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生産者だからこそできる、住んで楽しいまちづくり。

この記事の登場人物

ちえのわ事業協同組合
ちえのわ事業協同組合
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酪農王国・別海町で、平成26年9月に誕生した「ちえのわ事業協同組合」。翌年4月、日本国内で唯一の原乳流通企業である株式会社MMJへの生乳出荷を開始し、注目を集めました。けれど、組合の目的は出荷にあらず、「何があってもずっと住み続けたい、と思えるまちづくり」。

ちえのわ事業協同組合の代表・島崎美昭さん(有限会社ジェイファームシマザキ代表)に、設立経緯と理想への想いを語ってもらいました。

廃校、離農、地域はどうなる?

「7年前、うちの目の前の小学校が廃校になってね。周辺では離農者も多いし、何が問題だろう?と考えたのがきっかけ」と島崎さん。

想いを同じくする地域生産者らと2カ月に一度の勉強会を開き、コンサルタント、中小企業診断士、銀行の支店長、弁護士、さまざまな人を招いて議論を行ったといいます。

5年間の話し合いの中で、地域生産者から出てきたのは合併で巨大化した地元JAへの不満でした。

「金融や営農指導に小回りが利かない、職員も悩んでいるのに状況が改善されない。だったら自分たちで助け合える組織を作ろう、と。共同購入やお金の貸し借りができる組織、環境や生産規模などを見つめ直すためのコミュニケーションができる場、それがちえのわ事業協同組合です」

株式会社MMJへの出荷は、組合の設立に向けた動きが進む中で持ち上がった話とのこと。

「もともと、競争の原理が必要だとは思っていました。隣町の浜中町は、JA浜中町のほかに浜中酪農業協同組合という専門農協があり、地域の酪農家は出荷先を選ぶことができる。その緊張感が、JA浜中町を、先駆的な取り組みで全国的に知られる存在にしたのでは、と考えていたんです」

「自分たちの牛乳」を、未来を拓く武器に

株式会社MMJへの出荷に向けて、島崎さんたちがまず取り組んだのは地元JAとの合意の書面づくりでした。

「農協以外のところに出荷しても、自分たちは組合員の立場でいられる、ということを確認したかったんです。農協法ではルール違反ではないんですよ。JAの職員も、書面づくりには進んで協力してくれました。だからちえのわのメンバーは今も、牛乳の検査などでJAの施設を利用していますし、国の政策についても気軽に相談しています」

次に取り組んだのは「自分たちの牛乳を商品にしてほしい」という、株式会社MMJとの交渉だったそう。

「これが自分たちの作ったものです、と誇れる商品があって、はじめて消費者とつながることができる。そうすれば、牧場に来てもらうきっかけができるし、さらに違う加工品を作るなど、いろんな展開が可能になります」

前例がなかったため株式会社MMJとの交渉は難航しましたが、最終的には、リスクヘッジのために生乳の買い取り価格を下げることでの商品化が決定

「金額の問題じゃないので、すぐに承知しました。商品ができた時は、感動で、仲間と一緒に泣きました」。

こうして「別海のおいしい牛乳」が誕生しました。

課題の解決も楽しめる、ずっと住みたいまち

飲めば甘みとコクを感じる「別海のおいしい牛乳」。現在は主に関東圏のスーパーで販売されています。

「これが大人気で、メーカーから来年はさらに年間1万トン多く出荷してほしいといわれています」。

アイスクリームやヨーグルトに加工して「別海シリーズ」を作る話や、生乳を台湾に出荷する話も出ているとか。当初は4戸の参加だったちえのわ組合員も、今では11戸にまで増えました。

「でもね、『儲かるんでしょ』という考えの人には参加してほしくない。高い生産技術をみんなで共有して、いい牛乳を出荷して、楽しく暮らせる地域を創ることが目的だから」

まずは牧場を見に来てくれた人に恥ずかしくない美しい環境を作ろうと、農場から出るゴミを回収してペレット燃料を創る会社を設立。農場の定位置に分別しておいたゴミを、1カ月3万円で自動回収してくれるシステムは、ちえのわメンバーだけでなく地域生産者にも歓迎されています。

「話し合って課題を解決するのも楽しみのひとつ。みんなでワイワイ言いながら助け合って暮らして、来てくれた人に誇れる場所、誰もがずっと住み続けたくなる地域を作りたい」と島崎さん。

次世代に誇れるまちづくりへの取り組みは、これからも続いていきます。

ちえのわ事業協同組合

http://chienowa-betsukai.jp 

  • 営業時間:
  • TEL:メールアドレス:info@chienowa-betsukai.jp
  • 定休日:
  • アクセス::〒088-2578 北海道野付郡別海町泉川57番地11