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料理研究家・河瀬璃菜さんが聞いた!いろんな専用卵の仕掛け人「小林ゴールドエッグ」の凄さ

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この記事の登場人物

小林 真作
小林ゴールドエッグ

この記事の登場人物

河瀬 璃菜
料理研究家
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どっこいしょニッポンの読者のみなさまはじめまして、こんにちは。
小腹が空いた時のおやつには必ずと言っていいほど、ゆで卵を食べる(お気に入りは駅ナカのコンビニ、ニューデイズ)卵大好きな料理研究家・河瀬璃菜です。

スーパーやコンビニで手軽に購入でき、栄養価も高く、料理としての汎用性もある卵。買って食べるだけではなく、レシピを作るときにもよく使っています。

卵の最高さは、家に調味料が少しあれば、簡単においしい一品ができてしまうところ。

いまや毎日の食卓に欠かせない卵ですが、こちらをご覧ください。

黄身の色や大きさもバラバラな8つの卵たち。こうして並べてみると普段食べている卵と、ずいぶん違いがあるような……。じつはこちら、卵かけご飯やオムライス、すき焼きなど「特定の料理に特化した卵」なんです!

これらをつくっているのは、徳島県にある「小林ゴールドエッグ」さん。自らを「卵のソムリエ」と称してさまざまな卵を開発しているそう。

ブランド鶏の卵に、飼料で味わいや香りを変えた卵など、幅広いバリエーションがあるのは知っていましたが、卵かけご飯にピッタリの卵……?「卵のソムリエ」っていったい何??いったい世間一般の卵とどう違うのでしょうか。お話しをうかがいに徳島県へおうかがいしました。

8種類の卵を食べ比べ!その味の違いに驚き!

徳島駅から車で約30分ほどの場所にある「小林ゴールドエッグ」へやってきました。

フォントがイケてる……!

お話をうかがったのは、「小林ゴールドエッグ」の3代目社長、小林 真作さん。
「小林ゴールドエッグ」は、提携している各養鶏場に独自の飼料や育て方、排卵適正年齢、鶏の種類、サイズ……と、徹底的な生産管理をおこない、料理に合わせた専用の卵を生産・洗浄・販売をしている会社なのだとか。

百聞は一見にしかず!ということで、さっそく食べ比べさせていただきました!

こちらが今回ご用意いただいた卵。

おおおお~!生卵の状態でも、かなり違いがわかりますね。
まだまだたくさんの種類の卵があったのですが、膨大な文字数になりそうなので、一旦こちらの8種類を食べ比べしていきましょう。

まずは「すき焼き専用卵」

口の中の想像肉と合わせていただきます(笑)
濃厚で甘みと旨味をしっかり感じる味わい。これは甘辛い割り下とお肉に合わせたら最高だろうな~。

 「さっぱりしすぎているとお肉の旨味に負けてしまうので、濃厚に作っています。黄身の粘度を高めて、ねっとりとさせているので、旨味や甘みを感じやすいというのもありますね」

なるほど。同じ甘さでも粘度が違うことで、甘さの感じ方が変わるってことですね。
小林さんいわく、ゼリーと羊羹を想像するとわかりやすいのだとか。砂糖の量が同じでも、羊羹のほうが味わいは濃厚に感じますよね。例え上手~!

お次は、加熱料理に向いているという「オムレツ専用卵」

 「サイズが他と比べて大きく、白身の比率が多いので、憧れのトロふわオムレツを素人でも簡単に作ることができるんですよ」

素人でもトロふわってそんな夢みたいなことがあるのか!?

普段は料理をほとんどしないという小林さん自ら作っていただきました。

右がオムレツ専用卵、左がすき焼き専用卵でつくったオムレツ。

な、なんと。見た目でもかなりの違いがありますね……!使った卵は同数なのに、オムレツ専用卵の方がぽってり大きい!

食べてみるとその違いに驚き!

オムレツ専用卵で作ったオムレツは、本当にフワッフワのとろとろで、小林さんが作ったにも関わらず(失礼)、シェフが作ったかのようなおいしさ。
対して、すき焼き専用卵で作ったオムレツは黄身が固くなっていてボソボソとした食感。つくっている最中も、後者の方はすぐに固まってしまって成形するのに手間取っていました。

さっきはあんなに美味しかったすき焼き専用卵の印象がこんなに変わるなんて。

卵奥深いな~~~!!

