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肉の格付けごとに適した調理方法はあるのか?バーベキューで試してみた

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  • #レシピ

この記事の登場人物

鈴木 雅矩
ライター

この記事の登場人物

松浦 達也
ライター
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こんにちは、ライターの鈴木ガクです。今日は友だちとBBQをするためにキャンプ場までやってきました。BBQってとにかく楽しいですよね。

こんにちは、ライターの鈴木ガクです。今日は友だちとBBQをするためにキャンプ場までやってきました。BBQってとにかく楽しいですよね。

屋外で肉を焼いて食べるというだけで最高の気分になりませんか? そして、その肉が最高級の牛肉だったらもう何もいうことはないですよね。

ということで……本日はA5の和牛を用意しました!

見てください、この霜降り。サシがたっぷり入っておいしそうでしょう? 網の準備もできたし、さっそく焼いていきますよ!

謎の男性:ちょっと待ったーーー!!!

鈴木:え……だ、誰?

謎の男性:これ、A5の和牛じゃないですか! A5は脂が多いから網で焼いたら炎が上がって、失敗しやすい肉なんです! せっかくのお肉がもったいない!

鈴木:ちょ、ちょっと待ってください。いきなり何ですか?

謎の男性:あ、突然失礼しました、松浦達也と申します。食分野――とりわけ肉や卵といったカテゴリの編集やライター業を生業としています。ちなみに日本BBQ協会のBBQインストラクターでもあります。たまたま通りかかったら、A5ランクの牛肉を網で焼こうとしていたので、ついつい黙っていられず……。よろしければ、ちょっと肉の焼き方についてアドバイスさせてください。

松浦達也
ライター/編集者。「食べる」「つくる」「ひもとく」を標榜するフードアクティビストとして、テレビ、ラジオなどで食のトレンドやニュース解説を行うほか、『dancyu』などの料理・グルメ誌から一般誌、ニュースサイトまで、チャネル問わず、幅広く執筆、編集に携わる。著書『家で肉食を極める! 肉バカ秘蔵レシピ 大人の肉ドリル』『新しい卵ドリル』(マガジンハウス)ほか、審査員もつとめる『東京最高のレストラン』(共著)ほか。連載も『肉道場入門』(夕刊フジ)など多数。

ステーキには、柔らかく脂の適度なA3がおすすめ

鈴木:(う~ん、悪い人ではなさそうだし、話だけでも聞いてみるか……)

じゃあ、「せっかくのお肉がもったいない」って、どうしたらいいんですか?

松浦:そうですね、そもそもA5のステーキ肉は、サシが多くて屋外で炭を使って網焼きにするのは難しいんです。後ほどおいしい食べ方をお教えしますが、対してA3くらいの肉だと脂がほどよく、誰が焼いてもおいしいステーキになりやすい。ものは試しということで、まずこのA3から食べてみませんか?

鈴木:(この肉はどこから……? でも……ちょっと食べてみたい)じゃあ、ものは試しということで……。

松浦:では焼いていきますね! まず、BBQでステーキを焼く場合は厚い肉をオススメしています。屋外では火力が不安定なので、薄い肉を焼き目がつくまで焼こうとすると火が通り過ぎてしまうんですよ。

鈴木:厚いほうが肉食べてるって感じがしますよね。具体的にどれくらいの厚さがいいんですか?

松浦:そうですね。ステーキならば、厚さ3cm程度はほしいですね。高級なイメージのあるサーロインにこだわらず、ランプ、イチボ、ウチモモなど、塊で焼くのに適した肉から求めやすいものをセレクトするとよいでしょう。一方、脂に偏りがあるカルビ(バラ肉)や、肉質が硬いスネ、ソトモモは、焼くのが難しい肉ですね。

松浦:適度な塊肉を用意したら、下ごしらえをしていきます。赤身部分をうまく焼けるよう専念したいので、分厚い脂身は外してしまいましょう。

鈴木:うーん、この時点でもう期待しかない。

松浦:次はお肉の両面に塩を振ります。通常、肉に味を入れるときには重量の0.9~1%くらいが目安になりますが、BBQでは焼くと脂とともに塩が落ちるので、ソースなしで食べるなら、少し多めの加減でちょうどいい塩梅になるんです。

下ごしらえが済んだら、いよいよ焼きです。火力の強い場所を選んで網に乗せたら、いじらずに2分程度待ちましょう!

鈴木:おお! これはおいしそうな焼き目!

