「OPU-IVF」で伝える、いのちの大切さ。TAROファームケアクリニック
この記事の登場人物
佐藤 太郎㈱TAROファームケアクリニック
新潟県三条市のTAROファームケアクリニック。産業動物の診療と牛の繁殖改善を主業務としています。代表の佐藤太郎さん、愛称は「太郎先生」。
新潟県の研究機関で繁殖学の研究者として勤務したのち、産業動物の専門の動物病院を開業しました。
太郎先生がもっとも力を入れて取り組んでいるのが、自身の専門でもある繁殖分野。
「OPU-IVF」という画期的な技術を用いて、繁殖改善に取り組んでいます。
もくじ
OPU-IVFとは
「OPU(生体内卵子吸引)-IVF(体外受精)」とは、牛の卵巣に針を刺入してから卵子を採取し、体外受精させ受精卵を作る方法のこと。
生後1年程度の子牛や、妊娠している牛からも採取ができること、採胚困難な牛(繁殖障害牛)からも胚生産が可能になるといったメリットがあります。
酪農家にとって、牛が順調に妊娠することはもっとも重要なこと。
なかなか妊娠に結びつかない牛の繁殖改善を行う上でも、有効性の高い技術です。
▲超音波の機械を牛の膣に入れ、エコー画像を見ながら卵巣に針を出し入れすることで卵子を吸い出し、試験管内にストック
▲OPU-IVFの機器。超音波診断装置を用いて、生きている牛の卵巣に針を挿入し、卵子を採取する
▲採取した卵子は培養後、媒精(受精)し母牛に戻される
獣医師だからこそ伝えられる。いのちの大切さ
太郎先生は、子どもたちを対象とした検卵実習をしています。
「学校に出向き、教室のモニターに検卵の様子を写します。子どもたちに『いのちの授業』と題した公開授業を行ないました。」
きっかけは、診療に訪れた先の農家さん。採卵で農家さんを訪れる際に、一連の処理を現地の農家さんの部屋を借りて行っていた太郎先生。その様子を見た、ある農家さんが「この様子をぜひ子どもたちに見せてくれないか」と提案してきたのだといいます。
「当初は、見せても面白いのかな?なんて思っていましたが、みんな本当に真剣に聞いてくれて。今まさに学校で学んでいる理科の実験と結びつけて、すごく良い質問をくれたりするんですよね」
▲取り出した卵子を培養し、体外受精させる
熱心に聞いてくれる子どもたちに対し、太郎先生も全力で応えていきます。
太郎先生が獣医師・科学者として手がけている「繁殖生理」は、生命の誕生に関与する非常に重要な仕事です。それだけに、子どもたちに「いのち」について考えてもらうきっかけにしてほしいと考えているといいます。
もっとも伝えたいのは、太郎先生が日々の業務で感じる「お母さんのカラダの偉大さ」でした。
「僕たち獣医師がやっているのは、生命をあつかう仕事です。今の時代は、科学が非常に進歩して宇宙にも行けたりする時代。なんでもできると思えてしまう。でも、受精卵についていえば、人間が生命に関われるのは受精からわずか1週間なんですよ。母体に入らないと、それ以上育たないんです。命の誕生にはお母さんが絶対に必要で、お母さんは命を育んでくれているんだ、ということを知ってほしい」
畜産的な視点からは「いのちをいただく」という意味で生命の大切さを教える機会は多い、と太郎先生。しかし、繁殖改善を手がけるひとりの科学者だからこそ伝えるべきこともあると話します。
「子どもたちに考えてもらいたいのは、『どんな子も、ちゃんとお母さんのカラダの中で育まれて生まれてきたんだよ』ということ。このことをきっかけにして、自分なりにしっかり考えてみてね、ということは今後も伝えていきたいですね」
今後の太郎先生の活動はまだまだ続きます。
なお、太郎先生の活動は、新潟県内の創業・第二創業を対象に事業プランを募集し、独創性などを審査・表彰する「にいがた創業アワード2018(主催・株式会社第四銀行)」で優秀賞・先進技術活用モデルを受賞。効率的に付加価値が高い乳用・肉用牛を産出できる先進的な取り組み事例として、畜産業界外にも広く紹介されています。
㈱TAROファームケアクリニック
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