第7回農高アカデミーレポート! 「畜産にまつわる仕事への不安をぶつけてみよう」 | どっこいしょニッポン

第7回農高アカデミーレポート! 「畜産にまつわる仕事への不安をぶつけてみよう」

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「畜産を勉強中の全国の高校生がオンラインでつながり、学べる機会を」ということで始まった「つながる農高プロジェクト」の農高アカデミー。7月19日(月)に開催した第7回農高アカデミーでは、大阪の非農家で育ちながら牛飼いを目指した眞榮城美保子さんをゲストに迎え、高校生と一緒にお話いただきました。

▲全国の農高生たちが、今抱いている不安をや情熱をぶつけ、みんなで話し合いました!

 

 

「まえしろファーム」は
繁殖業から経産牛の牛肉販売、
女性畜産家のコミュニティづくりまで

眞榮城 沖縄県石垣島で繁殖農家(母牛60頭、子牛は40頭ほど)「まえしろファーム」を営んでいます。大学時代に家畜人工授精師と授精卵移植師を取り、現在は、子牛の販売以外にも経産牛の牛肉の販売、皮や脂を使った商品の開発にも取り組み始めています。他にも女性の畜産農家のコミュニティづくりや保育園から大学まで、学生への畜産の素晴らしさを伝える活動にも力を入れています。

非農家マンション育ちから
念願の牛飼いになった経緯

眞榮城 厳しい家庭で進学校に通っていたのですが、高校生の頃はまだやりたいことがはっきりしていなくて、動物が好きだったので地元の近畿大学の農学部に入ったんです。ただ、授業がバイオに関する内容だったので、動物を触ったりすることはできなくて。私のやりたかったこととは違うなと思い、麻布大学の獣医学部動物応用科学科に受験し直して入学しました。そして大学2年生の時に、研修で沖縄県の黒島に行き、牧場実習をしたんです。私にとってはとても濃い10日間で、その時に“これや! 牛の仕事をしよう”と決めました。

…そうだったんですね!

眞榮城 大学時代には自分で連絡を取って、いろんなところに研修に行きました。栃木県の那須高原も行ったし、三重県にも行ったし…。でも最終的には景色がきれいで、人との関係性も密接な沖縄がいいなと思って。ただ、大学を卒業してすぐに牛の仕事をしてしまうと、視野が狭くなると思い、それに人見知りな性格を治したいという気持ちもあって、一度ユニバーサル・スタジオ・ジャパンに就職しました。3年働いたのですが、この時の経験はすべて今の仕事に活きています。

進路に悩む高校生たちが
今抱いている不安を解決

…ここからは、みんなが今抱いている不安や悩みを一緒に話し合いたいなと思います。

ほのか 将来は牛が飼いたいと思っているのですが、体力に不安があります。何かフォローする方法はありますか?

眞榮城 畜産ってどうしても3Kなので、体力面が心配になると思います。私も体力がなかったし、腰痛持ちなんです。実際キツいです。でも女の子なら、“甘えてください”!(笑)。男性と女性は体の作りが全然違うので、それぞれ苦手なことを補い合えばいいんです。だから逆に男の子は、甘えさせてあげてください。頼るのが苦手なのであれば、そうした関係性を作るための会話のスキルを身につけることも大事だし、私は1日でも長く、死ぬまで牛飼いをしたいと思っているから、ジムに通ったり、ヨガをしたり、食事にも気をつけています。私の体は牛飼いをするために出来上がっています(笑)

ゆい 私は将来研究者になりたいと思っていて、学者も女性が少ない世界ですが、畜産の場合、女性だとどんなハンディがありますか? その乗り切り方も教えてください!

眞榮城 女性だとまず、舐められます。私も昔は営業さんにも獣医さんにも舐められて、私なんていないことのように話を進められた時もありました。でもそんな人たちを変えることはできないので、自分の捉え方を変えてきました。あと女性には出産や育児もあり、その間は仕事ができないので、モチベーションを保ち続けるために研修会に参加したり、パソコンの勉強をしたり、その間に何ができるかを考えていました。

のぞみ 牛の道に進むか実験動物の飼育管理の道に進むかで悩んでいます。進路の選択で悩まれたことはありますか?

眞榮城 ユニバーサル・スタジオ・ジャパンに3年勤めた時、昇進の話を言われて、仕事もすごく楽しかったので悩みました。ただ牛飼いの仕事が諦めきれなかったので、お休みをもらって、もう一度黒島に牛を見に行ってみたんです。その時に、やっぱり将来のビジョンが描けたんですよね。ユニバーサルに入ったこともそうですが、一度離れることで見えることってあると思います。例えばカップルでも、一度離れることでめっちゃ好きな気持ちを認識する、みたいな(笑)。だから私は両方の経験が自分にとっては大事だったと思っています。迷うやろうと思うけど、どっちを選んでも無駄はないと思います。私は“自分がワクワクする方”で選びました。

みちる 動物に関わる仕事がしたかったのですが、地元で進学先が見つからず、別の看護・養護の道に進むことにしました。他の道に入ってもまた畜産に携わることはできますか?