お次は、「ゆで卵専用卵」。比較するために他の卵もゆで卵として実食します。

黄身はこってりとしていてコクがありますが、後味はさっぱりでクセがない!そして白身がプリッとしていておいしい~~!すき焼き専用卵ももちろんおいしいんですが、肉に負けない濃厚さが、ゆで卵単体になったときにかえって過剰に……。

先入観で「ゆで卵は濃厚なほうがおいしそう!」と思っていたので、思ったよりもクセがない味わいに驚きです。

 「濃厚すぎると、食べているうちにしつこくなるので、このバランスがちょうどいいんです。ゆで卵が苦手な方って、独特の硫黄臭さが原因であることが多いので、香りのクセも抑えているんです」

一緒に茹でてもらった「玄米卵」は見ての通り、黄身の色の薄さが特徴!飼料に玄米を食べさせることで、白っぽい色合いの卵になるのだとか。

 「『玄米卵』は江戸時代の鳥の育て方を踏襲しています。いまどきの卵って『黄身』といいつつ実際はオレンジかがった色が多いですよね。これが昔ながらの『黄身』の色です。ご年配の方から、昔食べていた味だ!と評価いただくことが多いです」

なるほど、確かに。

 「ホワイトオムレツや、スポンジの色が白いケーキなど、あまり卵の色を出したくないときのメニューによく使われます」

確かに、色の白い卵料理って黄身を使わず卵白だけで作っていたものが多いイメージでしたが、玄米卵だと黄身も余さず使えるので、レシピのレパートリーが増えそうでいいですね~。

玄米卵と同じくスイーツ向きの専用卵も。「洋菓子専用卵」は、その名の通り洋菓子に合わせて作られた卵。香りにクセが無いためクリームや牛乳、バター、チーズをなど主張の強い乳製品との相性は抜群なのだとか。

 「洋菓子専用卵は動物性の飼料は不使用、5種類のハーブを飼料にすることで、クセや臭みがなく卵本来のほのかな甘い香りを楽しむことができるんです。香りが強すぎても他の食材と喧嘩してしまうんですよね」

繊細さが大切な洋菓子だからこそ、あえて卵は裏方に徹するんですね。

また、黄身の色がとくに鮮やかだった「千寿菊卵」は、千寿菊(マリーゴールド)を飼料にすることで、加熱したときに鮮やかな濃い黄色になるのだとか。

 「黄色味を出すとよりおいしそうに見える、カステラや親子丼などの料理に向いてます。抗酸化成分のルテインも通常の卵より3.5倍含まれているので、アンチエイジング効果も期待できますよ!」

加熱すると、色味が変わるって面白いですよね。視覚的にも黄色味が強いと確かにおいしそうに見える……!

「あわそだち」など、徳島県の特産品を飼料に加えた卵もありました。カラカラに乾いた謎のこちらは神山すだちの皮!

こちらは、黄身にコクや甘みがあり、風味が爽やかでクセがない!鰹だしやバターなど、香りのよい料理と合わせるのがオススメだそう。

香りが良い~!

 「あわそだちは、徳島県特産の神山すだち・鳴門金時・鳴門わかめを配合した最高クラスの飼料を使っています。香りのクセの無さと、味わいの深さを両立させたバランスのよい卵です!」

鳴門金時の皮も。粉砕して鶏たちが食べやすいよう加工するそうです。
個人的には皮にこそ、芋のおいしさがあると思っている派なので、鶏が羨ましくも感じます。

 「普段はこの鳴門金時の皮や神山すだちの皮は捨てられているもの。飼料として使うことで、フードロス削減にも繋がっているんですよ」

環境に優しくおいしいものを作る。素晴らしい取り組みですね……!

それぞれ味わいや色に特徴があり、卵の奥深さを知ることができたところで、小林さんに料理に特化した専用卵を作るに至った経緯など聞いてみました。

経営難からのV字回復!専用卵のアイデアに舵を切ったその想いとは?

 「元々は、卵の洗浄・販売に特化した会社だったとうかがいいましたが、専用卵に特化するようになったきっかけはあるんでしょうか?」

 「2004年に3代目として就任をし数年間はこれまで通り、卵の洗浄と販売をおこなっていたんですが、とある飲食店に営業に行った際に、『卵がおいしいのは知っているけど、料理に合わせた提案が欲しい』と言われたのがきっかけでした」

 「確かに、肉には生姜焼き用やとんかつ用、魚には煮付け用、刺身用など種類わけがあるにも関わらず、卵は大きさに違いはあれど、料理に合わせたものはないですよね」

 「そうなんです。そこで、契約している養鶏場さんに、飼料や育て方、年齢、鶏の種類、サイズなどを変えることで、どんな変化があるかを試してもらうようお願いをしたんですが、労力がかかるため最初は戸惑われまして……」

 「続けてきたことを変えるのには、不安もありますし、労力も必要ですもんね……」

 「そうですね。しかし、しっかりとデータをとってその変化も感じていただいたうえで協力してして欲しいと根気よく伝えました。そして、少しずつ協力いただけるようになりました。現在は49種類の業務用、27種類の家庭用たまご商品があります。」

 「その一つ一つをどんな料理に合うかなど、様々な視点からデータ化していくのはかなり大変そうですね」

 「卵は生産スピードが早いため、餌の変更からその結果が出るまでのPDCAサイクルが早いんです。とはいえ、僕たちは12箇所の養鶏場さんに協力いただいて、だいたい1年で80パターンの卵を試食・試験しています。うちの方法を他社もマネしようとしても、普通は面倒くさくてなかなか手を出せないんじゃないでしょうか(笑)」

