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「砂の牛床」は快適・健康。藤井牧場のゆったり寝そべる牛たち

この記事の登場人物

藤井 雄一郎
有限会社 藤井牧場
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北海道を代表する観光地・富良野市の丘陵で、飼養総数約900頭という大規模酪農を行っている有限会社藤井牧場。大きな牛舎を覗いてみると、床には砂が敷き詰められ、牛たちがゆったりと寝そべっています。

「砂だと寝起きがしやすく、牛が牧草地と同じようにリラックスできるんです」と、代表の藤井雄一郎さん。さて、日本ではまだ導入例の少ない「砂の牛床」の効果とは?

世界最先端の技術を導入して環境改善

 
富良野に入植して112年、代々酪農経営を行ってきた藤井家。五代目にあたる現代表は、牛の個体管理情報を数値化しての徹底したデータ管理、酪農部門では日本初となる農場HACCPの認証取得などに取り組み、一頭あたりの乳量を増やす高泌乳型での経営規模の拡大を進めてきました。

おがくずなどの敷料の代わりに砂を敷き詰める「砂の牛床」を導入したのは平成26年のこと。高泌乳型の経営では世界の最先端を走っているアメリカのウィスコンシン州の経営を研究した結果、「牛の環境改善のためにはこれが最適」と判断しての導入です。

牛は本来、食事をしている時間以外は横たわって反芻しながら過ごす時間の多い動物です。放牧地では、草を食べて満腹になった後、牛たちが寝転んでいる姿をよく見かけます。牛舎の環境が悪いと牛はリラックスできず、横たわったり反芻したりという行動が少なくなります。

「牛は体が大きいので、寝返りするにも一度立ち上がらなくてはなりません。砂の牛床だと蹄が滑らず踏ん張りがきき、楽に寝起きができます」

乳房炎、蹄病、病気が激減した! 

砂の牛床を取り入れた結果、藤井牧場では蹄の病気の発生率が激減しました。定期検査でも飛節(関節)の腫れが見つかることはほとんどありません。
また、牛乳の品質に影響を与える恐れのある乳房炎の発生率も激減し、その他の病気の発生率も下がりました。

「牛にとっての快適性が、科学的に証明された」と藤井さんは言います。

一方で、砂の牛床の導入にはデメリットもありました。大量の砂を使用するため、購入と処分にコストがかかるのです。
これを解決するために、藤井牧場では「サンドセパレーター」を導入。砂とふん尿を分離し、砂を敷料に、ふん尿を堆肥としてリサイクルさせています。その結果、砂にかかるコストは当初の10分の1にまで抑えることができました。

乳量もアップ、安定生産で信頼に応える 

砂の牛床を導入した後、藤井牧場では乳量が1割以上もアップ。また、牛の病気が少なくなって新たな牛を購入しなくなり、その面でも利益が出ているそうです。
現在、藤井牧場では、全国平均の1.5倍となる年間の個体乳量1万2000kgを達成しています。遺伝子レベルで考えて良い牛群をつくる試みや、成長ステージと日々の体調に合わせた独自の飼料設計といった取り組みの成果もありますが、砂の牛床による牛の環境改善が最大の効果を上げていることは間違いありません。

「大きな投資が必要でしたが、それを上回る効果を上げています」と藤井さんは満足げです。

グローバル化や不安定な飼料価格など、酪農を取り巻く環境は決して楽観視できる状況ではありません。けれど、藤井さんはむしろそれをチャンスと捉えています。

「酪農分野での離農は今後も進むことが予想されています。国内の生乳生産が減る中で、技術を磨き経営を鍛え、30年先も安定的・発展的に生産する牧場を目指します」

有限会社藤井牧場

http://www.fujii-bokujo.com/ 

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