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鳥山牧場

群馬県
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名峰、赤城山の北西標高800mに位置する鳥山牧場。

繁殖母牛400頭、総頭数1300頭の和牛が暮らすこの地で繁殖から肥育までの一貫経営を行いながら、鳥山畜産食品として加工工場を有し、ブランド牛「赤城牛」「赤城和牛」「紡ぎ和牛」の加工から販売までを一手に手がけています。

また「おいしさの見える化」への取り組みや、海外向けブランド「TORIYAMA UMAMI WAGYU」の輸出など、一歩先を見据えた事業展開で日本の畜産業界をリードしています。

おいしさの見える化で「ストライクゾーンを外さない」和牛づくりを追求

赤城山麓に広がる豊かな森、利根川水系の清らかな水、澄んだ空気のなかで育つ鳥山牧場の和牛。代表の鳥山真さんは、牛一頭一頭と向き合って飼育することの大切さについて、次のように話します。

「牛の血統にこだわる牧場さんは多いと思いますが、鳥山牧場ではあまりそういう話はしません。なぜなら血統を重視すると、現場で不安定な牛がいたときに『この種だからダメなんだ』と血統のせいにしてしまい、諦めてしまうからです。もしかすると、実際は他に原因があるかもしれません。目の前で生きている牛の命をどうやって繋げていくのかを真剣に考え、個体の状態に合わせて最適な管理をしています」

また、「A5ランク・霜降り」が至上とされる業界の文化に捉われず、独自の方法で肉の味を追求している点も鳥山牧場の特徴。目には見えないおいしさを測る“新しい物差し”をつくりあげるために、肉の脂肪酸の組成や赤身肉のうまみを分析できる装置を導入し、鳥山畜産食品の加工工場で加工される全ての枝肉からデータを集めています。

鳥山牧場では業務でパソコンが日常的に使用されている

そのデータと、牛の行動モニタリングシステムで取得した日々の牛の生育記録や健康観察記録を照らし合わせることを続けた結果、その因果関係が徐々に浮かび上がり、あるときから肉質に「ハズレ」の出現率が劇的に減少したと鳥山さんは振り返ります。

「10や100のデータでは何もわかりませんが、500・1000と溜まっていくと、とても面白い景色が見えてきました。そこでわかったのは、どれだけ努力をしても結果が振るわない牛は残念ながらいるということ。同時に、飼養管理のポイントを押さえることで失敗の確率を最小限に抑え、ストライクゾーンを外さない肉を追求できることもわかったのです」

人工授精師の資格をもった従業員が多数在籍

さらに、近年では群馬県の家畜改良事業団と連携して、おいしさと血液交配にどのような関係があるのか研究を始めました。繁殖母牛全頭のゲノムデータを保有し、そのうえで産まれた仔牛のゲノムを解析。遺伝情報(生まれ)・管理記録(育て方)・食味の分析データ(結果)という3つのストーリーを繋ぎ合わせて見ることで、改善のポイントを明らかにし、ハズレのない安定したおいしさを実現しています。

群馬県産ブランド「赤城牛」「赤城和牛」で地域農家と共に和牛の新しい価値を提案

鳥山畜産食品では、総卸販売元として「赤城牛」「赤城和牛」「紡ぎ和牛」の3ブランドを展開しています。

赤城牛と赤城和牛は、鳥山牧場とともに、同じ志をもつ地域の提携農家のもとで生産された牛肉のブランド。そのなかで、黒毛和種と乳用種を交配した交雑種を赤城牛、純粋な黒毛和種を赤城和牛として展開しています。そして、鳥山牧場のみで生産された黒毛和種の独立ブランドが紡ぎ和牛です。

赤城牛はアミノ酸を多く含んだ赤身のおいしさが特徴で、コストパフォーマンスの高い国産牛。赤城和牛は赤身と脂肪のバランスに優れた、ワンランク上の群馬県産ブランド和牛。そして紡ぎ和牛は顧客の要望をもとに最適な個体を出荷する高級飲食店も御用達の特別なブランドと、3ブランドがそれぞれ異なる流通経路で消費者の口に届いています。

協力農家から屠畜場を経て自社工場に出荷された枝肉の品質をチェックするのは鳥山さん自身の仕事。その際「肉の霜降りが多いことは評価しません」と、鳥山さんは言い切ります。

「今の時代、取引先からのクレームで『こんなに霜降りが少ない肉はダメ』みたいな声はほとんどありません。逆に増えているのが『こんなに白い肉はダメ』という過度な霜降りへのクレームです。鳥山牧場でも『霜降りの乗ったA5ランクの和牛を作ろう』という話は一切しません」

