第15回農高アカデミー:テーマ「動物に関わる仕事って何があるの?」
畜産を勉強中の全国の高校生がオンラインで学び合う「つながる農高プロジェクト」の農高アカデミーも3年目に突入! 第15回目(12月20日開催)は、動物医薬品メーカー・ゼノアックの松本純さんをゲストにお迎えし、さまざまな分野で畜産を支えるお仕事について勉強しました!
もくじ
▲農高生・普通科の高校生が意見を出し合い、「動物の価値を高める」ために、畜産の生産現場の周辺からできることは何かを考えました!
ぜひ皆さんも一緒にお考えください。
~以下、ダイジェストです~
Part1:まずは松本さんのプロフィール~今のお仕事に就いた経緯
松本 私はゼノアック(日本全薬工業)という動物の医薬品メーカーのLA事業部、牛や豚などの薬の営業部門で働いています。会社全体としては、薬を開発したり、品質を確認したりする部門などさまざまな部門があります。私は東京農業大学で農場の実習などをするうちに牛のことがすごく好きになり、自然と農場で働きたいと思うようになりました。ただ実家が非農家だったので将来の想像ができず、一度企業に就職する道を選びました。畜産を流通の面から見るため、食肉の卸売業者に入ったんです。
…その後今の会社に転職されたんですね。
松本 そうですね。働くうちに、やはりもう少し生産現場に近いところに行きたいなと思うようになり、会社を探していた時に、今の会社に辿り着きました。私も学生時代は将来を不安に思いながら過ごしていたので、畜産業界に進むか一般的な就職をするかに悩む皆さんの気持ちは、すごくわかります。
Part2:1日のお仕事内容は?
松本 営業の仕事は、通常朝8時頃会社に出て、その日のスケジュール確認や事務処理、メールの処理をして、農家さんのところに行きます。日によりますが、この日は午前中に3軒、昼食をとってお昼から4軒回っています。肉牛農家さんだったり酪農家さんだったりいろいろです。その後夕方から獣医さんがいる診療所で製品のご紹介をしたり勉強会をして、翌日の準備をします。夜はお客様との会食が入ることもあります。
…農場では具体的にどんなことをされますか?
松本 お客さんと一緒に農場を歩きながら、動物に何か異常がないかなどを確認します。お昼に農場に行くと、静かな牛舎のあちこちで子牛がコンコンと咳をする音やうんちが落ちる音が聞こえるんです。これは水下痢の音だな、硬いうんちの音だなとか、五感を働かせて音やにおいからも気づくことは多いです。
▲この子牛を見て、何を想像しますか?どれだけの情報をキャッチできますか?
Part3:お仕事のやりがいは?
松本 やはり何か自分たちの製品で牛が助かったり農場が良くなって、農家さんに「本当にありがとう。助かったよ」と言っていただけた時は嬉しいですね。牛のしっぽの根元に疥癬(かいせん)ダニという寄生虫がついた時は、牛は痒くて寝られなくなって、尻尾を振りながらずっと立ったまま起きていたりするんです。すると乳量にもお肉にも支障が出てきます。駆虫薬を使った後検査をして、獣医さんと一緒に1時間ごとに牛舎に行き、立っている牛と座っている牛の数を数えて数値化し、実際に乳量が上がったりお肉の量が増えた時は嬉しかったです。
Part4:動物に関わる会社ならではの“あるある”はある?
松本 社員はみんな動物のグッズを集めています(笑)。机の周りにも牛グッズや豚グッズをいっぱい置いていますし、ネクタイやハンカチなどにも牛や豚が必ずどこかにいます。福島県の会社なので、「赤べこ」という郷土玩具があって、赤べこのグッズを会社で作ることもあるんですが、社内でも集めている人が結構いますね。
Part5:話し合いタイム
「動物の価値を高めるって何だろう?」
…ゼノアックは企業理念に「動物の価値を高め、つながる全ての人々の幸福に貢献する」ということを掲げています。今日は“動物の価値を高める”ことについて考えてみようと思います。
① 動物の価値を高めるって何だろう?
