注目のブランド牛『こぶ黒』。その美味しさの秘密は〇〇を加えた餌にあり。
この記事の登場人物
松本 尚志まつもと牧場
新ひだか町の三石川上地区のまつもと牧場は、「こぶ黒」なるブランド牛の生産で最近注目を集めています。三石地区といえばブランド牛「みついし牛」が知られている中で、あえてオリジナルブランド牛をつくったのはなぜだったのでしょうか?また「こぶ黒」はどんな肉牛なのでしょうか?牧場オーナーの松本さんにお話を聞きました。
「酪農が苦手」という理由で、肉牛生産への移行を実現したまつもと牧場のオーナー、松本尚志さん。
平成15年当初、生産していたのはご当地ブランドの『みついし牛』でした。
「とはいっても三石で飼育した黒毛和牛ならどれも『みついし牛』でした。酪農家がどんなに飼育にこだわっても、逆にこだわらなくても、ここで育てられたものなら同じブランド牛になる。そこがどうにも腑に落ちなかったんです」
加えてその評価が、松阪牛、米沢牛など全国にその名をとどろかせる一流ブランドと大きな隔たりがあるのも悔しかったと尚志さんはいいます。
もくじ
これまでのブランドの「型」にはまりたくない!
尚志さんは研究者肌。
繁殖から肥育までを一貫して行う生産体制、自然光が差し込み通気性も良好で清潔な牛舎、母牛は広大な丘陵地に放牧した他、すべての牛に天然のミネラルがたっぷり入った自前の牧場の草を与えるなど、我流ではありましたが飼育法にはかなりの情熱を傾けていました。
「でもそれだけでは、一流ブランドには太刀打ちできません。自分にできることは何か。他の牧場にできないこだわりとはどんなものか、思い悩みました」
日高昆布をえさに混ぜるという発想。
そんな尚志さんの頭にふと浮かんだのが、日高の名産品としても知られる昆布。
「日高昆布を食べるウニがあんなに美味しくなるんだから、きっと牛の飼料にも応用できるはず… そんな単純な発想からの試みでした。商品をそのまま与えてはコスト的に見合いませんが、端切れやカケラなら調達できるのではないかと。私の姉が日高昆布の加工に携わっていたことも背中を押してくれる要因になりました」
さっそくお姉さんに相談。話はトントン拍子に進み、近所の他の加工場で出た昆布の廃材までいただけることに。
ただこの時点では、昆布を与えることで肉質や味わい、どんな変化が生じるのか、全くわからない状態。
無駄骨に終わることも充分予想できましたが、もとよりチャレンジ精神が強い尚志さん。飼料に昆布を混ぜ、丁寧な肥育に励みます。
そしておよそ30カ月。昆布で育てた最初の肉が出荷される段階に。さっそく東京食肉市場に持ち込み肉質の検査をしてもらうと…
一見してわかる、これぞまつもと牧場のブランド牛。
「一番の違いはその見た目。昆布の色素が影響しているのか、色がとにかく濃いんです」
なるほど、肉を目の当たりにしてみると、確かに赤みの色が鮮やか。脂とのコントラストもよりクッキリしています。
「昆布の中のミネラルが牛たちの健康を増進させ、ストレスフリーの環境で育てる事で牛特有の臭みもなくなりました。またグルタミン酸などの成分がグンと増えたことで、赤身のうま味を存分に引き出すことができました」
さらに出荷前にはもち米を与えるというひと工夫も。
「こうすることで肉の中の脂の融点が低くなり、結果的にくどさのないサラッとした味わいになるのです」
こうして誕生したまつもと牧場だけのブランド牛。「こぶ黒」というその名は、昆布の「こぶ」と黒毛の「黒」をとって名付けられたのでした。
まつもと牧場
- 営業時間:ー
- TEL:0146-35-3253
- 定休日:ー
- アクセス:〒059-3354 北海道日高郡新ひだか町三石川上360