坂根牧場

「人を幸せにしたい」という思いで始めた六次化

坂根牧場 4代目代表の坂根遼太さんが六次化を始めたのは、2016年。

20代前半で経験した海外の農業研修から、「楽しいBGMが音楽が流れてくるような牧場」をイメージし、「人と牛をしあわせにする牧場」を牧場理念に掲げた坂根さん。

「牧場は“エンターテイメント”で、酪農家は“エンターティナー”」と考える坂根さんは、「うちのミルクで製品を作ったら人々を幸せにできるんじゃないか？」という思いで六次化をスタート。

牧場の敷地内のチーズ工房「乳life」は奥さんが担当し、牛乳をはじめ、モッツァレラやカチョカバロ、さけるチーズ（さけっちょ）などを生産。オンラインや千歳空港などで販売されています。

2022年には西武池袋の北海道フェアに初出店。2023年には横浜そごうの北海道展に出店し、坂根牧場を知るお客さんも数多く来訪。ノンホモ牛乳で上部のクリーム層を楽しみながら濃厚でさっぱりとした後味がクセになる味わいは、偶然に立ち寄ったお客さんを魅了しました。

牛に良いことを心がけるアニマルウェルフェアへの取り組みが、思いがけず人にも良い結果をもたらした

坂根牧場は、日本で6番目に「アニマルウェルフェア畜産認証」を取得した牧場でもあります。

アニマルウェルフェア（家畜福祉）とは、家畜に心を寄り添わせ、できる限りストレスなく、行動要求が満たされた、健康的な暮らしができる飼育方法をめざす畜産のあり方のこと。

動物・施設・管理の3つをベースに、45項目について審査され、評価項目の80%以上をクリアしていることが求められます。

取り組みのきっかけは、商品に「アニマルウェルフェア認証」のシールを貼れば、消費者に坂根牧場の良さを伝える一つの手段になるのではないかという軽い気持ちだったそうですが、スタッフ全員でマニュアルを共有し、牧場が改善されると、動物たちの病傷予防につながり、生産性の向上にもつながりました。動物にとってより良いアニマルウェルフェアへの取り組みが、回り回って人のためにもなるという結果を生み出したのです。

栄養価の高い草が生える土づくりが好循環を生む

放牧地にはオーチャードとペレニアルライグラス、マメ科でミネラル豊富なシロクローバなど、栄養価が高く、再生力の高い草がバランス良く生い茂っています。

これは、秋にすべての畑の土を取って分析に出し、冬に受け取る結果とドクターからの処方箋に従って、春にカルシウムを入れるなど土づくりを行っている結果がもたらしたもの。

以前は、放牧しても牛があまり草を食べずに帰ってくることもあったそうですが、土づくりに力を入れ始めてからは、牛たちも好んで草を食べるように。牛の健康状態も良くなり、牛舎で与える配合飼料も減らせるようになったそうです。

「種は一切蒔いていないのに、栄養価の高い草が生える土づくりをすることで、自然とこうした草が多く生えてくるようになるんです。年々土が良くなってきて、放牧地には化学肥料はもう3年ほどほとんど入れていません。見ただけではわからないことも、数値で出るので効果も実感できます。自分たちが楽するためにも、土づくりはとても重要ですね」と坂根さん。

まるで友人の家を訪れるような気持ちで。

さらに、牧場内のファームホテル「on the cheese」では、宿泊して酪農を体験したり、のんびりと酪農風景の中で長期滞在することもできるようになっています。チーズ工房の2階にあるから“on the cheese”。

ファームホテルの部屋からは、牛たちが銘々にのんびりと過ごす放牧地が一望できます。

1年間、坂根牧場で農場研修を行っている研修生、永井さんも、関西から実家の家族を呼んで、研修の様子を見てもらうことができたそうです。

働くスタッフもお客さんも、牛たちも、みんなが幸せになれる牧場が、ここ坂根牧場です。