畜産を学ぶ

高校牛児が燃える、年に一度の大会「 第9回 和牛甲子園」開催

関東
  • #高校生
  • #和牛
  • #若手が活躍
" alt="">

2026年1月15日(木)・16日(金)に東京都内で開催された第9回和牛甲子園に取材に行ってきました!

和牛に情熱を注ぐ“高校牛児”たちが全国から集う、和牛甲子園。今年は全国25道府県から43校が出場、枝肉部門には65頭の和牛が出品されました。
初日は取組評価部門の発表が行われ、2日目は東京都中央卸売市場食肉市場で開催される枝肉共励会の結果を受けて枝肉評価部門の受賞校が決定。総合優勝はそれぞれの総合得点で決まります。

鹿児島県立市来農芸高校が5年ぶり3回目の快挙

今年、取組評価部門(体験発表会)・枝肉評価部門の総合得点で決定する総合評価部門最優秀賞に輝いたのは、鹿児島県立市来農芸高等学校。

▲左から畜産部部長の宮下湧介さん(高3)・臼井弾さん(高3)・大喜嵩之さん(高3)・下地正敏さん(高2)。大会には毎年3年生と下級生が共に参加。後輩が先輩の思を受け継いでいる

最優秀賞を獲得した市来農芸高校の枝肉は、A5ランクBMS12、「迫力のある枝肉で、脂肪交雑がバランスよく分布し、肉色も鮮やかで光沢もよく、特に脂肪の粘りが素晴らしい」と評価を受けました。

▲東京食肉市場にて。自分たちが出品した牛の枝肉のセリの様子を真剣な顔で見つめる参加学生たち

体験発表では、優良賞を受賞。

先輩から受け継いだ「1. アンヒドロースで発情抑制」「2. 黒麹を利用した健康牛作り」「3. 六次産業化への取り組み」。

効果検証を行ったものの思うように効果が出なかったものについては、仮説を立てて再度検証を行うなど、粘り強く取り組む姿勢が高く評価されました。

また、一般消費者へ行った販売会は、九州を離れた広島県で行うことで、全国区における鹿児島黒牛の認知度を知り、「実力は高いのに認知度はまだ低い」=「未開拓の強力ブランドとも言える」と今後の対策を考える姿や一般消費者の赤身肉志向にどう対応していくかを考える姿が印象的でした。

▲県外で行った販売会では積極的に鹿児島黒牛をアピール

受賞後、こんなコメントをいただきました。

「最後の3ヶ月で一気に追い込み、最後まで牛がストレスなく過ごせるように管理してきたので、それが結果につながってよかったです。
牛の外見は日々変わってきますが、生体で見てきたものがそのまま枝肉に出ていたなと思いました。
僕たちが1年生の最初に生まれて管理してきた牛で、枝肉まで見ることができて、結果が出せてよかったです。
これから畜産の道を目指す子たちに向けては、畜産は手をかければかけるだけすべて動物が返してくれる、とてもやりがいがある仕事だと伝えたいです」(宮下さん・大喜さん)

「僕は非農家で最初は農業科に入ったのですがが、部活体験で牛に一目惚れして畜産部に入部しました。まずは牛に触れ合って興味を持ってもらえれば」(臼井さん)

「農業は一般の中学生にはあまり知られていないと思うので、自分から積極的に調べて、この素晴らしい産業に興味を持ってもらえると嬉しいです」(下地さん)

また、枝肉部門の上位を最優秀賞の鹿児島県立市来農芸高等学校に続き、優秀賞を鹿児島県立鹿屋農業高等学校、鹿児島県立曽於高等学校が受賞するなど、鹿児島勢が制覇したことも印象的でした。

【枝肉評価部門】

●最優秀賞=鹿児島県立市来農芸高等学校
●優秀賞=鹿児島県立鹿屋農業高等学校、鹿児島県立曽於高等学校
●優良賞=福島県立会津農林高校、栃木県立那須拓陽高等学校、愛知県立渥美農業高等学校
●審査委員特別賞=岐阜県立飛騨高山高等学校

広島の地域資源を活用した取り組みが評価を受けた西条農業高校

取組評価部門で最優秀賞を獲得した広島県立西条農業高等学校は、先輩の代から引き継いできた地域資源の赤ぬかを飼料に使ったMUFA値(オレイン酸など融点が低い脂肪酸)の向上を目指す取り組み、無洗米を作る際に出る米のとぎ汁を活用した実験などを発表。
工夫を凝らした資料を使ったわかりやすい説明で、日々向き合ってきた自分たちの活動への自信がうかがえました。

▲左から佐崎有梨乃さん(高3)・川筋つぐみさん(高3)・榊田雄大さん(高3)

 「取り組み発表に向けてはスライド作成や発表練習を頑張ってきたので、多くの審査員の方々、他の高校さんから認められたことはとても嬉しかったです。
高レベルな高校さんの発表を聞けたことも刺激になり、中でも加茂農林高校さんの取り組み発表は特に印象に残っていて、昨年度の課題を丁寧に分析して考察を行い、「ここが問題だったのではないか」という仮説を立てて、データを集めて検証していかれたところが素晴らしく、私たちも見習っていきたいと思いました」(佐崎さん・川筋さん・榊田さん)

