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世界で唯一の【食べられる国宝】!?とろける「マンガリッツァ豚」に会ってきた

  • #食レポ

この記事の登場人物

藤田 隆宏
十勝ロイヤルマンガリッツァファーム

この記事の登場人物

梶原 一生
十勝ロイヤルマンガリッツァファーム

この記事の登場人物

社領 エミ
ライター
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こんにちは! ライターの社領エミです。

突然ですがみなさん、「国宝」といわれたら何をイメージしますか?

国宝といえば、やっぱり骨董品とか仏像とか、お城とか!

昔からある古~いものを想像しますよね。

しか~し! みなさんはご存知でしょうか。

実は、世界の国宝の中でたったひとつだけ「食べられる国宝」が存在するってことを……!!

な、なんじゃそりゃ~!?

国宝が食べられるの!? どんな食べ物なの!?

美味しいの? どんな味なの? っていうか……

国宝なのに、食べていいの~……!?!?

これが国宝「マンガリッツァ豚」だ!

というわけで!


 早速、「食べられる国宝」があるという北海道・十勝にやって参りました!

超!!雪だ~~~~~!

やった~! 雪大好き!

うわ~~~~~い!!!!!

さっむ……。

寒くて死ぬかと思いました。それもそのはず、この日は真冬も真冬の2月初旬で最高気温マイナス1度・最低気温マイナス10度の超極寒

さ、最高気温がマイナス……? 人間が生きてていい気温なの……??

今回「食べられる国宝」を求めて訪れたのは、十勝ロイヤルマンガリッツァファーム

牧場長の藤田さんにご案内いただきます。

 こんにちは! 国宝があると聞いてやってきました~!しかし、ここって牧場ですよね……? 本当に国宝があるんですか?

 はい、本当にいますよ。あれです!

 ん? なんだあれ……? 羊……?

 違います。よーく見てみてください。

 んん~? もしかして、あれって……!


 豚だ……!!

これが世界で唯一の食べられる国宝、「マンガリッツァ豚」です!

「食べられる国宝」というのはお菓子や料理そのものではなく、マンガリッツァ豚という生き物のことを指していたんですね。

ちなみに国宝といっても日本の国宝ではなく、ハンガリーの国宝だそう。

大きく垂れ下がった耳と長い毛が特徴のマンガリッツァ豚は、上の写真で藤田さんが撫でている赤い「レッド」のほかに、白い毛の「ブロンド」、黒い毛の「スワロベリー」の3種類が存在しています。普段「豚」と聞いてイメージするピンク色の豚とは、色も形も全然違うなぁ。

 
 いやぁ、こんな豚初めて見ました! これが国宝のオーラか~!

 マンガリッツァ豚はもともとオーストリア帝国の寒い地域に生息していた豚で毛が長く、豚が人間の家畜として扱いやすいように品種改良される前の原種に近いんですよ。

 そうなんだ。いやぁ、しかし……。


 でっか。

 
なんかもう、でかい。めちゃくちゃでかい。
よく自分のことを「豚だわ~」と呼び自虐していた私ですが、気軽に豚を自称していた自分を恥じました。本物の豚、でかすぎるでしょ!

お顔のアップはこんな感じ。野性味がすごい! 口から少し飛び出している細長いのが牙だそう。

 
 よかったら仔豚も見てみますか?

 えっ、仔豚がいるんですか!? 是非~!

というわけで、仔豚の飼育舎に行ってみたのです……が!

うわ~……ちょ、ちょっとちょっと……!

め~~~ちゃくちゃ可愛いんですけど~~~!!!

親豚はあの迫力にも関わらず、仔豚は小さくてめちゃめちゃ可愛い!

好奇心旺盛で、こんな私にも次々と寄ってきてくれるさまはまるで天使。うらぶれたアラサーが、こんなに可愛い生き物に必要とされているなんて……。

いつもお世話をしている藤田さんは、仔豚たちのお父さん的存在。めちゃめちゃ懐かれております。

 
 わっ、すごい! 豚ってちゃんと懐くんですね。

 豚は頭がいいんですよ。一説では、チンパンジーの次に学習能力があると言われてて。

 えー!? そうなんですか!?