あやか
私の場合は、そもそも動物をそういった視点で考えたこともなかったです。だから、普段から動物と関わっている農高生たちが、どう考えているのかが気になります。
まお
牛ってみんな性格も体格も、牛乳の出る量、ごはんの食べる量も全然違うんです。でも牛乳として出荷した時に、牛という生き物自体にフォーカスされることは少ないから、その牛乳の裏側に1頭1頭の牛や農家さんの努力があるっていうこと、そこの価値をもっと広げていけたらいいのになと思っています。
りょうが
最近だと牛が地球温暖化の原因のひとつとか言われたりもしてマイナスなイメージで捉えられている場面もあるので、まだその価値が意識されていないのかなと思ったりもします。僕は普通科ですが、この農高アカデミーで牛乳やお肉の裏にどんな人たちが関わっているのかを見るようになって、意識するようになったところがあります。
② 動物の価値を高めるためには、どんな取り組みができる?
りょうが
以前スーパーとかで売っている商品でも、お肉にコードがあって、それを調べるとどこで生産されたかが全部わかる仕組み(牛トレーサビリティ制度)があると聞いたので、それがもっと消費者にもわかりやすく伝わるようになったら、生産元にも興味が湧くのかなと思います。
まお
私も学校で生まれた牛は、オスの場合は肥育農家さんに出荷するので、うちの子がどこに行ったか、いつも調べてます!(笑)
かな
LUSHの石鹸ってパッケージに作った人たちの顔の可愛いイラストのシールが貼ってあるんです。野菜だとよくスーパーでも生産者さんの顔写真が貼ってあったりするけど、それをもっとポップなイラストとかにしたら、私なら牛のシール集めたくなります。スタバの豆乳とかオーツミルクのシールをみんなスマホに入れている、あの感覚です。
じゅんや
他にもSNSで仕事風景やお肉のことを発信していくのもひとつだと思います。やっぱり農場の中のことは見えないので、一般の人にも中の様子などが伝わりやすいのかなと思います。
まお
どんな人が携わっているのか、生産者さんのこともわかるし、商品を買う時に“あ、インスタで見てる人や!”ってSNSを通じて身近に感じるというのは絶対にあると思います!
ゲストから学生へメッセージ
松本 私たちは薬という面から動物の価値を高めることに取り組んでいますが、エサ屋さんであれば栄養面から、牛舎を建てる方であれば牛舎構造から、一生懸命勉強されているかと思います。今日お話に出たトレーサビリティ制度は畜産業界にいると当たり前で、まだご存知ない方もいることに驚きました。だから情報を発信し続けることは大事で、それが動物の価値につながることでもあり、動物の価値を高めることは、消費者側からできることもあるんだなと、すごく勉強になりました。皆さんが持たれている積極性やモチベーション、アンテナの高さ、感性をこれからも大切にしていただきたいなと思います。
農高アカデミーに参加してみていかがでしたか?
りょうが(高2) 普通科
松本さんの場合は薬を生産者さんに届けるという仕事ですが、その中で牛の品質を良くしたり、病気で死んじゃったりすることがないようにしたり、畜産は生産する以外にもいろんな貢献の仕方があって、みんなで土台となる部分を支えているんだなということを知りました。
じゅんや(高3)
最近平野養豚場でアルバイトをさせてもらうようになり、現場を見た上で今日お話を聞いて、改めて裏方で生産者を支える人たちがいないとやっぱり成り立たないんだと感じました。初めて参加しましたが、とても勉強になりました。
まお(高3)
薬を届けたりしてくれる側の人たちもすごい思いを持って仕事されているのが見えて、生産の周りの仕事にもすごく夢があるなと思いました。いろんな仕事があることを、もっとみんなに知って欲しいです。ちなみにうちの学校の牛は、ゼノアックさんの鉱塩をずっと舐めてます!
あやか(高2) 普通科
畜産を周りから支えておられる方の話が聞けて、シールのデザインなど目線の違ったところからのアプローチの話ができたことも楽しかったです!
次回農高アカデミーは
3月20日(月)に対面で開催決定!
今年度最後の農高アカデミーは春休みスペシャルバージョンでお届けします!
農高アカデミーの公式LINEができました。開催スケジュールや詳細はこちらでチェック!