酪農スタイルを180度変えてオーガニックに転身!
この記事の登場人物
村上 勇治有限会社 あすなろファーミング
「有限会社あすなろファーミング」は30年以上も前からオーガニックスタイルに取り組み、自慢の生乳を使って牛乳やヨーグルト、ムースなどを自社加工する牧場です。代表の村上勇治さんに、これまでの歩みをお聞きしました。
もくじ
かつては「牛の美人コンテスト」に夢中!?
「やあやあ、ようこそ」。
柔和な表情で取材陣を出迎えてくれた村上さん。目尻に深く刻まれたシワからは、笑顔の多い人生を送ってきたことがうかがえます。さっそくお話をお聞きしようとしたところ、村上さんは壁にかけられていた牛の絵を唐突に指差しました。
「昔はあんなふうに姿形の整った牛を育てるのに夢中でね。牛のフォルムを競い合う、いわば『牛の美人コンテスト』で優勝することが人生のすべてだったんですよ」
コンテストで高得点を獲得した牛は高値で取り引きされるのだとか。かつてのあすなろファーミングは、「美しい牛づくり」が経営の柱だったようです。ところが、30年以上前、村上さんはある酪農の先生と出会ったことをきっかけに、農に対する考え方が180度変わったといいます。
「先生は美人な牛づくりを真っ向から否定しました。最初は頭にきたんですが(笑)、冷静になって考えると何がいけないのか次第に気になり始め、話を聞いてみることにしたんです。すると日本の酪農はヨーロッパに比べてかなり後れをとっている、と。これからは自分で生産した生乳を、自分で売っていかなければならない時代に入るのだと熱弁をふるってくれました」
村上さんはヨーロッパの酪農スタイルを自らの目で確かめたくなり、居ても立ってもいられなくなったとか。思い立ったが吉日、さっそく視察ツアーに乗り出しました。
ドイツのオーガニック牧場で衝撃を受けて。
ヨーロッパ6カ国を巡る視察の中でも、人生を変えるほどの衝撃を受けたのはドイツのオーガニック牧場。
「試飲した牛乳があまりにおいしくて体に稲妻が走ったんです」
と、村上さんは当時を振り返ります。そこで作られるヨーグルトやバターも豊かなコクがあり、今まで口にしてきたものとは比べ物にならないほどの味わいだったそうです。
「一体どうやってこんなにウマイ生乳を搾っているのかと尋ねると、牛のエサを食べるようすすめられました。半信半疑で口に入れてみると…驚くことにおいしいんです! 農薬や化学肥料に頼らない牧草づくりが、圧倒的な味の違いを生むと確信した瞬間です」
日本に戻った村上さんはオーガニックの牧草づくりに取り組むべく、まずは土づくりに着手。牛にミネラルやカルシウムをふんだんにとってもらえるよう、沖縄のサンゴを土にまくという工夫まで施しました。
「30年ほど前の日本では、手間のかかるオーガニックは見向きもされていませんでした。周りからは奇異の目で見られることもありましたが、5年の歳月をかけて化学肥料も農薬も使わない牧草地をつくり上げたんです」
新たな一歩となる、チーズづくりにチャレンジ!
あすなろファーミングは牛がのびのび過ごせる放牧が基本。村上さんは比較的時間に余裕を持てる日中に、六次化産業に向けて勉強を始めました。
「まずは牛乳の製造方法を学び、63℃で30分かけて殺菌する低温殺菌の工場を作りました。ウチの場合はホモジナイズ加工(生乳の脂肪球をこなごなに壊し、成分を均一にすること)をしない『ノンホモ牛乳』。お腹を壊しにくく、風味が良いのも特徴です」
さらに、村上さんの奥様は自慢の牛乳を使った加工品づくりを学び始め、今や町内はもちろん、全国の物産展でも愛されている「農園のムース」が誕生。以来、年に一度は新商品をリリースし、バターやジャム、プリンなど多彩なラインアップを製造するにまで至っています。
「来年(平成29年)にはチーズ工房も建てる予定。今は、僕の四男が夫婦でチーズづくりを修業しているところです。あすなろファーミングの新たなおいしさに、ぜひご期待くださいね!」
有限会社あすなろファーミング
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