 そうなんです。人間の顔も一生で40人くらい覚えるといわれていますし、簡単なパズルなら解ける。喜怒哀楽の表現もはっきりしてるんですよ。
 
 

この愛らしい豚さんにそんな頭脳があったなんて……。言っちゃなんだけど、ちょっと意外!

 
 そうなんだ~。全然知らなかったなぁ。
 
 

この後、藤田さんが「だっこしますか?」と仔豚を差し出してくれましたが、急に「ブギー!!!ブギギギギ!!!!!ブギィーーー!!!!!」と断末魔のような叫び声を出し全力で拒否されました。知らない人を認識してる!

マンガリッツァ豚はどうして国宝なの?

 いやー、マンガリッツァ豚ってかわいいですねぇ。そもそも、この豚さんたちはどうして国宝なんですか?

 実はこの豚、一度絶滅しかけたんですよ。

 ぜ、絶滅……!?
 
 

 マンガリッツァ豚は、20世紀初頭まではヨーロッパで日常的に食されていた豚で、当時は1千万頭以上が生息していたそうなんです。
しかしその後、育てやすくたくさん肉が取れる「三元豚」が流行ったせいで、一時ハンガリー国内のマンガリッツァ豚は34頭にまで激減して。

 34頭……!? に、人間のバカ~!

 しかしマンガリッツァ豚は原種に近く、生物的にも貴重な豚。
「これはまずい」ということで、ハンガリーが国内のマンガリッツァ豚をすべてかき集め、2004年に国宝指定しました。現在は5万頭にまで復活しています。

 そんな理由が! 国宝に指定されたのって、けっこう最近なんですねぇ。

 はい。あと、国宝に指定されたのにはもうひとつ理由があって……。

 理由?

 実は、マンガリッツァ豚って……メチャメチャうまいんですよ……!

 え!? う、うまいの……!?!?

 マンガリッツァ豚は、祖先はイベリコ豚と同じとも言われていて、豊かな風味ととろける脂身が特徴の超高級豚なんです。一生に一度は食べてほしいお肉です!

 なにそれ!? た、食べた~~~い!!!

国宝「マンガリッツァ豚」のお肉を実食!

と、いうわけで!

マンガリッツァ豚を味わうため、牧場から車を走らせ数十分。藤田さんにもご同行いただき、ハンガリー料理レストラン「ファームレストラン ヴィーズ」にやって参りました。

ヴィーズは、先ほどの牧場の運営母体である株式会社 丸勝が営むお店。
年中いつでも超新鮮なマンガリッツァ豚を仕入れられるため、十勝ロイヤルマンガリッツァファームのお肉を日本一美味しく食べられるお店なんです。

さぁ! いよいよマンガリッツァ豚料理とご対面です!

はい~! 完全に美味しそう!

その名も、

マンガリッツァ豚のソテー&コンフィ

~十勝産長芋とザワークラウトのミルフィーユ、新鮮なハーブを添えて~

です! ソテーとコンフィ、二種類の調理をされたマンガリッツァ豚に、十勝産の新鮮なハーブ、柔らかいサワークリームのフォームが添えられています。奥に見えるザワークラウトのミルフィーユは、ハンガリーの郷土料理だそう!

見た目的にはかなり美味しそうなマンガリッツァ豚。果たして、どんなお味がするのでしょうか……?

めっ……ちゃめちゃうまいわ……。

 と、とろける~~~! なんだこれ!?

 美味しいでしょう。一般的な豚肉の脂って、融点は38℃くらいなんですが、マンガリッツァ豚の脂の融点は26℃とかなり低い。つまり、口に入れた瞬間、口の中の体温で脂がすべて溶けてしまうんです。

 もう、普通の豚と舌触りが全然違いますね! 食べた端から脂身が全部口の中で溶けてっちゃうので、食感がめちゃめちゃ不思議です。こんなの食べたことないぞ!

