畜産を学ぶ

10年ぶり開催“乳牛のオリンピック”。参加した全国の高校生たちを追っかけレポート

大学高校 北海道
  • #若手が活躍
" alt="">

2025年10月23日〜25日に北海道安平町で開催された、第16回全日本ホルスタイン共進会(ホル全共)。コロナ禍の中止を経て、実に10年ぶりの開催となった今大会には、全国から予選を勝ち抜いた乳牛約400頭、約3万3000人の来場者が集いました。

未来の酪農を担う若い世代への賞賛と激励の思いを込め、従来の後継者育成プログラムや交流会に加えて高校出品牛の最高位賞を選出する「ハイスクール・デイリー・グランプリ」が新設されるなど、高校生に向けた取り組みも多数実施されました。

現地を訪れると、農高アカデミーや畜産に生きる会議に参加してくれている見知った顔もチラホラ。参加する学生さんたちの熱い思いに触れることができました。畜産の道を志す、会場の若き声をお届けします!

ハイスクール・デイリー・グランプリの未経産の部で最高位を獲得した、群馬県立吾妻中央高等学校のホルスタイン

初日に開催された、後継者育成プログラム「ジャジング&リードマンスクール」

審査開始前日に開催されたのは、「後継者育成プログラム」。前半の【ジャジング&リードマンスクール】では、全国の高校生を中心とした参加者を対象に、講師に迎えたホルスタイン・カナダの公式審査員として30年以上の経験を持つブルース・ウッド氏が牛の見方と美しく見せる引き方を指導。178名の学生たちが熱心にメモを取る姿が印象的でした。

続く【リードマンコンテスト】には、「高校1・2年生の部」と「高校3年生の部」に分かれ、総勢82名の高校生が出場。それぞれからベストリードマン、セカンドベストリードマン、優秀賞5名が選出されました。地元の共進会に参加した経験がある学生も、初舞台が全共という学生も、1頭1頭、一人ひとりをていねいに見て審査するブルース氏に、緊張の面持ちで向き合っていました。

2日目、いよいよ審査スタート!

朝8時からいよいよ【第1部】の審査がスタート。

出品牛舎の雰囲気も前日とは打って変わって、緊迫感とともに活気のある、どこか浮き足立った空気が充満しています。

神奈川県エリアを覗くと、スカジャンで揃えた神奈川県立相原高等学校の養牛部の部員たちが、神奈川チームの農家さんたちとともに、【第5部】で出品する「アイハラ アミュレット コハナ」ちゃんの準備の真っ最中。

「あ、おはようございます! 今は尻尾の毛も逆毛を立てているところです。毛刈りは数日前から繰り返してきたので、今日は毛並みを整えて、背中の毛はいつもよりハードなスプレーを農家さんにお借りしてかためました」

「この子は9月末の予選に向けて夏休みあたりから高圧洗浄機でマッサージをするなどして体脂肪を落として体格を作り、チーム4人で交代で毎日調教してきました。全共進出が決まって、クラウドファンディングで皆さんから参加にかかる費用の支援をしていただき、今日を迎えることができました」と佐々木柚奏さん(高2)。

結果は1等賞5席。

退場口では先生方を始め、チームメイトが待ち受けます。

コハナの機嫌を心配していたリードマンの宮﨑若菜さん(高3)も、ひとまず終わって安堵の表情。

こちらは北海道帯広農業高等学校。

「10年ぶりのホルスタイン全共が北海道開催ということで、やっぱり北海道勢としては負けられないという気合もありました!」と初日のリードマンコンテストでベストリードマンに輝いた、ホルスタインクラブの新居乃莉さん(高3)。高校卒業後は、お父さんと同じ酪農ヘルパーとして働くそうです。