眞榮城 看護の世界で覚えた技術は絶対に畜産でも活かせるし、羨ましいくらい(笑)。他の仕事をされていた方が畜産に入られることも多いし、畜産って牛飼いだけでなく、削蹄師さん、人工授精師さん、飼料メーカー…と本当にたくさんの方々に支えられていて、動物に関わる仕事ってたくさんあるんです。だからそうした選択肢をいろいろ調べてみるのもいいと思います。

じゅん 僕の住んでいる地域は畜産が盛んで、繁殖農家になりたいという夢があります。ただ家は非農家で、周りからは老後、退職してから始めてもいいんじゃないかと反対されています。眞榮城さんはどう思われますか?

眞榮城 新規で始めるにはお金のハードルがあるよね。でも地域によっては支援してくれる補助金制度も増えてきたし、廃業する農家さんの空き牛舎もあるので、小さな規模で始めるなどハードルを低くして現実的にひとつずつクリアしていく考え方をしてみるといいと思います。私の場合は、お金を貯めるために3年間は繁殖農家の従業員として働こうと考えました。途中で繁殖農家をしていた旦那さんと出会って結婚することになったんですが、新規就農した友だちは、昼間農家さんで働いて夜他のアルバイトをしてお金を貯めていました。親は心配して当然反対すると思うので、いろんな場所に飛び込んで農家さんたちの体験談を聞き、情報収集から始めるのもいいと思います。

かなり 迷った時や悩んだ時に心の支えになったものはありますか?

眞榮城 よく「なぜ牛飼いになったの?」と聞かれるんですが、好きになるのに理由ってないよね(笑)。本当に好きだと飽きることってないと思うんです。私は幸せな牛を1頭でも増やしたいと思うし、それが自分の幸せにつながっています。そのために自分ができることは全部やってあげたいと思うし、それは人に対してもそうで、自分に関わる人がみんな幸せになって欲しいと思う、そこが自分のモチベーションかなと思います。

りょうが 眞榮城さんは一体牛のことがどれくら好きですか?

眞榮城 (爆笑)私の行動原理はすべて牛のためです。でも、うちの旦那さんは「牛を飼っても牛に飼われるな」と言うんです。そのためには分娩を予測できる装置を導入するとか、子牛の病気を早期に発見したり予防したり、先手を打ってできることを逆算しておくことや、自分が休んだり友だちと遊んだりする時間もちゃんと取ることも必要だと思っています。苦労をする必要はないけど、努力は必要、かな。

まお 私もクラスで変態と思われるくらい、牛が好きです(笑)

眞榮城 大丈夫、牛飼い変態多いよ。人生捧げてる人多いから!(笑)

まお 今どこの大学に行こうか迷っています。大学ではどんなことを勉強されましたか?

眞榮城 私は、麻布大学で動物福祉(動物が快適に暮らせるために人間が環境を整えてあげる考え)が学べると知り、大学を選びました。家畜福祉や行動学が学べる研究室に入って、卒業研究は栃木の那須の競り市場に行き、飼い主の牛の扱いの様子がどれほど値段に左右するかを研究しました。怒鳴ったりしているような人は、あまり成績が良くないとか。毎日ずっと研究室に入り浸っていて、楽しかったですよ。ただ、麻布大学は都会にあるので、実際の実習は外に出ないといけなくて、地方の大学に比べて牛に触れ合える機会は少なかったりします。だから何がしたいかによって選べばいいんじゃないかなと思います。

眞榮城美保子さんから
高校生へメッセージ

進路に悩んでいる高校生は、たくさんいると思います。すでに決まっている人とかを見ると焦るよね。でも学校って、社会人になるために必要なスキルを身につける大切な場所。その上で、ハードルを大きくせず、“あれもできた、これもできた”と小さなハードルを一つひとつ乗り越えていけばいいと思います。そしてこの先、いろんな情報が入ってくると思います。YouTubeなどでは間違った飼養管理の発信もたくさんあります。でも自分に知識がないと情報の取捨選択ができないので、まずはしっかりと知識を増やしてください。最初から全部何でもできる人なんていないから自分の足りないところは何かを見つけて、少しずつ補っていくといいですよ。

<第7回農高アカデミーの様子は、「どっこいしょニッポン」の
YouTubeでも全編ご覧いただけます!>

 

 

■農高アカデミーに参加していかがでしたか?

まお(高2)
努力はしないといけないけど苦労はする必要はない、という話がすごい刺さりました。日々やっていることを努力と思うか苦労と思うかで気持ちって変わってくるなと思いました。

かなり(高1)
家の酪農を継ぐか迷っていたのですが、最近継ごうと決めました。今日、「好きな気持ちを保ち続けることが大切」というお話を聞いて、「私もそれならできる!」と思うことができました。

ほなみ(高3)
眞榮城さんの自分で行動する力がすごいなと思いました。私も気になったら自分から調べたり連絡をしていこうと思います! 私も眞榮城さんのようにパワーのある人になりたいです!

たいが(高3)
「自分の健康管理も含めて牛飼い」という言葉を聞き、今は進路のことで自分を追い詰めてしまうこともあるので、自分が健康でこそ周りも牛も健康に過ごせることを忘れないようにしようと思いました。

みちる(高3)
進路に焦って、先日いっぱいいっぱいになって学校で泣いてしまうことがありました。今日、どの道に進んでも無駄はないと聞き、次の世界で頑張っていきたいなと思えるようになりました。

ゆい(高2)
女性であることのハンデの乗り越え方やいろんな経験には必ず意味があるというお話など、どれもとても勉強になりました! ありがとうございました!