 しかも、脂はかなりサラッしているでしょう?

 いや、そうなんですよ~~~! とろけるくせに、食べた後の口の中が全然べたつかない! いやいや、なんだこのお肉……!!
しかも、お肉の味がめちゃめちゃ濃い! なのに全然臭みがなくて、深~い旨味だけがぎっしり詰まっているというか……!
 
 

 いやこれ、味的には何の肉だか全然わからないですね!

 初めて食べた方はみなさんそう仰いますね。
スーパーなんかで一般的に出回っている豚肉って、若いうちに出荷される豚の肉なので味がかなりあっさりしてるんですよ。
マンガリッツァ豚は普通の豚より出荷までの飼育時間が長いので、熟成されて風味が詰まった、しっかりとした味わいになるんです。
 
 

実際に生肉を見せていただいたんですが、熟成されまくった赤身は牛肉のような色の濃さです!

 
 しかもイギリスの研究によると、マンガリッツァ豚の脂は身体にも良いそう。コレステロール値を下げる「オレイン酸」が多く含まれていたり、さらにはビタミンも豊富なんだとか。

 なんだこの豚、死角がない……!

 
私は特に舌が肥えてるわけでもなんでもないんですが、こんなお肉を食べたのはまったくもって初めてです……!
こんな旨味が濃くてとろけるお肉、ほかに存在するのか!? いやしないでしょ!

とにかくこのマンガリッツァ豚、さすが国宝! め~ちゃめちゃ美味いな~!

アジアで唯一、純血の「十勝のマンガリッツァ豚」だからうまい!

も~! マンガリッツァ豚ったら、どうしてこんなに美味しいの!?
その秘密を探るべく、さらに突っ込んだ話を聞いてみることに。

ここからは牧場長の藤田さんに加え、この牧場の代表である梶原さんにもお話を伺います。
 
 

梶原さん(左)

 いやぁもう、め~っちゃくちゃ美味しかったです……! マンガリッツァ豚、すごすぎてひっくり返りました~!

 
 そう言っていただけると嬉しいですねぇ。

 実は、美味しいのは十勝のマンガリッツァ豚だからこそなんですよ。うちはアジアで唯一、純血のマンガリッツァ豚を育てている牧場なんです。
 
 

ここ「十勝ロイヤルマンガリッツァファーム」は、2017年にアジアで初めてマンガリッツァ豚の繁殖に成功した牧場。それから現在に至るまで、純血のマンガリッツァ豚のお肉を作っているのはアジアでここだけなんだとか。

 
 へぇ! 純血じゃないマンガリッツァ豚もいるんですか?

 はい。うち以外のファームのお肉や、ハンガリーからの輸入肉など、日本国内で「マンガリッツァ豚の肉」として出回っているものはすべてマンガリッツァ豚と別の品種の豚を掛け合わせた豚の肉なんです※。うちの豚とは味がまったく違うんですよ。

※2019年3月現在

 
 えー! そうなんだ!
しかし、純血でこんなに美味しいのに、どうしてほかのファームは別の品種と掛け合わせてしまうんでしょう?

 マンガリッツァ豚って、普通の豚に比べて飼育がすごく面倒なんです。
育つのが遅いので、出荷するまで14ヶ月と普通の豚の倍以上の時間が必要。また母豚の出産数も普通の豚の半分以下の5~6頭だし、一頭あたりの赤身の割合も少ない。その上、放牧もしなくてはいけません
 
 

十勝ロイヤルマンガリッツァファーム放牧地は、なんと直線距離約200mと超広大! マンガリッツァ豚を飼うためだけにこの土地を用意するとなると、かなりの投資が必要そう……。

 
 対して、いま日本で主流の豚はかなり育てやすいんです。すぐ育つよう品種改良されているので、生まれてから半年で出荷できるし、母豚は一度の出産で12~16頭とたくさん出産します。土地もそこまでいらないし、ものすごくコスパがいいので、掛け合わせて育てやすい豚をつくるわけです。

 掛け合わせても、条例的には「マンガリッツァ豚の肉」として出荷できますしね。

 えー! そうなの!? なおさら、十勝のマンガリッツァ豚を食べられてよかった……!

