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獣医師×酪農家。「同志」と呼び合う二人の最高の関係

  • #六次化

この記事の登場人物

佐藤 太郎
TAROファームケアクリニック

この記事の登場人物

村山 喜隆
村佐喜農場
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新潟県三条市でTAROファームケアクリニックを経営する「太郎先生」こと獣医師・佐藤太郎さんと、同じ三条市内にある村佐喜農場で酪農業を営む村山喜隆さん。
太郎先生は繁殖改善の技スペシャリストとして、従来の獣医師医療にとどまらない酪農家サポートを手がけ、村山さんは代々続く酪農家の家系に生まれ、「100年続く農場」を目指して邁進しています。

ともに新潟県内で畜産の仕事をするおふたり。ともに「同志」と呼び合える間柄なのだと言います。

スタートが一緒のタイミングだった。気がつけば意気投合

▲左:「太郎先生」こと佐藤太郎獣医師、右:村佐喜農場・村山喜隆さん

10歳以上年の離れた太郎先生と村山さん。知り合うきっかけは、スタートのタイミングが一緒だったこと。

2005年に佐藤さんが新潟県の研究職を退き、獣医師として独立開業しようしていたちょうど同じ時期、村山さんは自身のお父さんが経営する農場で本格的に働き始めました。ちょうど新たな道に進むというタイミングで出会い、いつの間にか意気投合。交友関係がスタートします。

2010年、獣医師として開業した太郎先生の「お客さん第1号」になったのが、村山さんでした。

「喜隆くんは、人が寄ってくる雰囲気みたいなものをまとっているんだよね。見た目は良い意味でめちゃくちゃなんだけど(笑)人の話をよく聞くし、非常に真面目な人だなと、初対面で強く印象に残った」と、太郎先生は村山さんの第一印象を語ります。

対する村山さんは、太郎先生をこう評します。

「牛のことで相談するのはやっぱり太郎さん。獣医さんとして牛を診療してもらったり、アドバイスをもらえたりするだけでなく、厳しいことも隠さずちゃんと話してくれるんです。欠かせない存在ですよ」

「今の関係をひと言であらわすなら、『ビジネスパートナー』がしっくりくるかな」

一緒に育成塾へ参加。思いがひとつに

獣医師と酪農家。10歳以上年齢が離れ、働くフィールドは違うおふたりですが、共通の思いでつながっているようです。

それは、「経営的に良くしていこう」ということ。

その思いが芽生えた背景には、2016年に開催された「次世代リーダー育成塾」へ参加したことが大きかったのだとか。
「育成塾」は、日本全薬工業株式会社が運営する、畜産関係者向けの経営セミナー。市場環境に対応できる経営力を学び、「夢(中期ビジョン)を見える化」することを目指します。
太郎先生はもともと、獣医師医療だけでなく栄養面や餌やりの効率化などによって包括的にサポートしたいとの思いを持っていました。そうすることによって経営環境の安定が期待できるからです。

「獣医師医療だけではなく、一歩踏み込んだサポートをしたいということは開業当初から考えていたこと。育成塾に参加したことでそれを再確認でき、明確になったのだと思いますね」と太郎先生。

牛たちの健康状態が改善することは、経営状態にも良い影響を与える――。

このことは、村山さん自身が一番よく理解しています。

太郎先生とタッグを組むことになってから『腰抜け(※)』がなくなったんですよ。牛たちの健康状態は目に見えて良くなりましたね」

※腰抜け…分娩性低カルシウム血症。出産後、カルシウムが不足することで起きる症状で、立ち上がれなくなるなどの悪影響が出る。「低カル」とも。

▲太郎先生の診療によって牛たちの健康状態が安定。長期で見れば経営の改善にもつながる

「腰抜け」が起きてしまうと、治療費などのコストだけではなく生産効率も落ち最悪、命にもかかわってしまいます。事前に予防することは、生産面やコスト面からからも、安定経営のためにはとても重要です

酪農家が持続可能な経営を実現すること

「そもそも私たち獣医師の仕事は、農家の方々の存在があってはじめて成り立つ事業なのです。サスティナブル(持続可能)な経営を実現するお手伝いをしたい

自身も酪農業を営む家庭に生まれ育った太郎先生。だからこそ、自分のことのように関わることができるのかもしれません。

「酪農は、大変な世界ですよ。本質的に自分たちだけではコントロールできないことが多い。牛がどれほどの量の牛乳を出してくれるのかも分からなければ、価格も決められない。だからこそ、いかに安定して経営できるかは鍵になってくると思います

同志と呼び合える存在

最後に、おふたりにとってお互いはどのような存在なのかを聞いてみました。

まずは太郎先生から。

「ひと言で言えば『同志』。僕にとっても良き理解者でもあるし、同じ方向を向いて歩んでいこう!という存在かな」

村山さんは、「俺も同志と思うんだけど、少し違うかもな……」と言って、ひと呼吸置いた後、「少し考えさせてほしい」と保留。
取材からしばらく経った後にわざわざ連絡をくれ、こう言いました。

地図のような存在ですね。いなくなったら困るなんてものじゃない。もしかしたら酪農家を辞めていたかもしれない

終始、笑顔にあふれた今回の取材。お互いがどのような存在なのかを話す際は、ふたりとも真剣な面持ちだったのがとても印象に残りました。

㈱TAROファームケアクリニック

http://www.tfcc2010.co.jp 

  • 営業時間:ー
  • TEL:0256-36-2928
  • 定休日:ー
  • アクセス:〒0256-36-2928  新潟県三条市西裏館2-11-32  

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