「ギャルド・エ・ジュレ」叙勲!髙橋ゆかりさんが作る絶品チーズ
この記事の登場人物
髙橋夫妻那須高原 今牧場
栃木県那須町にある「那須高原 今牧場」。このチーズ工房には、日本では数少ないという、フランスの格式あるチーズ協会の称号を持つ女性がいます。
もくじ
「親が搾る牛乳に付加価値を」チーズ作りは娘の熱い想いから
その人は髙橋ゆかりさん。今牧場は彼女の父親が経営する国内でも大規模な牧場。
チーズ作りのきっかけは「親を助けたい!」という一途な想いでした。
「牛乳の消費が減ってきたという時代の変化を感じて、このままではマズい、親が大切に搾ったミルクに付加価値を付けて助けたいと強く思ったようです。」と、ゆかりさんの気持ちを代弁したのはご主人の髙橋雄幸さん。
今牧場のチーズ工房はご夫婦で運営しているのです。
取材に伺ったときは、ゆかりさんが不在だったため、工房で作業したり店で接客したりと忙しい中、雄幸さんがチーズ作りに寄せるご夫婦の想いを語ってくれました。
北海道、そして海外でもチーズ修行を重ねる
ゆかりさんは栃木県の農業大学校を卒業後、北海道にある日本最大級の工房でチーズ作りを修行。その後さらに、イタリアで有名なチーズの一つ「タレッジォ」の協会会長の下でも半年間修行を重ねます。
新潟出身の雄幸さんは、自治体職員として1年間ドイツで農業研修をした後、村の特産にすべくチーズ作りを担当。そして、日本でも学ぼうと門を叩いた北海道のチーズ工房で二人は出会ったのだそう。
この出会いが、ゆかりさんの想いを強く後押ししたことは間違いありません。
念願の工房オープン。こだわりは「ミルクを運ばない」チーズ作り!?
チーズ作りが本格化したのは、国が進める「6次化」の栃木県第1号に今牧場のチーズが認定されたこと。そして2012年、念願の「今牧場チーズ工房」がオープンします。
チーズを作るうえで大切にしていることを伺うと――
「やっぱり良いミルクを使うことですね。ミルクはちょっと揺れたり温度が変化したりするだけで質が変わってしまいます。だから、良いチーズを作るなら「ミルクを運ばない」こと。ダメージの少ない良いミルクを使うことが、とても重要なんです。
うちは牧場ですから、ミルクを輸送しなくてすむ。搾りたての牛やヤギのミルクで、すぐチーズを作れる。牧場だからこそできるチーズ作りを大切にしています」。
通をうならせるチーズは国際線ファーストクラスにも登場!
現在、ご夫婦と女性スタッフで作るチーズは6種類。本場の名付け方にならって「朝日岳」「みのり」などと、どれも地元那須にちなんだ名前を付けています。
その中から2つのチーズを試食させてもらいました。
まず、ヤギのミルクで作る「茶臼岳」をいただくと、口の中で一瞬にして溶けてしまいました!コクがあるのに臭みがない品のいい風味。茶臼岳は、なんと工房オープンの翌年からJAL国際線ファーストクラスの機内食に採用されているのだそうです。
牛乳製の「りんどう」も超が付く美味!ミルクの甘味を感じさせる柔らかな中身と、しっかりした皮とのバランスが何とも絶妙なのです。ジャパン・チーズ・アワード’15で、ウォッシュタイプの最上位に評価されたということも納得です。
余談ですが、「おいしい!」を連発していたチーズ大好きカメラマンは6種類すべて買って帰りました。
日本に10人もいない「ギャルド・エ・ジュレ」を叙勲!
高く評価されている今牧場のチーズに、今年また一つすばらしい栄誉が加わりました。
ゆかりさんが「ギャルド・エ・ジュレ」という称号を授与されたのです。
これは、フランスのチーズ業者団体「ギルド・アンテルナショナル・デ・フロマジェ・エ・コンフレリー・ド・サントュギュゾン協会」が授与する権威ある称号の一つ。
高品質のチーズを作っていることが大前提ですが、保管や販売など専門職としてのさまざまな条件をクリアしなければ認定されません。
そのため日本には、これまで4人しかいなかったそうです。
「ゆかりは去年またイタリアに行って、製造法や熟成法を習ってきたんです。りんどうは、その最新技術を取り入れて作ったもの。こうした努力が認められたのでしょう。」
奥さんの快挙を嬉しそうに話す雄幸さん。彼もまた、テロワール=その土地特有の風土を活かした、那須にしかできないチーズ作りに地元の同業者と取り組むなど精力的に動いています。
高い意識と広い視野でチーズ作りに向き合っている髙橋夫婦。ただ原点は変わらないといいます。
「両親が作るミルクで最高のチーズを作ること」
そんな二人を両親は温かく見守っています。
取材後、2016年10月にご主人の雄幸さんも「ギャルド・エ・ジュレ」を叙勲されました。
那須高原今牧場 チーズ工房
- 営業時間:要問合せ
- TEL:0287-74-2580
- 定休日:要問合せ
- アクセス:〒325-0304 栃木県那須郡那須町大字高久甲5899―7