きっかけは【小豆】? 豆の卸問屋がマンガリッツァ豚を手に入れるまで

 あれ? 掛け合わせても「マンガリッツァ豚」と呼べるなら、どうして藤田さんたちはそんなに飼育が面倒な純血をわざわざ育てて繁殖させているんですか……? 採算は取れるんでしょうか?

 そうですね。まず、マンガリッツァ豚は普通の豚の10倍の価格で売れる豚なので、商売として成り立つんです。

 うわー! そんなに高級肉なの!?

 そして、ものすごく長い話になるんですが……。実は、もともとうちは、北海道内の豆類の卸売をメインとした会社なんです。マンガリッツァ豚は、弊社にとって初めての畜産なんですよ。
 

実は、株式会社 丸勝は今年で創業66年目となる老舗企業。「赤いダイヤ」と呼ばれるほど品質の良い十勝小豆を扱う卸問屋さんなのです。

 
 えー!マンガリッツァ豚が初めての畜産!? では、なおさらどうして、育てにくいマンガリッツァ豚を……?

 あんこ菓子の需要の低下とともに、小豆の消費量が下がってきたことがきっかけなんです。我々商社は農家さんのために何ができるかを考えた結果、「まずは一般消費者に十勝を発信しよう」ということで、十勝ヒルズという観光施設を始めました。
 
 

2009年にオープンした十勝ヒルズ。季節ごとの花が彩る広大なガーデンに、先ほどマンガリッツァ豚料理を食べたレストラン「ヴィーズ」やガーデンなどがあるテーマパークです。

 
 しかし、レストランひとつ作ろうにも、十勝には特徴的な食文化がないということがネックになったんです。
十勝の歴史はまだ135年と短いので、郷土料理などのはっきりとした文化がないんですよ。
 

 え!? 十勝の歴史ってそんなに短いの!?

 はい。まず北海道自体、開拓されたのが150年前。十勝はそのあとの明治時代に開拓されましたから。日本全国いろんな土地から集まった開拓民で形成されているので、食の文化も定まらずバラバラなんですよ。

 なので、「まずは十勝独自の食文化の歴史を作らなければならない」と。そこで、みなさんにまだ馴染みのない食文化を十勝に取り入れるべく、あらゆる国の料理を研究しました。

 ほうほう。

 で、その中でもっとも良いと感じたのが「ハンガリー」の料理なんです。美味しい上に、当時ハンガリー料理店は国内でも5店舗くらいしかなく、かなり貴重。というわけで、「十勝でハンガリー料理店をやったら面白いぞ!」と実際にハンガリーを訪れまして、そのとき初めてマンガリッツァ豚に出会いました。

 おー! ようやくマンガリッツァ豚の登場だ!
 
 

 で、よくよく聞いてみると、ハンガリー側が「純血マンガリッツァ豚の美味しさが国外になかなか広まっていない」と悩んでいることがわかったんです。輸出できるのは冷凍肉ばかりだし、当時ハンガリー国外のマンガリッツァ豚は雑種だらけだった。なので、「マンガリッツァ豚の血統をしっかり守って飼育してくれるところを探している」とのことでして。

 なるほど。話が繋がってきたぞ……!

 ハンガリーと十勝は、気候も似ていてマンガリッツァ豚が飼いやすい。十勝でできれば、かなり面白くなるぞと思ったんです。
そこから、ハンガリーのマンガリッツァ豚協会の方にお会いして、日本の農林水産省・外務省とも話し合って許可をとって。
「マンガリッツァ豚を大切に守っていく」と約束した上で、2016年に生体輸入に至りました。

そうして2017年、丸勝は見事純血マンガリッツァ豚の育成・繁殖・出荷に見事成功。創業以来初の畜産事業ながら、アジア初の快挙となったのです。

 いやしかし、アグレッシブさが半端ないですね。豆の卸問屋が観光地、レストランのプロデュース、はたまた畜産までやっちゃうなんて!