【取組評価部門】

●最優秀賞=広島県立西条農業高等学校
●優秀賞=栃木県立矢板高等学校、岐阜県立加茂農林高等学校
●優良賞=岐阜県立飛騨高山高等学校、宮崎県立高鍋農業高等学校、鹿児島県立市来農芸高等学校
●審査員特別賞=岐阜県立大垣養老高等学校
●高校牛児特別賞=広島県立西条農業高等学校

飛騨牛へのプライドを持つ“チーム岐阜”の戦い

取組部門の発表は、どの高校も畜産業界の課題である後継者問題や環境負荷の軽減、飼料高騰への対策、地元ブランドの強化、一般消費者の畜産業への理解促進など、さまざまな切り口から「持続可能な畜産」につながる取り組みを、地域や機関と連携しながら行なっていました。

岐阜県から出場した岐阜県立加茂農林高等学校、岐阜県立飛騨高山高等学校、岐阜県立大垣養老高等学校は、共に切磋琢磨しながら飛騨牛のブランド力向上を目指しています。「良き仲間であり、良きライバル」という言葉も聞かれ、お互いに刺激を受けながら地域を盛り上げる、“チーム岐阜”の横つながりの強さを感じました。

取組部門で優秀賞を受賞した岐阜県立加茂農林高等学校は、海外研修のオランダで世界初の水上牧場を視察した経験を経て、独自の視点の重要性、アニマルウェルフェアの重要性を実感。酒や酢など調味料を使った誘引液で作成した、環境に配慮したハエトラップの効果的な設置方法を試して牛の忌避行動を測定するなど、細やかなデータの取り方と力強い発表が高く評価されました。

▲オランダ研修では、水に浮かぶ世界初の水上農場を視察
▲飛騨牛のブランド力向上をかけた戦略を発表する、岐阜県立加茂農林高校

また、優良賞を受賞した岐阜県立飛騨高山高等学校は、企業と連携して耕作放棄地において無農薬で育てられた桑を使った「桑の葉サイレージ」を飼料として利用したプロジェクトの取り組みを発表。採食率が上がり、飼料価格を抑えることができたこと、さらには肝機能への負担を減らす効果の可能性が見えたことを伝えました。

▲岐阜県立飛騨高山高校では、およそ50頭の黒毛和種を飼育、年間約12頭の飛騨牛を生産する

栃木県立矢板高校は牛の避難訓練で牛のトリアージを提案

取組部門で優秀賞を受賞した栃木県立矢板高等学校が行う、家畜動物の防災・減災に向けた「牛の避難訓練」の体験発表も興味深かったところです。大規模災害時に畜産農家の牛を同校の放牧場に避難させるプロジェクトで、2年目の取り組みとなる2025年は、1年目の実施後、専門家からの助言により「農家プロファイリング」と「トリアージ」を追加。

▲栃木県立矢板高校、牛の避難訓練実施の様子

農家ごとに牛舎構造が違うため、各牧場の避難経路を可視化し、運搬者(JA)に共有。守るべき血統や思い入れのある牛を協議し、「避難トリアージ」を提示してもらうことも提案しました。この取り組みはすでにメディアにも取り上げられ、「全国高校生農業アクション大賞」で大賞を受賞するなど注目を集めていますが、畜産に携わるすべての関係者へ防災意識を喚起することはもちろん、日頃災害時のことを考える余裕のない生産者に変わって高校生が取り組むことの意義を感じました。

各校面白いプレゼンが続く

取組部門で優良賞を獲得した宮城県立高鍋農業高等学校の発表では、これまで行ってきた地元企業のきのこの菌床を使った敷料の研究の延長で、菌床灰を消石灰の代わりに防疫のための消毒剤に使えないかを検証。

また、昨年度大会時には出品牛が東京に到着後すぐに体調を崩し、緊急屠畜に至ったことで牛を健康に出荷することの重要性を痛感。肥育牛をさまざまな角度からスマホで撮影するだけで体重が推定できる県内の高専とともに体重推定アプリの独自開発を県内の高専メンバーとともに始めているそうです。

▲和牛を美味しく食べてもらうための焼き方を研究する、宮城県立農業高校

そのほか、ユニークな取り組みとして、ジューシーである一方「脂っぽい」ともされる和牛を美味しく食べてもらうための焼き方を研究し、「レア牛脂コーティング」を開発。
文化祭では自慢のレア牛脂コーティング法で焼いた仙台牛の牛串を提供したという宮城県立農業高等学校や、乗馬ならぬ「乗牛」によって地域の子どもたちに牛に興味を持ってもらおうと試みた神奈川県立中央農業高等学校などがありました。

▲教育ファームで乗牛体験を行う、神奈川県立中央農業高校

会場では交流会の場も設けられ、大きな学びの場であるとともに、会場に集った総勢155名の高校牛児たちがつながる機会にもなりました。