな新しいことを学ぶと思うので、いろいろとつまんでみて楽しそうなものを掘っていくと、卒業するまでに何か自分の進みたい道が見つかるかもしれないし、そこで見つからなくても、その先できっと見つかると思うので、心配しないでまずはやってみたらいいと思います。
留学された時に、周りの学生さんと仲良くするために心がけておられたことはありますか?
久富 大学院の同級生たちはほとんどが25歳前後で、私は40歳になってから行ったので、世代も違うし言葉も通じなくて大変でした。でも、めちゃくちゃな英語だったとは思うんですけど、自分からみんなと仲良くしたい意思があることを伝えていったことは大きかったかなと思います。特に統計学の授業は誰かに教わらないと単位を落とすのが見えていたので、仲良くなった子を授業のたびに捕まえて、「ここに席取っておいたから!」と言って少々強引に隣に座ってもらっていました(笑)。大学院って評価がA・B・Cなのですが、Cを取った時点で退学させられてしまうので、試験で失敗ができなかったんです。だから卒業するためにも、藁にもすがる思いで友だちの助けを求めていました。
Part4:3チームに分かれて話し合い
~理想の未来像から考えてみる~
ブレイクアウトルームでは、将来どんな自分になっていたいか、どんな仕事をどんな風にしていたいかを具体的に考え、発表し合いました。
ここで出たのはこんな未来像。
「人と牛に関わる職業に就きたい」
「福祉と連携した養豚場を経営したい」
「理学療法士をしながら趣味で爬虫類のブリーダーをしたい」
「牛の幸せを考えられる酪農家になりたい」
「誰でも楽しく食事ができる飲食店がしたい」
そんな未来を叶えるために、今できることは何だろう?
「旅に出てみては?」というアイデアも飛び出したり、今からできることは、思っていた以上にたくさんありました。
久富さんから学生へメッセージ
今日皆さんが話してくださった夢に向かって、まずは進んでみてください。この夢が叶っても叶わなくてもいいと思うし、失敗も恐れずにやってみればいいと思います。失敗は、繰り返すうちに“あ、こっちに行ったら転びそう”というのがわかってきます。そのうちに世界が広がってもっと違う夢が見えてくるかもしれないし、その時は、自分が前に言ったことにこだわる必要はないので、目指す夢はどんどん切り替えて、広げていけばいいと思います。最後に自分がハッピーでいることが周りもハッピーにすることだと私は思っています。応援しています!
>> 農高アカデミーに参加していかがでしたか?
あえむ(高3)
自分が目指している大学の先輩のお話を聞けてすごく為になりました。私もいつか海外に留学して畜産業について学びたいと思っているので今回のお話で少しイメージすることができました。自分とは考えの違う高校生たちの意見やアドバイスももらえたので、夢に一歩近づけたのかなと思います。
ひな(高3)
自分にはない意見や考えを聞けたので、自分の将来についてどんなことをしようかなど明確に考えることができました。今後非農家から畜産業に就いた方や畜産関係で起業した方の話も聞いてみたいです。
かぐら(高3)
進路や将来について一人で考えてモヤモヤしていたものが、すっきりしました! 久富さんの話やグループディスカッションで、「自分のやりたいと思ったことに飛び込んでみる」ことが、自分が幸せな道を進むためのきっかけとなることを学びました。進路実現へ向けてこれからガンガン進んでいきたいです!
こうき(高3)
初めて参加しました。普段、人には話さない夢を言葉に表し、発表することで他の人の意見も取り入れられ、夢に一歩近づけたような気がします。これからの人生に関わるとても貴重な機会をありがとうございました。また参加したいです。
はるか(高3)
福岡から北海道の大学に一人で行ったということだけでもすごいのに、日本での仕事をやめてカナダに行くという決断をした久富さんの行動力と決断力に驚きました。決断したことで前とは違った立場で物事を見ることができたという話を聞き、視野を広げることは自分の将来にも必要だなと思いました。
かなり(高2)
進路に悩んで、自分の可能性や活かせる道を見つけてすらいない私には考えるのは難しいテーマだと思っていましたが、勇気を持って「人と牛に関わりたい」という気持ちを話したことで、メンバーから自分では考えつくことのなかったたくさんのアイデアをもらいました。久富さんが「可能性は“人”からの協力で変わる」と仰っていたように、私もこれから悩んだ時は、自分だけで解決しようとしないで、誰かの助けを求めていきたいと思いました。
次回農高アカデミーは9月開催予定!
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