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“家族協定”をきっかけに、 働きやすい環境づくりを実践

この記事の登場人物

今 耕一
有限会社 那須高原今牧場
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栃木県は北海道に次いで酪農が盛んな地。ご紹介する「那須高原 今牧場」は、この地で70年近く牧場を営むオピニオンリーダー的存在です。

1950年に先代社長が乳牛1頭からスタートして以来、着実に規模を拡大し、全国でも有数の牧場として今に至っています。

日本一にもなった優秀なホルスタインを飼育

現在の今耕一社長は2代目。経営を受け継いでから50年、地道に酪農を続けてきたといいます。

「私たち人間も牛も生き物、お互いに支えあっていかないと。牧場の人間は牛に育ててもらっているわけだし、大切な牛の一生を預かっている者として、牛たちが毎日快適に過ごせるようにすることが私たちの義務だと思っています」

酪農への想いを伺うと、お孫さんを抱きながら笑顔でさらりと答えてくれました。

現在の飼育頭数は、乳牛320頭とチーズ作りのためのヤギ50頭。大規模な牧場ですが、いちばんの特徴は先進的な技術や設備を活かして乳質、乳量ともに優秀なホルスタインを育て、安定した酪農経営を長年行っていること。

そのすばらしさは、天皇杯をはじめ全国の畜産大会で数々の賞を受賞していることが物語っています。ちなみに天皇陛下や皇太子ご夫妻も視察にこられたそうです。

夫婦であってもケジメを!と家族経営協定を締結

こんな今牧場は、代々家族経営。先代も2代目もご夫婦が中心になって切り盛りしてきました。ただ、家族で仕事をしていくことは、気心が知れていてやりやすい反面、ケジメがつけにくいということもあります。

1998年のこと。今さんは家族の協力体制を見つめ直すために「家族経営協定」なるものを締結します。これは、家族経営の農家の経営力アップや働きやすい環境づくりのために国が進めている取り組み。締結する内容は家族によってそれぞれ違います。

「うちの場合は夫婦間の協定ですね。それまでもいろんな取り決めをしてやっていましたが、仕事とプラベートをもっときちんと分けようと、決め事を書面に残すことにしたんです」

内容は、お子さんが一緒に働き始めたことや時代の変化などに合わせて、これまで4回改訂しているそうです。

必ず週1回休み、月1回歓談。従業員が気持ちよく働ける職場に

家族経営協定をきっかけに、今牧場は従業員が働きやすい環境づくりにもいち早く乗り出します。

動物が相手の酪農は、1日の就労時間がどうしても長くなります。

今牧場では5時には朝の搾乳を始め、夕方の搾乳から畜舎の掃除などをして仕事を終えるのは夜8時。朝食と昼食タイム、昼に休憩時間はとれるものの、職場にいる時間はやはり長いのです。

「うちには今、家族5人に社員3人、パート1人、タイからの研修生が1人いて、酪農と加工部門に分かれて仕事をしています。みんな本当によくがんばってくれていますが、それでもやっぱり朝早くから夜まで働くのは大変。

だからこそ、メリハリをつけて働けるように週1回は必ず休日をとってもらいます。連休は定期的にとはいきませんが、そのときの状況をみながら臨機応変にとってもらえるようにしています。この辺りは家族経営のいいところですね」

今牧場は労働保険と雇用保険にも加入しています。そしてもちろん、従業員の皆さんとの関係づくりも忘れません。毎朝必ず、部門ごとにミーティングを兼ねた顔合わせをしてから仕事にかかります。

「仕事をする時間帯が担当によって違うので、全員で食事、ということはなかなかできませんが、1日1回はみんなで顔を合わせるのはとても大事なこと。コーヒーを飲みながら、あれこれ話します」

全体ミーティングは月1回。牧場の敷地内にある社長宅に全員集合して、パンやお菓子を食べたりしながら、打ち合せというより楽しく歓談。かしこまって会議をするより、いろいろな意見やおもしろい提案が飛び出すそうです。

「酪農は好きじゃないとできない仕事。みんな酪農がしたくてここにいるわけですから、好きな仕事を楽しく気持ちよくできるようにしてあげるのが、経営者のやるべき仕事だと考えています」

有限会社 那須高原今牧場

http://ima-farm.com/ 

  • 営業時間:要問合せ
  • TEL:0287-64-0777
  • 定休日:要問合せ
  • アクセス:〒325-0304 栃木県那須郡那須町大字高久甲5899―7