セカンドベストリードマンに選ばれた藤山結さん(高2)に受賞の決め手を聞くと、「よく“目力が強い”と言われます。審査員の前では勝つんだという気持ちと自信を見せることが大切かなと思っています」。北海道の酪農家の家に育った彼女は、卒業後は酪農コントラクター(牧草収穫など牧場の仕事を請け負う事業)で働く予定なのだそう。

半袖短パン姿で駆け回るのは、3年生の志村凛くん(高3)。埼玉県の非農家出身で帯農へ。「宮崎大学を志望していて、実は来週が受験なんです。日本の畜産と言えばやっぱり北海道と九州なので、両方を見ておきたいと思って。将来は飼料分野で世界の畜産に貢献していきたいと考えています」と真っ直ぐな眼差し。「でも今日は寝坊しちゃいました。1時間だけ仮眠を取ろうと思ったらすっかり寝てしまっていて、起きたら審査開始の直前で、僕は牛舎の番をしながら十勝の農家さんの活躍をYouTubeで見ていました(笑)」と照れ笑い。

岩手県立盛岡農業高校からは共進会班の選抜メンバーが参加。県内の共進会と違い、全国から選りすぐりの牛と農家さんが集まる会場の空気に、出場時は手も足も震えたとか。「朝と放課後に毎日リードの練習をしてきましたが、真剣にやればやるほど不安も増えて牛が嫌になりそうになった時もありました。でも決めたからには頑張ろうとやってきたので、それなりの結果が出て良かったです」と2年生の鈴木楓芽くんと澤川漣くん。3年生のセカンドベストリードマンに選ばれた藤田梨愛さんは、実家が酪農家。「牛にはこちらの精神状態が伝わるので、信頼関係はとても大切。手をかけて育てればそれだけ良い牛になるのが、牛の魅力かなと思います」。

ゼノアックは牛さんたちに鉱塩を提供していました。

群馬県のエリアを覗くと、群馬県立吾妻中央高等学校の部員たちを発見。糞番をする部員の動きがとにかく速い! 牛たちの少しの動きも見逃しません。

そしておそらくこの会場の空気を一番楽しんでいたのは、とわの森三愛高校の共進会班。3年生、班長の山﨑可志和くん、伊藤瑠猪くん、鈴木智也くんは、「高校生の間に全共を経験できて良かったです。僕たちはそれぞれ栃木、神奈川、宮城県の酪農家の次男なんです。とわの森は北海道から九州まで、本当に全国から生徒が集まっている高校なので、畜産の道を目指す身として、酪農の本場の北海道で同じような仲間と出会えたことはとても大きいです。これって青春ですよね!」とガッツポーズ。

ちなみにリードマンコンテストでベストリードマンに選ばれた1年生の森田柚さんは、東京都出身で「牛乳が好き」だったことから、生産側になりたいと思って北海道の地へ進学。今回が初めての共進会だったといいます。「緊張していたから何を考えていたか覚えていないのですが、気づいたら一番前にいました(笑)。学校での直前練習では、本番のように牛を引いて、先輩に審査員をしてもらい、どこを直したらいいかを教えてもらいました」。

聞けば聞くほど、牛と共にいろんな人生があるのだと驚くばかり。

茨城県立水戸農業高校・畜産部牛班の浅野志歩さん(高3)は、「中学3年生の頃に不登校気味になった時期があり、大好きな動物のことが学べるならということで農業高校に入りました。正直最初は、学校生活はうまくいかなくてもいいかなと思っていたのですが、同じように動物が好きな子たちが集まっていて、今は友だちと過ごす毎日が本当に楽しいです。高校のOGOBでもある農家さんたちがカッコよく牛を引く姿に憧れています。こうした繋がりができることが、私が共進会に参加している一番大きな理由かもしれません」。

3日目、ドキドキの審査発表!最終日。

あれ? 向こうから神奈川チームが登場。引いているのはとわの森三愛高等学校の伊藤くん。

【第15部】に出場?

