千葉ウシノヒロバ
千葉ウシノヒロバは、“牛が暮らすキャンプ場”。
1968年より50年以上千葉市が運営し、千葉の酪農家たちから子牛を一時的に預り、支えてきた千葉市乳牛育成牧場の預託事業を引き継ぎ、牧場跡地に2020年10月に開園。“牛・人・自然が、穏やかに交差する場所”を目指し、牛にとって快適な育成牛舎を新築し、キャンプ場やマルシェ、イベントスペースなどの機能を備えた新しい観光施設として、年間およそ1万人の来場者を迎えています。
もくじ
暗くなり灯りが点ると、神殿のように浮かび上がる牛舎
千葉ウシノヒロバではキャンプやBBQ、マルシェでのお買い物を楽しんだり、ドッグランを楽しんだり。人気のキッチンカー「ミルクバースタンド 26時の抱擁」では、おいしい牛乳やコーヒー、期間限定のソフトクリームなどを味わうことができ、ファミリーにもおひとり様にも嬉しいスポットです。
ミルクバースタンド 26時の抱擁
手がけるのは、企業や行政の抱える課題をデザインで解決し、未来により良い社会をつなぐデザインファーム、Chicabi(チカビ)。デザインを強みとするChicabiだからこそできる仕掛けが、ここにはたくさんあります。
例えば「きままに」「じゆうに」「あなたらしく」とひらがなで書かれた案内板や各施設に描かれたピクトグラムは、思わず写真を撮りたくなるものばかり。テントのような三角屋根のトイレは天井が蚊帳で覆うだけにしてあるため、空気が通り、においがこもらないように設計されています。靴を脱いで利用するようになっていることで、いつでもきれいに保たれているのも嬉しいところ。
また、離れた場所からでも目に入る育成牛舎は、開園に合わせて新設されたもの。「旧牛舎は足場が悪かったので、牛にとって一番良い場所を考え、敷地内で一番風通りが良い場所を選びました。周りより少し高くなっているので、離れたところからでも牛舎を見ることができるんです。これには人が牛を見下げるのではなく、絶対に見上げる形にしたいという思いがありました。夜、暗闇の中に灯りが点ると、神殿のような雰囲気になります。牛舎の背後にある森が鎮守の森のようでもあり、キャンプ場を訪れた人たちが、自然と牛を敬う気持ちになれるといいなという思いがありました」と、ウシノヒロバ代表の川上鉄太郎さん。
ウシノヒロバ代表の川上鉄太郎さん
「敷地内を計画する中で、まず最初に決めたのが牛舎の場所でした。今の牛舎はそれぞれの区画の前に自由に出入りできる運動場を付けているので、食事の時間が終わるとみんな外に出てきます。旧牛舎は今、マルシェやワークショップなどを行う広場、大屋根ガーデンYAHHOに生まれ変わっています」
50年以上に渡り、千葉の酪農を支えてきた預託サービス

千葉ウシノヒロバの前身、千葉市が運営する千葉市乳牛育成牧場が開業したのは、1968年(昭和43年)。ここでは主に千葉市内の酪農家から子牛を預かり、育てる預託事業を行なってきました。預託事業とは、酪農家に代わり、乳牛として働くことができる初産分娩直前まで預かり育て、返還するサービスのこと。

牛舎のスペースの限られる小規模な個人酪農家にとって、牛が利益を生み出すまでの期間、預かってもらえることは負担軽減になります。千葉ウシノヒロバでは、この預託事業を引き継ぎ、主に千葉市内の酪農家から生後4ヶ月〜6ヶ月の牛を預かり、適齢期まで育成して人工授精を行い、最低妊娠5ヶ月まで迎えてから、各農家へと返還しています。
千葉市が運営してきた千葉市乳牛育成牧場は、52年に渡り、千葉の酪農家たちを支えてきました。ただ、赤字続きで経営は非常に苦しかったのが現状。老朽化していた牛舎の改修にも膨大な予算がかかることから千葉市は2019年3月末での預託事業の廃止を決めました。そこで再整備するための民間事業者を公募し、後継として決まったのが、千葉ウシノヒロバだったのです。
都会に生きる人たちがスイッチを切り替えられる場所にしたい
川上さんには、この場所を作るにあたり、“都会のすぐ近くに、スイッチを切り替えられる場所を作りたい”という思いがあったそうです。
「今の日本は経済的にも物理的にも、さらには価値観までも東京一極集中し過ぎていると感じてきました。そこで、都市部で働く人たちが、少し離れてスイッチを切り替えられる場所を作りたいとずっと思ってきました」
そんな川上さんの思い通り、施設を利用する人たちの中には、都会を離れた息抜きの場所として使う人たちもいるようです。
「定額キャンプを利用してくださっている方の中には、大手企業のエンジニアとして働きながら毎週のようにここに通い、元牛舎(大屋根ガーデンYAHHO)でデスクワークやリモートのミーティングを行い、キャンプをして帰られる方がいらっしゃいます。理想のライフスタイルだなと思うし、その方にとってのカントリーハウスになれているなと思うと嬉しいですね」と川上さん。
大屋根ガーデンYAHHO
子牛の育成とキッチンカーなどの接客が両方楽しめる
現在、千葉ウシノヒロバでは一緒に働くスタッフを募集しています。
「牧場スタッフの主な仕事内容としては、日々牛舎環境を清潔に保ちながら子牛の健康状態や、餌をしっかりと食べているかに気を配ります。入牧のタイミングは年に4回あるので、その際の入牧管理や、下牧の際には家畜商さんや酪農家さんと連携をとって手続きを行います。あとは重機を使っての除糞作業などですね。北海道以外では育成牧場自体が少ないので、他ではできない経験をしていただけると思います。
また、Chicabiが運営しているからこそ、デザイナーがすぐ近くにいます。例えば施設のポスターや看板を作る際にはすぐにデザイナーに相談できるのも面白い点かなと思いますし、何か問題意識を持っていたり、今の社会の状況を変えたいと思っているなど、世の中に“発信したい”という思いがある方には、発信のチャンスを提供できるのではないかと思います」
キャンプ場の開園日(木〜日)には、キャンプ場やキッチンカーのミルクバースタンドの営業など、観光スポットならではの賑わいを味わうことができ、閉園日(月〜水)は静かで穏やかな牧場で仕事ができる環境も、働く魅力になりそうです。
// 農場情報
- 名称
千葉ウシノヒロバ
- 所在地
〒265-0041 千葉県千葉市若葉区富田町983-1
- スタッフ募集