後藤ファーム
栃木県那須郡那須町
酪農王国である那須エリアで、ホルスタインから生まれた交雑種(F1)の雌、約750頭を育てる肥育農家。
和牛同様に、約30ヶ月長期肥育された「後藤牛」は、濃厚な旨みとさっぱりとした脂が持つバランスのよい味わいが魅力。「後藤牛のステーキ丼」が看板商品の地元の人気店「レストラン西欧」は、たびたびTVでも取り上げられています。
もくじ
那須連山の天然水と豊かな自然環境の中、長期肥育したF1の後藤牛
那須五峰の一つ、朝日岳から流れ出る余笹川のほとりに位置する後藤ファームは、山々に囲まれたのどかな環境で、牛たちは広々と風通しのよい空間に暮らしています。
餌は、かつて後藤ファームが、“安全で安心なおいしい肉をつくりたい”という思いを持つ生産者を全国から集い、「なかなかびーふ生産組合」として開発に力を注いだオリジナルの飼料。そこに地場産の草や藁を与えています。整った環境、水、餌が、おいしい牛づくりの秘訣です。
那須水害・東日本大震災の風評被害…さまざまな壁を経て手に入れた「後藤牛」ブランドを全国へ
自社ブランド「後藤牛」を打ち出す後藤ファームですが、ここに至るまでは大変な道のりがありました。
1998年8月、記録的な集中豪雨により余笹川・黒川などが氾濫し、那須町や黒磯市(現那須塩原市)に甚大な被害を及ぼした「那須水害」で、後藤ファームは牛が牛舎ごと流され全滅、住宅や車、重機、トラックもすべて被害に遭いました。当時は今のように自然災害を保証する保険はなく、巨額の被害の自己負担が強いられました。
その後、2001年からはBSE(牛海綿状脳症)問題、続いて口蹄疫による風評被害、さらに2011年から東日本大震災後に広まった風評被害に行く先を阻まれ、市場の価格下落が続きます。
代表の後藤寿一さんは那須水害が起きた当時20代。「群馬県の全国食肉学校を出て肉屋で働いた後に実家に戻って現場で一生懸命に働いていたけど、牛飼いってのはこんなにも儲からない商売なんだと思ったね。そりゃそうだよね、借金返すので精一杯だったから」と寿一さん。
だからこそ今、「やっと」という思いがある。父の代から牧場を継承し、卸し先の飲食店にTVの取材が入って後藤牛が取り上げられると、「おいしい」という噂は世間に広がり、問い合わせが倍増。地元の加工業者などと組み、六次化にも力を入れ始めました。寿一さんにとって、やはり消費者の声を聞くことによるやりがいが大きかったと言います。
観光客も多く訪れる那須エリアで「おいしい」の声を生み出す喜び
「誰でも見た目だけは良いものが作れるようになっちゃった時代。でもおいしいかどうかはまた別の話。今、ようやく25年ほど経って、自分の頭の中で思い描いていたものが形になってきました。お客さんから「うまかったよ」という声や手紙をもらうのは、作り手としては最高の評価です。
ゆっくりだけどクチコミで名前も歩き始めたので、全国の消費者の方に後藤牛を食べてもらいたいなと思いますし、那須は観光地でもあるので、子供の頃那須に来て食べた肉がおいしかったという経験から、大人になってまた遊びに来てもらえると嬉しい。地元の業者さんと一緒に地域の活性化につなげていければ」と寿一さん。
寿一さんがスタッフに求めるものは、「第一にはやる気のある人。そして向上心があること」。代表の情熱はもちろん、現場スタッフたちの牛への情熱も高い。自分たちが丹精込めて育てた牛への評価、那須という観光地で発信力のある消費者の声がすぐそばにあることも大きなやりがいになります。わきあいあいとした少人数で回す農場だからこそ、一人ひとりがすべての行程に関われることも働く喜びとなりそうです。
// 農場情報
- 名称
後藤ファーム
- 所在地
329-3446 栃木県那須郡那須町沼野井1288
- 電話番号
0287-75-0755