牛肉本来のうまみと甘みがあり、適度な脂で柔らかいのに食べごたえもある。

鳥山ブランドが目指したのは、そんな日本の牛肉本来のおいしさの提案です。

現在約20軒の協力農家には、生産に関するデータやノウハウを共有しながら、肉を購入した取引先からの評価もフィードバックし、品質の更なる安定化を目指して連携しています。

「同じブランド牛として品質を揃えるためには、やはり各農家さんの環境や飼養管理の方法を揃えることも大切ですが、私自身が最も大切にしているのが『考え方』を揃えることです。どんな意識で牛を育て、お客様にどんな価値を提供したいのか…そうした思考が違うと取り組む姿勢もズレてしまいます。ブランドの歴史とともに各農家さんとコミュニケーションを重ねるうちに、少しずつ足並みが揃っていきました」

平均年齢28歳、世代交代を経て若手が奮闘中!毎週の社長面談で問題を解消

鳥山牧場では、現在20名の従業員が働いています。その平均年齢は28歳。近年これまで牧場経営を支えてきたベテラン勢が定年を迎えて退職し、世代交代の波が押し寄せています。

設立から長きにわたって牧場が積み上げてきた知見を業務マニュアルにまとめて次世代に引き継ぐ傍ら、現場の更なるコミュニケーションの活性化を目的として、業務ではビジネス向けのチャットアプリ、Slackを使用。業務単位でチャットのチャンネルグループを分けて活用し「今やSlackなしで牧場の業務は成り立ちません」と鳥山さんは話します。

IoTセンサーやSlackなど業務で様々なテクノロジーが導入されている

また、従業員の不安や不満を解消すべく、鳥山さんは毎週従業員1人と30分程度の個人面談を行っています。

「個人面談は私が従業員に指導する場ではなく、私が従業員の話を聞く場。みんなの一週間のモヤモヤをここ(事務所会議室)に置いていってもらうことが目的です。出張中でもオンラインで欠かさずに行っています」

保育園の先生のように仔牛に接する様子が印象的

こうした業務アプリの使用や代表と従業員のコミュニケーションに加え、明確な給与形態や評価制度も鳥山牧場で働くうえでの魅力。人事評価では、半期に一度設定する部門目標に対して従業員が個別で自己目標を定めます。そのうえで、期末に目標に対する自己評価を行い、部門長や経営陣の評価も踏まえポイント制で等級が確定するという流れです。等級が上がるごとに給料が上がるので「仕事のモチベーションを作りやすい」と、保育部門6年目の小林航太さんは話します。

テキパキと慣れた様子で仔牛の世話をする男性スタッフ

「鳥山牧場は個人の成長と昇給の道筋が明確で、頑張った分だけお給料に反映されるので、とてもやりがいがあります。それに、勤務時間が朝8時から夕方5時半までと、1次産業のなかでは割と朝も早すぎず、夕方も遅すぎないところも働きやすいですね。また、私は現在、保育部門を担当していますが、肥育やその先の加工、出荷まで関わるチャンスがあるのも、一貫経営を実現している鳥山グループで働く魅力だと思います」

海外向けブランド「TORIYAMA UMAMI WAGYU」を群馬から世界へ

鳥山牧場は、赤城和牛のおいしさを世界に届けるべく、約10年前から海外市場への販路拡大の取り組みをスタートしました。

各国のレストランや展示会などでの地道なプロモーション活動を経て「TORIYAMA UMAMI WAGYU」と名付けたブランド和牛は現在、シンガポール・アメリカ・フランス・ドイツ・イタリア・香港に輸出されています。

鳥山牧場の強みはお互いを信頼し合っているからこそ生まれるチーム力だと感じさせてくれる

「海外に展開する際、これまでに日本の格付けや品評会でどれだけの数のトロフィーをもらったかということは一切みられず、味だけで判断されるシビアな世界でした」と振り返る鳥山さん。

そして最後に、地域農家との共創や畜産の発展に対する思いを次のように語りました。

「輸出の話があがったときから、私としては同じ思いをもつ農家さんと一緒に海外へ行きたいという思いがあり、6年程かけてようやく実現できました。これからもTORIYAMA UMAMI WAGYUで和牛の魅力を世界に発信しながら、群馬県の和牛づくりや、ひいては畜産業界全体を盛り上げていきたいです」

// 農場情報

名称

鳥山牧場

所在地

 〒379-1207 群馬県利根郡昭和村赤城原1231

HP

https://akagi-beef.jp/

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