 「元々大手食品メーカーで製品開発などを担当してましたので、その時の経験が活きているのか、研究をすること自体は全く苦ではなくむしろ楽しいんですよ」

すごい……一つのことに集中できない族の私としては絶対に真似できない。

工場も見学させていただいたんですが、この日だけでも、こんなに多くの種類の卵を出荷しています(驚)

 「発送先を見ると、スーパーだけでなく本当に全国の様々な飲食店や洋菓子店に使っていただいてるんですね」

 「店舗さんにも色々な卵を使っていただいて、それぞれのお店の料理に合う専用卵を研究したり、一緒にメニューを考えて繁盛店を作るサポートをしているんですよ。その結果リピート率が高く、卵のミスマッチが起こらないというメリットもあるんです」

 「なかなかそこまで一緒に考えてくれるメーカーさんっていないですよね。店舗さんにとっては強い味方でありパートナーでもあるんですね」

 「これからも”こんな卵があったらいいな”に応えていきたいですね」

私も商品開発に携わることが多いのですが、商品を作る際、どうしても育て方や餌のこだわりを打ち出しがち。
消費者目線に立って新たなる価値を生み出すことの大切さを改めて痛感させていただきました!

小林さん、ありがとうございました!

実際に購入した卵で作った料理の味は……!?

東京に戻って、小林ゴールドエッグで購入した卵を使って作り比べをしてみました。

購入したのはこちらの2種類!
「カルボナーラ専用卵」「親子丼・カツとじ専用卵」。20個入りで1880円です。

カルボナーラ専用卵を割ってみました。

千寿菊の花を飼料にして育てた卵だとか。見た目は一見普通の卵ですね。

使ってみねばわからぬ!ということで、こちらでカルボナーラを作ってみました!

カルボナーラ専用卵で作るカルボナーラ

なるほどー!濃厚なカルボナーラソースに合うようあっさりとした卵になっており、ソースの旨味と風味が引き立ちます!
卵黄はクセがなく、ソースと溶け合うような滑らかでトロリとした食感です。

他の食材と合わせた時のバランスがとてもよく、おいしい!
味が強すぎないおかげで、ペロリと完食~~!

2つ目の卵はこちら。

親子丼・カツとじ専用卵。さっきのカルボナーラと見分けがつかないくらい見た目は似ていますが、卵の大きさはこちらの方が大きいです。

本当に、そんなに違うの!?と疑問に思いながら、こちらの卵を使って親子丼を作ってみました!

親子丼専用卵で作った親子丼

おお~!加熱する前と比べ、黄色が強く出て、なんともおいしそうな仕上がりに!

これが親子丼・カツとじ専用卵の特徴でもあるのだとか。確かに、黄身の色が濃いと見た目だけでも食欲をそそるビジュアルになりますね。

味わいは、臭みがなく出汁の旨味や風味を感じやすい印象です。白身の量が多いので、加熱した後もボソッとした食感にならず、ぷるんとした半熟がうまくつくれました!!
親子丼の加熱加減って難しいですからね……。これならとろプルな親子丼を簡単に作ることができそう。

たかが卵。されど卵。普段は意識をしていませんでしたが、卵ひとつでこんなに料理の味に違いが出るということに驚きました。
身近な食べ物だからこそ、色々な料理を作って試してみたいですよね。

皆さんも今日は奮発するぞ!という日には、専用卵でおいしい卵料理を作ってみてはいかがでしょうか。

新たなる扉が開けるはず!

<さいごに>

新型コロナウイルスの感染拡大によって、小林ゴールドエッグさんもお店からの注文数が減少。そして現在も、流行以前の状態には戻っていないそうです。しかし、卵は肉や魚に比べて低コストなため、メニューの差別化をしやすいのが強み。注文数が減っている時だからこそ、積極的に新メニューに向けた提案や、いろんな卵を試せるセットを売り出すなど、前向きに営業されているそうです。

「とにかく珍しい卵が揃っているので、興味を持たれた方はぜひ!」と小林さんでした。

河瀬璃菜 りな助(料理研究家・フードコーディネーター)
1988年5月8日生まれ。福岡県出身。
レシピ開発、商品開発、食の企画やコンサル、レシピ動画制作、企画執筆、編集、イベントメディア出演、料理教室など食に纏わる様々な活動をおこなう。また、スマートフォン「SONY Xperia」のCMや発泡酒「KIRIN本麒麟」の広告出演もあり。。近年では地方を元気にするための6次化商品の開発に力を入れている。著書「ジャーではじめるデトックスウォーター」「決定版節約冷凍レシピ」「発酵いらずのちぎりパン」 など
Blog: http://lineblog.me/linakawase/
Twitter:https://twitter.com/linasuke0508

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