松浦:これくらいまで焼き目がついたら、返して裏面も同じように焼きます。肉を焼くときには表面に焼き目をつけるよう心がけてください。特に屋外では頻繁にひっくり返すと、適度な焼き目がつく前に内部に火が入りすぎてしまいやすい。焼き目の香ばしさは味の決め手とも言うべき大切な要素なんです。

両面に焼き目がついたら、肉をグリル真ん中の中火ゾーンに移しましょう。

鈴木:あれ? いつの間にか炭を移動してますね。右に炭が高く積まれていて、中央は少なめ、左にはほとんどない。

松浦:これは強火、中火、弱火のゾーンを作っているんです。炭は量次第で火力を調節できます。最初に強火ゾーンで表面に焼き目をつけ、厚みのある肉の内側に熱を加えるため中火ゾーンに移しています。厚さが足りない肉や、常温に戻した肉なら強火ゾーンで一気に焼き上げる手もあります。

鈴木:へぇー、勉強になります。

松浦:ここで、燻製に使うウッドチップを炭の上に撒いておきましょう。そうすると、肉に薫香をつけることができるんですよ。

松浦:ウッドチップを撒いたら蓋をして肉のまわりに煙を循環させ、1分ほど待ちます。蓋がない場合は金属製のボウルなどでも大丈夫。蓋は燻煙を行き渡らせるだけでなく、屋外のBBQでは風よけとして、熱をコントロールすることもできます。あとは好みの焼き加減まで火を通しましょう。

松浦:肉の食感が楽しめるように分厚くカットして……。さあ、召し上がれ!

鈴木:中はミディアム、おいしそうな焼き目に香ばしいかおり。これは絶対おいしいやつ! それでは、いただきます!

鈴木:んま~い! 柔らかい肉質と、口に広がる肉の旨み。ほのかなスモークの香りもたまらない。これは最高だ……!

あ、そういえば、僕が持ってきたA5のお肉もまだあるんだった。これもおいしく焼けないですかね?

松浦:もちろん大丈夫ですよ! では、早速下ごしらえをしていきましょう。

A5の肉は鉄板で焼き、余った脂肪でもう一品

松浦:A5の肉も同様に脂身(カブリ)を切り分けます。脂身とスジは、別の料理に使えるので捨てずにとっておきましょう。

その他、下準備はA3と同様です。ただ、A5は特にサシが多いので、炭火と網で焼くと落ちた脂が炎上して焼き加減のコントロールが難しくなったり、雑味がついたりしかねません。A5の肉は鉄板がおすすめですね

鈴木:鉄板で焼いてみると、脂が多いのがよくわかりますね。

松浦:こちらも強火ゾーンの上あたりで表面にしっかり焼き目がつくまでじっくりと焼き、大量に出る脂を利用して、表面を揚げ焼きにしていきます。最後に切り分ければ完成です!

鈴木:あれ? 横にもう一度切るんですね。

松浦:この肉はサシが多かったので、くどくなりすぎないように厚みを生かしつつ少し小さめにカットしました。薬味にはすりおろした山わさびも合うと思います。

鈴木:こちらもおいしそう! では、いただきます!

鈴木:ジューシィー! 噛めば噛むほど脂が溢れ出てきますね。さすがA5。これは最高においしい!

松浦:さて、ここでもう1品作ってみましょうか。さきほど切り分けたカブリを使ったガーリックライスです。

鈴木:ガーリックライス!

松浦:切り分けたお肉をこま切れにして、みじん切りのニンニクも用意。お肉を鉄板の上で焼き、脂から出た油でニンニクを炒め、香りを移します。

松浦:肉に火が通ってきたらご飯を投入。パラパラになるまでほぐして、軽く醤油で味を整えたら完成です。青ネギを散らすのもアリですね。

鈴木:ニンニクの風味が食欲をそそりますね! いやあ、松浦さんのおかげで最高のBBQになりましたよ!

松浦:ふふふ、実はまだとっておきのメニューがあるんです。ちょっとこの肉も食べていただけませんか?

鈴木:まだあるんですか! もう満腹に近い状態ですけど、き、気になる……。

硬い肉を柔らかく調理! 秘訣は筋切りと油にあり

松浦:業務系の食料量販店で売っている格安のステーキ肉ですね。これもちょっと手を加えるだけで、抜群においしいステーキに変身するんですよ!

鈴木:こんなに脂の少ない肉が? おいしく肉を焼いてもらって松浦さんのことを信用しはじめてきてますけど、ホントですか……?

松浦:はい、まずは筋切り器という調理器具でお肉全体に小さな穴を開けていきます。なければフォークでもいいですし、包丁の先端を肉に突き立てて肉の繊維を断ち切ってもいいと思います。

鈴木:こうすることで肉が柔らかくなるんですね。

松浦:筋切りした肉をビニール袋に入れ、薄切りニンニクと浸る程度のオリーブオイルをてよく揉み込んでおきます。

鈴木:ああ、もうこれだけでおいしそう……。スパイスや香草を加えてもよさそうな感じがします。

松浦:タイムやローズマリーなんてよさそうですねえ。ちなみに実際に下ごしらえをする際には、家ですませましょう。BBQ当日の朝に家で仕込んで、移動中にクーラーバッグのなかでマリネする。現地に到着する頃には下ごしらえが完了しています。

今度は少し本格的にスモークをかけましょうか。この肉は風味がやや淡白だったので、味や香りに少しお化粧をしていきます。じっくり香りを乗せるならウッドチップをアルミホイルで包んで炭に乗せると、よりいい薫香がつきますね。

