第8回農高アカデミーレポート! 「“イベント作り”の裏側を覗いてみよう」
「畜産を勉強中の全国の高校生がオンラインでつながり、学べる機会を」ということで始まった「つながる農高プロジェクト」の農高アカデミー。第8回目(8月23日開催)は、テレビ番組の制作ADから酪農の世界に飛び込んだ岡田慎也さんをゲストに迎え、イベント成功に向けた施策などをお話いただきました。
もくじ
▲「全国ヨーグルトサミットinいわて」実行委員の一人である岡田さんに、高校生からさまざまな質問が飛び交いました!
なかほら牧場に勤めて3年目
テレビADから畜産の世界へ
なかほら牧場は岩手県岩泉町の山間部、標高700~800メートルくらいのところで牛を24時間365日放牧し、自生している野芝などを食べさせてお乳をいただく山地酪農を行っています。山と牛と人が共存している感じです。僕はここで乳製品の製造・販売、イベント出店などを担当しています。
元々「満天☆青空レストラン」という番組の制作ADをしていて、生産者の方に連絡を取ってロケのスケジュールを組んだりしていたんです。こだわりのある生産者と触れ合う中で、僕はこれまでスーパーに並んでいる野菜や乳製品、肉製品のことしか知らなかったことを知りました。
そこで、番組で出会った方々に挨拶回りをしたいと思い、番組をやめて北から順番に原付で全国の生産者を回り始めたんです。テント泊をしていたら秋になって寒くなってきたので、どこか良い場所はないかと調べたらなかほら牧場が出てきて。お手伝いをしながら過ごすうちにもっとこの牧場の魅力を内側から発信したい、このままなかほら牧場にいたいなという思いが強くなってきて、就職させていただいたのが始まりです。
整備士~芸人~制作AD
見えてきたのは人を喜ばせたいという気持ち
高校は普通科で、就職難と言われていた頃だったので、車の整備の専門学校に進みました。卒業して一度自動車メーカーに就職するんですが、小学生の頃からずっとやりたかった芸人の道に進んでみたいという思いもあり、NSCに入ったんです。相方と漫才をしているうちに次は制作側になりたい気持ちが強くなってテレビ番組の制作に携わって…やりたいと思ったらやってみないと気が済まない性格なので、20代はふらふらしていましたね(笑)
ただ、今31歳でようやく見えてきて、関連性のないような畑を転々としてきましたが、“人を喜ばせたい”という根底の部分は変わらないんだなと感じています。
「全国ヨーグルトサミット」
実行委員としてさまざまなPR施策を展開
今年岩手で行われる「ヨーグルトサミット」は、茨城・岡山に続いて第3回目となるのですが、岩手県の中小乳業メーカーが集まって実行委員となり、初めて民間主体で運営することになりました。僕たちには生産者の顔を発信し、地域の良いところをシェアして盛り上げていきたいという思いがあったので、テーマを「酪農家とつながるヨーグルトサミット」と掲げてインスタライブなどを行いながらPRをしています。(※9/18・19に開催予定だったヨーグルトサミットは、緊急事態宣言のためオンラインで年内目処開催に変更となりました)
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学校の畜産物を販売する場所は
どこが最適?
私の高校では地元栃木のいちごを与えた「北陵いちご豚」を育てているのですが、今度初めて地域の方に販売することになりました。今販売する場所を考えていて、道の駅とか地元のスーパーがいいかなと思っているのですが、岡田さんはどう思われますか?
どちらもすごくいいなと思います。どういう人をターゲットにしたいかの違いだと思うので、スーパーだと地元の主婦の方々が来るので、地元と強くつながることに重きを置くならいいと思うし、幅広く知ってもらいたいというのであれば県外からのお客さんもいる道の駅がいいと思います。アクセス面も大事になってくるので、道の駅にしてもスーパーにしても車が停められるのはいいですね。道の駅であれば、地元の特産品とコラボもできるかもしれないし、商品を置きに来た生産者の方とつながるチャンスもあるかもしれない。オーナーさんも協力的にやってくれるんじゃないかと思います。いちごは何を使っているんですか?