 それはひとえに、十勝民の開拓者精神ですね。

 十勝は、北海道のほかの地域のように「国の命令で来た開拓民」ではなく、「自分たちの意思で開拓しに来た人たち」で形成された土地なんです。その開拓者精神は、我々に確実に息づいてると思いますよ。

 このフットワークの軽さは、十勝全体の特性でもあるのか。恐るべし、十勝スピリッツ……!

愛情たっぷり、十勝の「世界最先端」マンガリッツァ豚の育成

 いやぁしかし、豆の卸問屋さんが畜産を始めるというのは、かなり大変だったのでは?

 そうですね。しかし、「豆を扱っている」というのは畜産に向いていたんです。自社で豚の嗜好性や太り方を見ながら穀物や豆類の飼料をブレンドできるので。

 なるほど! 丸勝さんだからこその利点ですね。

 ただ、それ以外はめちゃめちゃ大変でしたね。マンガリッツァ豚の国内畜産に前例がないもんで、育て方から既にわからないことだらけ。獣医さんに頼ろうにも、獣医さん自身マンガリッツァ豚を見るのが初めてで。

 わー、そっか……!

 逐一ハンガリーの識者とやり取りをしつつ、ワクチンからなにからすべて一から勉強しました。豚舎も、マンガリッツァ豚のために特別に設計したものなんです。普通の豚舎じゃ育てられないので、いろいろ勉強した上で私が設計したんですよ。
 
 

▲ハンガリーのマンガリッツァ協会の方にも、「このレベルの豚舎は世界最新!」と太鼓判を押されたという十勝ロイヤルマンガリッツァファームの豚舎

一般の豚舎よりもかなり広々とした設計の豚舎は、豚たちの体重ごとに自動的に区画が割り振られるなど、かなりハイテクな優れもの。

また、暑さに弱いマンガリッツァ豚のために、換気のシステムや温度・湿度の管理も徹底されています。

▲豚舎には、どの豚も自由に放牧地へ出られるよう出入り口が設けられています。「本当にこんな造りでいいの?」と、施工業者さんに驚かれたんだとか

 なんかここの豚って、健やかですよね。放牧地も広いし、どの豚ものんびりマイペースに暮らしていて、思ってた家畜のイメージと全然違うなと。「生き物」感が強いというか。

 実は普通の豚って、味に関わらず「どれだけ短期間で肉をつけたか」で肉のランクが決まるんですよ。だから、運動なしで短期間で太るように作られた豚が、一生を小さな檻の中で過ごすってことも養豚業界では多くて。

 えー! そうなの!?
 
 

十勝ロイヤルマンガリッツァファームでは、この小さな檻は「ワクチンやエコー検査等の医療のため」だけに使われています。しかし、多くの養豚農家では「一匹の豚が一生をここで暮らす檻」として使われているそう。

もちろん放牧している農家さんもいらっしゃいますが、国内で豚を放牧している農家は10%に満たないくらいなんだとか。

 
 だけど、マンガリッツァ豚にはそのランク付けは関係ない。なぜなら、ほかの豚と全く違う「味の良さ」に圧倒的なパワーがあるから。
だからこそ、マンガリッツァ豚を健康的に育てることで、従来の豚のランク付けの常識を覆していけるんじゃないかな、と思うんですよね。

 あと、健康的に育ったマンガリッツァのお肉を届けることこそが、「食の安心安全」なのかなと。豚の「生き物」感は、これからも大切にしていきたいところではありますね。

 畜産という「最終的には食べられちゃう生き物を育てるお仕事」だからこそ、そうやって生き物にきちんと愛情を込めていくって本当に大事ですよね。食べる側も気持ちよく食べられるし、畜産のあり方としてすごく素敵だなぁ。

ゆくゆくは十勝が「マンガリッツァ豚の世界一」に!

 おととし初出荷してから、マンガリッツァ豚の評判はどうでしょう? 収益的には順調ですか?

