牛と人、街にやさしい酪農を。集落営農を目指すナカシマファームの取り組み | どっこいしょニッポン

牛と人、街にやさしい酪農を。集落営農を目指すナカシマファームの取り組み

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日本有数の温泉街・お茶どころとして知られる、佐賀県嬉野市。

この地で3代に渡って酪農を営んでいるのが、有限会社ナカシマファームです。

街から近い田園地帯にあるこちらの農場では、「らくのうで、嬉しいを!」を理念に掲げ、「地域ともに生きる酪農」を目指しています。

ナカシマファーム、中島大貴さん(左)、中島千明さん(右)

▲ナカシマファーム、中島大貴さん(左)、中島千明さん(右)

そんなナカシマファームの酪農スタイルについて、3代目の中島大貴(ひろたか)さんと妹の中島千明さんに伺いました。

 

始まりは、水田酪農から。徐々に酪農の規模を拡大

ナカシマファーム

ナカシマファームが酪農を始めたのは、約40年前のこと。

大貴さんのお父様が水田酪農(お米を栽培し、その稲わらをもって牛を飼育する方法)を始め、徐々に酪農の規模を広げてきました。

現在では、飼養総頭数は約100頭。そのうち約60頭で経産牛、残りは育成を行っています。

ナカシマファーム

酪農の規模拡大とともに、牛舎も増改築を重ねてきました。

最初はつなぎ牛舎でしたが、その後フリーストールに、現在ではフリーバーンが整備されています。この増改築は大貴さんのお父様が行ってきたとのことで、その後の管理や改修は大貴さんが引き継ぎ、日々微調整を行っています。

 

牛にも人にも心地よい農場づくりを目指して

ナカシマファームの牛

大貴さんは、「“牛も人も無理のない酪農”を目指している」といいます。

そのなかで実践しているのが、「牛舎の整理整頓を徹底する」「戻し堆肥を利用した牛用ベッドを導入する」といった工夫です。

牛にも人にも無駄を省いて最適化することによって、カウコンフォートはもちろん、牛のニオイ対策・作業効率アップをも実現しています。

ナカシマファーム

「古い牛舎ではありますが、牛が快適に過ごせることを第一に考えています。古くからある牛舎ですといろいろな機械や道具類が散らばってしまうものですが、置きっぱなしにはせず、整理するようにしています。」と、大貴さん。

ナカシマファームの作業風景

また、2017年からは牛の飼料用の稲の栽培も始めています。

「牛たちは、人の食のために育っていきます。ですから、酪農家にできることは、牛に感謝して大切に育てるということです。そしてそれとともに、人においしいと感じていただけるミルクを生産することが酪農家の役割だとも考えています。ですから、牛を優先し、その中で私たち酪農家が創意工夫や日々の努力を続けていくことが大切だと思っています。」

 

周辺環境との調和を意識した牧場づくりを実践中

ナカシマファームの牛

一般論として、酪農には臭いや音などいわゆる畜産公害といわれるネガティブなイメージがついて回りがちです。街から近いところにある農場では、地域の方に配慮することもまた運営に必要不可欠です。

そこで、ナカシマファームでは、周辺地域との調和を強く意識した取り組みを実践しています。

もともと大貴さんは大学で建築を専攻し、空間デザインやまちづくりを学びました。そこで学んだことを活かし、農場周辺地域への配慮もぬかりなく手掛けたいと考えています。

「建築家は、建てる家のことだけを考えているわけではありません。周囲の環境のことも踏まえて、それにふさわしい設計をします。つまり“まちを創っていく仕事”ということなのですが、これは酪農も通じるところがあると思っています。その地域や集落などの環境に溶け込みながら、まちづくりを考えながら仕事をするんです。」

例えば、ナカシマファームでは、牛舎の周りに花壇を設置。

その花壇は、まわりの田畑で働いている近隣の方々がちょっとした休憩をできるよう、腰かけやすい高さのものにするなどといった工夫をしています。

「一般的に酪農のデメリットと言われていることでも、それが本当にデメリットなのかどうか。本当はデメリットではなくて、メリットになるんじゃないかと、日常や身の回りのことをひとつひとつ見つめています。その中から意外なアイデアが浮かんでくることもあります。」

ナカシマファームの牛

また、牛に関する臭いを抑えるための取り組みも。

「乳酸菌を牛に食べさせることで、牛の糞の匂いを低減する取り組みを行っています。」

 

酪農で地域の人にも喜んでほしいから。

ナカシマファーム

ナカシマファームは、「集落営農」「耕畜連携」といった、農村における畜産の役割を強く意識しています。

例えば、去年から始めた飼料米の栽培では、耕畜連携の補助が始まり、水稲を作っている周辺の農家さんと提携して作業を進めているとのこと。

ナカシマファーム

また、堆肥の販売を行ったり、地域のイベントに参画したりするなど、地域との積極的な交流も行っています。

 

目指すのは“地域とともに生きる牧場”。地域との関わりを大切に。

ナカシマファームの子牛

「私は人との交流の中からアイデアを生み出していくが好きなので、地域の方と関わりながらやっていく酪農スタイルが肌に合っているみたいです」と、大貴さんは言います。

そんな大貴さんのナカシマファームでは、地域との交流のひとつとして、子どもたちの牧場体験の受け入れを行っています。

「子どもたちに牛を好きになってほしいと思っています。難しいことを説明するよりも、とにかく牧場体験を楽しんでほしいです。牧場の匂いは嗅覚を刺激しますし、牛の心臓の音を聞くのは聴覚、バター作りは味覚というように、五感で体感するには牧場体験はとてもいいと思います」

 

ナカシマファームの手作りチーズ

さらに、2012年からは、地域雇用の創出を目指して手作りチーズの製造を開始。この取り組みには、地域住民、特に女性が喜ぶ仕事をつくりたいという思いが込められています。

※ナカシマファームのチーズ製造については、近日公開予定の 「牧場と人・街をつなげる、ナカシマファームの手作りチーズ」 をお読みください。

 

ナカシマファームの中島千明さん

このほか、大貴さんの妹の千明さんは、2016年に発足した「嬉野茶時プロジェクト」に参加し、ホームページの制作を担当しています。

▶嬉野茶時 https://ureshinochadoki.shop/

これは、嬉野の歴史的伝統文化である「嬉野茶」「肥前吉田焼」「温泉」を重んじ、今の時代に合わせた新しい切り口を持って次世代へ受け継ごうと始まったプロジェクトです。

「プロジェクトに参加したのは、嬉野がどこへ向かおうとしているのか、地域のことを知りたいと思ったからです。地域の役に立ちたいですし、そのなかで酪農ができることを探していきたいです。」

と、千明さんはいいます。

 

ナカシマファームの中島大貴さん

大貴さんの現在の大きな目標は、事業拡大のために牧場を移転すること。

牧場内に公園のようなスペースを設けて憩いの場にしたり、地域の雇用創出を生み出したりなど、さまざまなアイデアが広がります。

「今現在、嬉野で酪農をやっているのは私たちを含めて2軒のみですが、酪農だからこそできることを続けていきたいです」

「酪農は懐の深い職業だと思っている」という大貴さんの言葉が印象的でした。

ナカシマファーム

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