「はい、これから実家の牛を引いてきます」。北海道の代表として高校から出場し、実家の神奈川でも出場するという、全国大会を大いに満喫している模様。

こちらは【第15部】で「グロリーオーサ クリーメル クラツシヤブル フイラ」が優等賞4席の成績を残したばかりの京都府立農芸高等学校の牛舎。1時間後には【ハイスクール・デイリー・グランプリ】への出場が控えています。まるでファッションショーのランウェイの舞台裏で、モデルさんが戻り、一気に慌ただしくなるヘアメイクさんやスタイリストさんたち、といった様子。

さて、いよいよ最後の【ハイスクール・デイリー・グランプリ】の開催です。この2日間の各クラスで優等賞および1等賞に入賞した高校出品牛が出場し、審査されます。

みんな緊張の面持ちで、いざ審査場へ。

 

審査の結果、高校出品牛の最高位に輝いたのは、<未経産の部>は群馬県立吾妻中央高等学校。<経産の部>は京都府立農芸高等学校。

吾妻中央高等学校のリードマンを務めたのは吉田芽生さん(高3)。「農家さんや先生たちからも応援していただいていたプレッシャーがあったので、選ばれた時はとてもホッとしました」 

「全共という舞台が初めてでわからないことも多かったのですが、先生に教えていただきながら部員全員で調教など日々の活動を積み重ねてきて本当に良かったなと思います。グランプリをもらったのは私たちの高校ですが、どの高校も目標を持って日々の管理を頑張っていて、群馬では共進会に出ているのが吾中1校しかないので、全国から集まる同世代の仲間にとても刺激をもらいました」

京都府立農芸高等学校のリードマンを務めたのは、畜産部の中井蒼空くん(高3)。

「フィラ号を全共に出品できることになり、ワクワクしながら毎日3回牛を洗い込み、最高の状態で出品できるように観察を怠らないよう努めてきました。

会場は今まで参加してきたどの共進会場よりも広く、【第15部】で待機場所に入った時には牛のレベルの高さ、農家さんの勝つ気を感じましたし、リングに入った時にも観客の多さや品定めするような目線を感じて、とても緊張しました。

共進会は、先輩方の代から受け継ぎ自分たちで管理し育ててきた牛が全国レベルで現状どの位置なのかを序列としてしっかり勉強できるだけでなく、他の農家さんの毛刈りの技術やリードしているところを目に焼き付け、高校に帰って思い出しながら実践して自身のスキルアップに繋げることができます。なにより、プロに混じってリングで引くという経験が得られることが、僕がやりがいに感じているところです。今回は、高校生で全国の名牛と同じ舞台で競うという、とても貴重な経験をすることができました。ありがとうございました」

共進会に力を入れる高校生たちにとって、共進会は牛の魅力に触れることはもちろん、大好きな牛を通じて、学校の仲間や手伝いに来てくれる卒業生、地域の農家さんたちとチームとなり、一緒にひとつの目標に向かうことに大きな喜びを得ているようでした。

会場を案内してくれた相原高等学校の佐々木さん、とわの森三愛高等学校の伊藤くん、ありがとうございました! 「結果はどうであれ、初めて全国大会で牛を引けて、この1週間は本当に楽しかったです」と良い笑顔。

北海道ジュニアホルスタインクラブ交流会

25日の夜に行われた「北海道ジュニアホルスタインクラブ交流会」には、150名以上の高校生が参加。本場、北海道のジンギスカンを味わいながら、全国の仲間との交流を楽しみました。

活動発表で「全員が非農家ですが、牛が好きなことでは負けません!」と宣言したのは、東京都立瑞穂農芸高等学校畜産科学科のメンバー。

「酪農資材器具展」にはゼノアックも出展。ゼノアック縁日をお楽しみいただきました!

以前取材した橋本さんがブースの担当者に。

牛さんの敵を撃つ射的や鉱塩ケース玉投げなどゼノアックならではの催しが。

// 関連記事