技術の追求も、ビジネスの広がりも、無限大。
この記事の登場人物
西川 崇徳農業生産法人株式会社 西川農場
美唄市の農業生産法人株式会社西川農場は「アスパラひつじ」や「北海地鶏」を生産する他、農場の一角に「カフェ ストウブ」も展開しています。さらに、ここ最近は市内の若手農業者とも積極的にコラボレーションしているとか。そのココロを紐解きます。
もくじ
美唄や空知エリアのおいしさを広め、マチに人を呼びたくて。
インタビューに応じてくれたのは農業生産法人株式会社西川農場の西川崇徳さん。「カフェ ストウブ」を立ち上げたのは3年ほど前のことです。
「畜産を始めた当初から、ウチのおいしさを広めることで美唄に来てくれる人を増やしたいと考えていました。一方でアスパラひつじや北海地鶏だけでなく、ここ最近盛り上がっている空知のワインやおいしい農産物を味わってもらい、地域への関心を少しでも高めるために、飲食店を開こうと思っていたんです」
西川さんは東京の飲食店を巡り、自家製のソーセージやベーコン、パン、そして自然派ワインを楽しめる理想的なカフェを見つけました。さっそくオーナーとお話ししたところ、思ってもいない幸運が舞い降りてきたのです。
「そのお店の二番手が、札幌出身の奥様の出産にあたり、北海道にIターンするというんです。さっそく連絡先を教えてもらい、店舗のコンセプトを伝えて美唄で働くように口説き落としました(笑)」
店舗を任されたのは石井賢さん。折しも自分の店を持ちたいと夢見ていたところ、願ってもいない話が飛び込んできたと笑います。
「西川さんの思いに共感しましたし、何と言ってもずっとチャレンジしたかった石窯まで用意してくれるということで一も二もなく引き受けました。都会とは違ってハード系のパンは受け入れられるか心配もありましたが、平日は地元のお客様、土日ともなれば遠方から足を運んでくださる方もいてうれしい限りです」と石井さん。奥様とともに素敵な笑顔を見せてくれました。
市内のにんにく農家や革職人とコラボレーション。
ここ最近、西川さんのもとにはポツリポツリと相談事が舞い込むようになったとか。例えば、数カ月前には美唄でにんにくの栽培を始めた若手農家が商品化のアドバイスをあおぎにきました。
「美唄に住んでいても、地元産の食材を目にしたり、味わったりする機会は残念ながら多いとはいえません。このマチでにんにくを作っていることを知ってもらうチャンスとばかりに、カフェでガーリックトーストを販売しました。彼からはお返しににんにくの皮をもらい、ウチの北海地鶏のエサとして与えているところです」
一方、西川さんはアスパラひつじの革を使って商品を作ろうと考えていたところ、タイミング良く革職人が移住してきたという情報をキャッチ。さっそく会いに行くと、地元の革で製品を手がけるのは面白いと意気投合しました。
「まずは自分で革をなめしてみようと思いましたが、さすがに時間がかかりすぎると断念しました。そこで、市内の就労支援団体に協力をあおぎ、利用者の方たちになめしの作業をお任せすることにしたんです。まだ商品は試作段階ですが、小さな小さな農福連携ができたことにも手応えがあります」
西川さんの口調は、どちらかといえば淡々としたトーン。けれど、胸の内には熱い思いを秘め、地元のためにアクションを起こしています。その原動力はどこから湧いてくるのでしょう?
「う~ん…このまま人口減少が続けば地元がなくなってしまうのではないかという危機感もあります。ただ、単純に畜産は試せることがたくさんあって面白いというのも本音。農場も生産性や産子率(1頭当たりの子羊の出産数)はまだまだ高められると思います。この業界は技術の向上やビジネスの広がり、雇用創出に無限大の可能性を見い出せるから、頑張ろうという力が湧き上がってくるんです」
そう語り、美唄の空を見つめた西川さん。その瞳の奥には、これからもマチのために畜産を軸にした取り組みを進めていくという決意が揺れていました。
この記事を書いた人有限会社シーズ
北海道札幌市で、取材編集やデザインワークに取り組むプロダクション。
インタビューやルポから、各種誌面・webサイトの企画制作などのオシゴトをアレコレと。近々、酒場にまつわる下世話なハナシをまとめた『サカバナ』という本を出版する予定。お買い求めいただいた方から「なにこれ?」と評されること、必至であります。
有限会社シーズ http://www.cs-sapporo.com/