松浦:先ほどと同様、塩をしたら両面を焼いて蓋をします。好みの焼き加減でどうぞ。

松浦:この肉は水分が多かったので表面に焼き目がつきにくい。がっちり焼き目をつけると内部がミディアムウェルダンくらいになりますが、こういうしっかり熱の通ったおいしさもあるんです。切り方も斜めに包丁を入れ、5~7mm程度の厚さにカットする。切り方を変えるだけでも、味わいは変わります。

鈴木:すごい! 柔らかくてジューシー! これがA1相当とは思えないですね。A3……いやA4くらいのおいしさと言ってもいいくらい。

松浦:おいしいでしょう。でも、先ほどから「A5」「A3」「A1」というグレードを気にされていますが、等級が高いからといっておいしいとは限りません。肉の等級はおいしさの指標ではないんです。そのあたりを詳しくご説明しましょう。

鈴木:え? そうなんですか?

そもそも等級って何? 肉を選ぶときに知っておきたいこと

鈴木:一番おいしい肉がA5なんだと思っていました。じゃあ、等級ってどうやって決めているんですか?

松浦:一言で言えば、食肉業者と畜産農家が全国どこでも共通の規格で取引をするためにつくられた指標です。肉の等級は公益社団法人日本食肉格付協会が定めた「牛枝肉取引規格」によって格付けされています。

鈴木:なるほど。その格付けはどんな基準で行っているんですか?

松浦:A~Cのアルファベットは、枝肉(牛をと畜し、頭足部と皮・内臓などを除いたもの)から「どれくらい可食部(の肉)が取れるか」を表す指標で、Aが最も取れる肉が多い(取れる肉の比率が高い)ものです。

数字は「肉質」を表します。こちらは「5」から「1」まであります。「肉質」は、

・脂肪交雑(赤身にどれだけサシが入っているか)

・肉の色沢

・肉の締まり及びきめ

・脂肪の色沢と質

の4項目について判定・格付されます。以下の図のように脂肪交雑を判断する指標があり、これをもとに目視で評価されます。

B.M.S.(ビーフ・マーブリング・スタンダード)公益社団法人日本食肉格付協会「枝肉取引規格の概要」より。No.4と5は3等級、No.6は4等級に当たる)

鈴木:比べてみると脂のサシ具合が違いますね。

松浦:念押ししておきたいのは、等級はあくまで肉を扱うプロ同士の取引指標であって、「おいしさを評価するものさしではない」ということ。歩留等級が「C」、肉質等級が「1」でもおいしい肉はあります。

血統のほか、飼料は穀物か牧草か、肥育期間の長さはどれくらいか、どんな環境で育ち、と畜後にどんな保存をされたのか。肉の味を決定する要素は無数にあり、人の味の好みも無限にある。一概にA5が最もおいしいとは言えないんですよ。

鈴木:なるほど。それでは、どのようにお肉を選べばいいんですか?

松浦:求める味や調理法に合わせて選びましょう。ざっくり言うと、A5の肉は柔らかく脂が多い。部位によってはステーキにするとくどくなってしまいます。和牛のA5なら薄切りにしてさっと火を通す、すき焼きやしゃぶしゃぶのような食べ方がおすすめです。アウトドアで和牛を焼くなら鉄板を使っての「焼きすき」「焼きしゃぶ」のような食べ方もいいと思います。

逆に、「今日はお肉をがっつり食べたい」という気分のとき、僕はA5のサーロインは選びません。

鈴木:そうなんですね。他には何か選ぶ基準があるんでしょうか。

松浦:参考程度ですが、お肉の色も見ますね。深い小豆色をした肉は味わいが濃厚な傾向があり、逆に色が薄いものは柔らかくあっさりした肉が多いですね。赤身部分が妙にくすんだ色の肉や、脂身不自然なほど白い肉は避けています。

また、月齢が長ければ肉質は硬く、味が濃くなる。逆に短いと肉質は柔らかく、味も淡くなる傾向があります。国産牛の月齢は個体識別番号を独立行政法人家畜改良センターのWebサイトに入力して調べることができますよ。

鈴木:へえ~、勉強になります! 等級や基準を知っていると、お肉も選びやすくなりますね。ところで、この等級って鶏や豚にも当てはまるんですか?

松浦:豚も公益社団法人日本食肉格付協会が「豚枝肉取引規格」に基づき格付していますが、消費者が判断するための基準となると豚の銘柄や牧場、小売店などで判断するのが現実的だと思います。

鳥には標準となる等級もありません。「地鶏」については日本農林規格(JAS)で血統や飼育期間などが細かく定められていますが、その他の銘柄鶏やブロイラーについては明確な基準はないんです。いずれにしても等級より、購入する店や銘柄、お肉の色やキメなどをしっかり見て購入するとよいと思います。牛、豚、鶏問わず一番大切なのは、信頼できる精肉店を知っておくことですね

鈴木:なるほど! 今日は目からウロコの連続でした。どの等級のお肉もおいしかったです!

松浦:等級だけを頼りにするのではなく、好みやそのとき食べたいメニューに合った肉を選べば、よりおいしく食べられるはずです。お肉選びの参考にしてくださいね!

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