 今のところ出せる量がほとんどないので、卸先のお店を選別させていただいてはいるんですが、評判はかなり良いですね。ただ、まだまだ全然赤字です。

 赤字なんだ! やっぱり、始めたばかりだからですか?

 そうですね。3年半後には年間500頭を出荷できるようになる予定で、それでやっと採算が合うくらいかなと。ゆくゆくは年間1000頭出荷を目指しています。
 
 

 ただ、まだまだ純血のマンガリッツァ豚の知識が伝わっていないと思うことも多いです。僕らが繁殖に成功するまで、日本には雑種のマンガリッツァ豚しか流通していなかったので、純血のマンガリッツァ豚を「そこそこの肉」だと思い込んでる人もいて。

 え~! もったいないなぁ。

 畜産業界ですら、雑種を純血だと勘違いすることもあるんですよ。この間は、明らかに雑種のマンガリッツァ豚の写真を使って、純血だと紹介している畜産系の雑誌もあって。

 もしかして、純血のマンガリッツァ豚って、見た目の特徴すら広まっていない……?

 そうなんです。しょうがないと言えばしょうがないんですよ。マンガリッツァ豚は世界中でもほとんど研究されていないので、そもそも正しい知識自体が未完成ですから。

 うちはレッド(赤)・ブロンド(白)・スワロベリー(黒)の3種の血統を守って育てているんですが、ヨーロッパは「すべて同一」だと考えて育てているところも多いんですよ。そのくらい、マンガリッツァ豚に対して持ってる知識は農家さんによってバラバラで。

 なので、今後はうちが積極的にマンガリッツァ豚の研究をして、3種それぞれの特徴や、マンガリッツァ豚の正しい知識を広めていければと思っています。それをきっかけに、十勝のマンガリッツァ豚の良さも発信できればなと。

 なるほどなぁ。マンガリッツァ豚について、ゆくゆくは丸勝さんが世界一詳しくなっちゃうかもしれないな……!
最後にお聞かせください。丸勝さんがマンガリッツァ豚で成し遂げたい「目標」って何ですか?
 
 

 十勝のマンガリッツァ豚を、世界で一番のマンガリッツァ豚にしていきたいですね。

 せ、世界で一番~!

 我々もマンガリッツァ豚の飼育を始めたばかりですが、こんなに価値のある生き物がきちんと研究されず、雑種ばかりが世の中に出回ってしまっているのは本当にもったいないと感じています。
なので、やるからには中途半端ではなく、研究も繁殖も本物志向で行きたいなと。そしてゆくゆくは、みなさんに「美味しい豚肉といえば、十勝のマンガリッツァ豚だよね!」と認識されるようにしていきたいですね。

 藤田さん、梶原さん、今日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!

十勝のマンガリッツァ豚、全国各地で食べられます

マンガリッツァ豚のブランドを守り、血統を守り、日々研究を続けながらも、豚たちへ愛情をしっかりと注ぐ十勝ロイヤルマンガリッツァファーム。
責任を持って動物を大切にする畜産って気持ちが良いなと思いました。大切に育てられたお肉をありがたく頂く、ってことが当たり前になるといいですよね。

さて! 十勝の絶品マンガリッツァ豚を味わえるお店は、全国各地にどんどん広がっているそう。

▲十勝のマンガリッツァ豚を食べられるお店(一部)はこちら

ここには掲載されていない取り扱い店はほかにも多数あるそうなので、ちょっといいお店にお出かけの際はぜひ探してみてくださいね。

それでは!社領エミでした。
 

 (おわり)

 
編集:おかん
撮影:中西拓郎
企画:人間編集部
 

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十勝ロイヤルマンガリッツァファーム
https://royal-mangalica.jp/

ファームレストラン ヴィーズ(十勝ヒルズ内)
http://www.tokachi-hills.jp/
営業時間:11:00~14:30/18:00~20:00(日・月・火はディナー休業)
TEL: 0155-56-1111
定休日:月曜、年末年始
アクセス:北海道中川郡幕別町字日新13番地5
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