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70年続く丹波市で唯一の養豚農家が守り抜きたいものとは

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  • #六次化

この記事の登場人物

板野夫婦
板野養豚(直売所)
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雑誌やテレビでも既に取り上げられている「板野さんちのこだわり焼豚」を知っていますか?

養豚場の近くに8年前に構えた直売店は、兵庫県・丹波市の山里という隠れ家的な立地ながら、わざわざ遠方から買いに来るファンもいる知る人ぞ知る名店だ。

丹波市で唯一の養豚場。無添加の自家製の焼豚で起死回生 

丹波市は、兵庫県の中央東部の京都府と隣接する自然豊かなエリア。

加古川の源流と竹田川が流れ、豊かな水と肥沃な土地に恵まれ、丹波黒大豆、丹波米、丹波栗など、全国に誇る農産物も栽培されている。

この地でご夫婦で切り盛りしているという板野養豚は、父親の代から約70年間続く丹波市でただ一つの養豚場だ。

この板野養豚で大切に育てられた安心安全でとびきり新鮮な豚肉は、「たんば産ポーク」の名で知られ、クセや臭みがないので肉が苦手な人も食べやすく、ほのかに甘い優しい味わいが特徴。

舌の肥えたプロの料理人やバイヤー、無添加の良質素材を求めるお母さんらを中心にもてはやされるという。

ここでしか作られていない「たんば産ポーク」の美味しさを伝えたいと8年前に自宅に併設して直売所を構え、その場でカットしたばかりのとびきり新鮮な生肉で販売している。

また、ここの名物といえば、自家製ダレで作る無添加の手作りの焼豚だろう。

自然に恵まれたのどかな山里を車で北上し、開けた窓から清々しい空気を吸い込めば、

その美味しさに期待が高まるというもの!

丹波市で数十戸あった養豚場が、時代の波に逆らえずたった一戸に 

そんな板野牧場にも苦しい時代もあった。

板野さんが当時を振り返りながら、ぽつぽつと語る。

「以前は丹波市内に、数十戸もの養豚場がありましたが、日本の農産物は産業としてはとても低い位置づけで、今まで通りのやり方では経営していくことが難しくなり、同業者はどんどん廃業していきました。私ももう辞めようと思った時期もありましたよ。」

この地区での養豚場は板野牧場だけになったが、この状況を逆手にとり、ここでしか食べられない豚肉の「たんば産ポーク」を作り続けようと発想を転換。心機一転、製造・販売まで取り組むことに。

お世話になっているの食肉屠場の社長に相談したところ、個人用に捌いてくれることになり、高砂の精肉店や焼肉店から焼豚のつくり方を教わった。

そして誕生したのが、「板野さんちのこだわり焼豚」だ。

「予算もなかったので、この冷蔵庫・冷凍庫は中古で買いました。」

と、板野さんは、後ろに控える大きな業務用冷蔵庫を指して笑う。

ピンチの中から生まれた焼豚。生産・製造・販売まで行なう6次化で復活 

農家が製造・販売をする場合、食品の製造・加工に必要な食品衛生管理者の資格が必要だ。

しかしながら、家族経営の小さな農家にとって、こいつがかなりやっかい。講習料が高いうえ、約30日の講習を受けなければならないからだ。板野さんの場合、幸いにも知り合いが管理者を請け負ってくれ、のちに息子さんが資格を取得して条件をクリアした。

そして焼豚の美味しさが、口コミで評判になり、兵庫県のオーガニックや無添加の農産物・加工品を販売する「はっぱや神戸」、神戸市内の百貨店、有名なホテルやレストランなどでも使われ、雑誌やテレビでも紹介されるようになった。

「小売をするようになり、価格が変動しないので、収入が安定してきました。市場価格より高く売れるのもいいですね。」

もうダメだと思ったとき、丸裸になった気持ちで作り始めたという焼豚。衰退をたどっていた農業界の波を乗り切り、生き残るきっかけとなった。

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板野養豚(直売所)

http://www.yakibuta-itano.com 

  • 営業時間:13時ごろ~17時ごろ
  • TEL: 0795-76-0651
  • 定休日:木曜(木曜以外も不在の場合があるので、電話で確認のうえ来店を)
  • アクセス:中国自動車道「滝野社」IC 車で40分

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