とちおとめやスカイベリーなど、廃棄予定のいちごを農家さんからもらっています。
ロスを回しているんだね。それはちゃんと伝えた方がいいと思う。そうしたバックボーンがあることがわかるとお客さんも買いたくなるだろうし。
うちの高校は学校で育てた「信州黄金シャモ」の加工品を高速道路のサービスエリアで売ってもらっていました。これは県外の方へのアプローチになるので、地元の人に馴染む食材にしてもらうという部分では、地元のラーメン屋さんとコラボして限定商品を出してもらったりしています。
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うちの高校は学校の敷地内に小屋があって、月に何度か学生が育てた農産物を販売するのですが、販売日を国道沿いの看板で宣伝しているので、地元の方がいつも並んで買いに来てくださいます。
SNSが伸び悩んでいます。
使い方の工夫はありますか?
僕が入ってからなかほら牧場公式のインスタアカウントと別に「うしぶ」というアカウントを作って、スタッフの目線で牛のかわいさを発信しているのですが、撮影する時はかわいい牛の表情をアップにした写真など、僕たちにしか見ることのできない視点で撮るようにしています。あとクリスマスの時期には牛にサンタ帽をかぶせて撮ったり。こうした投稿は、イベント当日は投稿が多くてあまり見られないのですが、振り返って見た時に季節感が出て、後からいいねが押されることも多いですね。
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コロナ禍で商品の魅力を
消費者の方に伝える方法は?
すごく難しい課題ですよね。僕の得意手段はお客さんと対面して話して発信することだったのですが、今はそれができないのでSNSを利用しています。ヨーグルトサミットのプレイベントをした際は、公式アンバサダーの向井智香さん(カップヨーグルト研究会)に販売するヨーグルト商品の魅力をインスタライブを通じて伝えていただいたんです。これはスマホで気軽に見られて、動画として残るという点も良かったなと思います。学生であれば手書きのPOPを作ってみても届くかなと思います。
インスタライブは結構見ちゃうかなと思います。
普通科の高校生からすると高校に動物がいるということも新鮮なので、畜舎の前で動物を映しながら商品の紹介をしてくれるといいなと思います。
私もインスタライブはコメントもできるのでいいと思います。“農高生の1日”をライブ配信しても面白いと思いました。
なるほど、私たちは動物がいることが当たり前だったので、そういう考えが浮かびませんでした!
みんなにとって当たり前のことも別の角度から見ると新鮮で、面白いことって目の前にたくさん転がっていると思います。例えば「牛にも夏毛・冬毛があるよ」とか「角ってなんのために生えてるんだろう」とか「何のために削蹄するの?」とか、みんなの当たり前を一つひとつ取り上げていくだけで良いトピックになるんじゃないかな。
岡田慎也さんから高校生へメッセージ
僕はみんなと違ってまったく知らないところからこの世界に飛び込みました。こだわりや特色は生産者さんによって違うので、つながることで幅広く消費者の方にも知ってもらえるようにしたいというのが僕の目標でもあります。皆さんも10代、20代のうちはたくさんいろんな経験をして引き出しを作って、今後世の中にアウトプットしてもらえると嬉しいなと思います。横のつながりもどんどん増やして業界を盛り上げていってください!
<第8回農高アカデミーの様子は、「どっこいしょニッポン」の
YouTubeでもご覧いただけます!>
■農高アカデミーに参加していかがでしたか?
りょうが(高1)
自動車整備の道に進み一度就職して、お笑いの世界に飛び込んだ後に制作側へ行き、今は牧場で働いてその魅力を発信している…こんなに自分の好きなことを着実に実行されている生き方、尊敬します!
まな(高3)
販売の時に誰をターゲットに売るかを考えるという点、そしてSNSの使い方を知ることができました。畜舎からのインスタライブもやってみたいなと思います!
さらら(高3)
イベントの作り方やコロナ禍でのPR方法、SNSの使い方について、これまでどうすれば良くなるかわからなかった部分が、岡田さんのお話や他校の子たちのアドバイスを聞いて、見えてきました!
塚田先生(長野県下伊那農業高等学校)
イベントなどいろいろやってはいるのですが、なかなか自分たちの活動が広まらず心が折れそうになることもあります。でも続けることが大事なんだなと改めて思いました。
向井智香(カップヨーグルト研究会)
高校生の皆さんが、自分が疑問に思ったことをこんなに言葉にする力があるんだということに感動しました! 他校の人と会話できる経験もすごくいいと思うので、どんどん話して吸収していって欲しいなと思います。
吉田真雄(YOSHIDA LIFE)
とても楽しかったです! インスタの場合、新しい機能を積極的に取り入れると、おすすめにも乗りやすので、挑戦して使ってみると勝手に広がることもあると思います。
第3回全国ヨーグルトサミットの開催については、
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