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十勝の森からジビエを届ける命の料理人 【後編】

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  • #レシピ

この記事の登場人物

佐々木 章太
株式会社 エレゾ社
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*一層理解が深まります。ぜひ前編からお読みください。

全国初のジビエ専門のラボを北海道の豊頃町に。

全国初のジビエ専門のラボを北海道の豊頃町に。

全国から寄せられる多彩なジビエへの要望に応える一方、狩猟で得たすべての肉を無駄なく使い切ってあげたい。そんな思いの末、株式会社エレゾ社(北海道豊頃町)代表の佐々木章太さんは、全国初のジビエのラボ(専門加工施設)の開設に乗り出します。

「エゾシカの解体だけでなく、狩猟した肉の熟成やハム、ソーセージなどの加工までできる施設です。全国の飲食店から届くさまざまなオーダーに対応できる、レストランミートの製造拠点にしようと考えました」

2009年、佐々木さんはラボの建設に取りかかります。選んだ場所は十勝の豊頃町大津地区。かつて佐々木さんの祖父が暮らしていた村で、幼い時分に幾度となく訪れた思い出の地でもありました。

「なにより自然が豊かでした。原生の森や広大な草原、十勝川が太平洋に注ぐ河口も間近。エゾシカはもちろん、この周辺に棲む野生の動物は、健康でうまい食材になると確信しました」

尊い生命を全うするためには一片の肉の無駄も許されない

佐々木さんの予感は的中します。

「時期になると周辺の森にはキジバトやマガモ、エゾライチョウまでが飛来しました」

どれも超がつくほどの人気食材。やはりここはジビエの宝庫だったのです。佐々木さんは、新たにハンターや厨房スタッフも招き入れます。

「企業がハンターを雇ったのは日本で初めてのこと。また、ほかのスタッフにもハンターの免許を取得させました」

狩猟をする料理人となった彼らは、首都圏のシェフからの狩猟や食肉加工に関するニーズにも即応できるだけでなく、自分たちからもジビエ料理を提案していきます。まさにジビエのプロに成長していくわけです。

またラボには念願の「シャルキュトリ(食肉加工)製造部門」も。解体後の骨を使ってフォンをとったり、ニーズの少ない雄鹿のもも肉や解体時に出る内臓の一部を使ってソーセージやサラミをつくったり。

「製造方法も、十勝のジビエに適したエレゾ社オリジナルスタイル。 樹木が生い茂る森や白銀の雪原を駈けていた生命の躍動が伝わってくるような、滋味深い味わいに仕上げています」

一片の無駄も出さないという尊い生命の全う。ラボは佐々木さんのジビエビジネスの理想を実現させたのです。

限りなくジビエに近い、エレゾ社スタイルの自然飼育。 

エレゾ社のラボはさらに進化します。

「2013年ころからラボ周辺の広大な敷地を使い、豚や鶏の飼育もスタートさせました」

毎年少しずつ飼育頭数を拡大し、現在豚はおよそ150頭(黒豚・3元豚LWD・3元豚LWB)、青首鴨150羽、黒軍鶏200羽を飼育しています。

「エレゾ社が手掛ける以上、いかにジビエを内包した生産体系を組むかが最大のポイントになります。基本は、自然環境に委ねる放牧や平飼い。自由に伸び伸び動き回れるストレスフリーの環境としています」

与える飼料も配合飼料や輸入穀類らに頼らず、地場で採れる野菜などが中心。限りなくジビエに近づけたいというのが佐々木さんの考えです。

それでも一人の料理人であり続けること。 

豊頃町のラボからは、全国のレストランや百貨店、イベント会場などにジビエ肉やソーセージサラミなどのオリジナル加工品が送り届けられています。

「狩猟によるエゾシカであれば年間500~700頭、ヒグマで年間15頭、そのほかキジ、エゾシロウサギ、エゾライチョウ、カモ類なども十数羽。日々さまざまなご要望が寄せられていますが、なかなか対応しきれないのが現状です」

なにせ、相手は大自然。牛舎や鶏舎での飼育のように自由な調達はできません。

「でも、だからこそ、価値があるんです」と佐々木さん。

一流シェフがぜひ使いたいと思い焦がれる食材、自分自身が料理してみたいと思う貴重なジビエ。それを雄大な豊頃の地で生み出し、全国のレストランに、一人でも多くの方に提供し続けていくことが、佐々木さんの夢なのです。

「だから自分はハンターではなく料理人でありたい」

さりげなく口をついたその言葉が、強く心に残る取材でした。

株式会社エレゾ社

http://elezo.com/ 

  • 営業時間:http://elezo.com/
  • TEL:015-575-2211
  • 定休日:土曜日、日曜日
  • アクセス:〒089-5465 北海道中川郡豊頃町大津125

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