運命の出会いを果たした牛飼いと食肉加工のプロ。
この記事の登場人物
代表 藤田 惠さん有限会社 十勝スロウフード
全国誌やテレビ番組に登場し、またたく間に人気が広がった「牛とろフレーク」。
その誕生の背景には、食肉加工会社「有限会社十勝スロウフード」と、肥育農家「有限会社ボーンフリーファーム」の運命的な出会いがありました。そこで今回は、製造を手がける「有限会社十勝スロウフード」代表の藤田惠さんに案内していただき、原料となる牛肉を育てる「有限会社ボーンフリーファーム」を見学してきました。
もくじ
牛とろフレークの原料、「健康な牛」を育てる牧場へ
ボーンフリーファームで牛をお世話しているのは斉藤英夫さん。昭和46年に北海道清水町に入植し、酪農から牧場の歩みをスタートさせました。
当時は生乳をたくさん搾ることが第一とされる風潮。そのためには牛にこれでもかとエサを食べさせていたそうです。
狙い通り、平均乳量は1万キログラムと地域の中ではトップクラスの生産量を誇るようになりました。ところが、ある時、昨日まで元気に歩き回っていた牛が突如として動かなくなり、そのまま息を引き取ってしまったというのです。
「いぶかってお腹を開いてみると、レバー(肝臓)が豆腐のようにふにゃふにゃで張りがなかったとか。斉藤さんは乳量のためとはいえ牛の体に負担をかけ、不健康な生乳を搾っていたことに大きなショックを受けたようです」
と、藤田さんは当時のことを教えてくれました。
それ以来、ボーンフリーファームは長く健康に生きられる牛づくりを目指すようになったといいます。
美味しさの秘密は、牛が自由に生きる姿を目指した牧場づくりにあった
ボーンフリーファームが酪農から肉牛の肥育に転換したのは25年ほど前。斉藤さんは和牛の本場・兵庫県の出身だったことからもともと肥育への感度が高かったことに加え、清水町がまちぐるみで肉牛営農の強化を図った背景がこの決断を後押ししました。
「ボーンフリーファームが目指したのは生き物本来の自由な姿。微生物のバランスがとれた土づくりや農薬に頼らない草づくり、牛がストレスなく過ごせる環境をゆっくりと着実に整えてきたのです」と、藤田さん。
現在は輸入飼料を一切使わず、自家製の牧草をはじめ、小麦のふすまや十勝産のじゃがいもデンプンの搾りかすなど地場のものを自家で配合しています。輸送エネルギーや資源をムダにせず、十勝という地域の特徴を生かしたコンパクトな営農が牧場のモットーです。
「何より、ほら、牛たちの目がやさしい気がしませんか?」と微笑む藤田さん。広い場内でゆったり過ごし、「牛まかせ」で干し草を食べてもらう環境が牛のストレスを軽減し、「牛とろフレーク」のおいしさを生み出すのだと語ります。
肥育のプロと食肉加工のプロ、その運命の出会いとは?
ところで、藤田さんとボーンフリーファームの斉藤さんはどこで出会ったのでしょう?
「僕は帯広畜産大学を卒業後、食肉加工の会社で働いていました。ある日、大学時代の恩師に頼まれ学校行事の収穫祭を手伝っていた時、お客さんとして訪ねて来たのが斉藤さんでした」
藤田さんはソーセージやベーコンの開発に携わりながらも、原料の質が良くなければおいしく仕上がらないことにジレンマを抱えていました。そんな時、斉藤さんが育てた牛の「大トロ」に巡り会ったことで希望を見出したと語気を強めます。
「僕は牛脂って固いものだとばかり思っていましたが、斉藤さんが持ってきたお肉の場合は常温で溶け出して液体になってしまったんです。こんなお肉は見たことがない、この特長を生かせばおいしい加工品が作れる…そう血がさわいだ感触は今でも忘れていません」
折しも斉藤さんは食肉加工を任せられる人を探していたところでした。藤田さんはまさにうってつけの人材。牛飼いのプロと食肉加工のプロ、二人の人生が交わった運命的な出会いが牛とろフレーク誕生の前夜だったのです。
有限会社十勝スロウフード
- 営業時間:直売所営業時間: 月~金曜/10:00~17:00
- TEL:0156-63-3011
- 定休日:日・祝日
- アクセス:北海道上川郡清水町御影499-8