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舞い踊るほどおいしいから、         「舞米豚」!旨さのワケは地元のお米と町ぐるみの愛情

  • #六次化

この記事の登場人物

阿部 秀顕
山形ピッグファーム
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私たち日本人には、豚肉はおなじみの食材。国産豚に輸入豚、各地の銘柄豚など数多く出回っている。

そんな中に、これぞ地域産・地域発といえる豚が、2009年登場した。

山形県山辺町が“町ぐるみでデビュー”させた、その名も『舞米豚』(まいまいとん)。ユニークな誕生の経緯やおいしさの秘密を探ってみた。

「米、豚に食わせだら?」がきっかけ

山辺町郊外の丘陵地に広がる山形ピッグファーム松山農場

山形県のほぼ中央にある山辺町。その自然豊かな山あいが舞米豚の出身地だ。育てているのは創業50年を超える養豚農家「山形ピッグファーム」。なぜ、町ぐるみで新たな豚を誕生させることになったのか。仕掛人の1人、阿部秀顕社長に訪ねてみると――――

山形ピッグファーム代表取締役・阿部秀顕さん

「きっかけは、米農家の減反対策なんです。食用米を作らなくなった田んぼをどうするかとなり、「山辺には豚がなんぼでもいるから、飼料用米を作れば使ってくれるだろ」とウチに話がきたんです(笑)。最初はできるかどうか、みんな半信半疑。でも、以前から地域のつながりは強かったので、協力して農業を元気にしようと動き始めました」。

米農家と養豚農家だけでなく、山辺町やJAなども一致団結。山辺町水田農業推進協議会(現・農業再生協議会)に飼料用米推進部会を立ち上げ、地元で作った飼料米を食べて育った地元の豚を、山辺町の新たなブランドにする、というプロジェクトがスタートした。

ネーミングは町の人を巻き込んで決定

舞米豚デビュー当時のポスター

プロジェクトは、とんとん拍子に進んだようだ。スタート3年目で収穫量の高い飼料用米「ふくひびき」に行き着き、翌年には阿部社長いわく「デビューさせる」=初出荷できるまでになった。
重要な名前は、町の人も巻き込んで決めようと公募。そして2008年12月、200件近い応募の中から「おいしいお米を食べて、あまりのおいしさに舞い踊る豚」と、山辺町の舞踊り(AGASUKEダンス)をイメージしたというユニークさが決め手になり、「舞米豚」とネーミング。
「お米で育てた舞米豚」のキャッチフレーズと可愛らしいイラストも決まり、2009年、山辺町産の飼料用米を食べて育った舞米豚、約3000頭がデビューした。

舞米豚、おいしさの違いは“さし”

飼料用米「ふくひびき」を育てている山辺町の田んぼ

では、舞い踊るほどおいしい舞米豚とは、どんな豚なのか? 一般的な豚との違いは大きく分けて2つある。

・飼料用米を作る農家の顔が見える
豚のエサに米を使うことは珍しくないが、生産者の履歴がわかる米を使っている養豚農家は少ないとされる。舞米豚が食べる米は、どこの誰が作ったかわかる=安心・安全につながる裏付けがきちんとなされている点が違う。

・良質な母豚から生まれた豚を長期間肥育
山形ピッグファームは、種豚(母豚)の品種改良を自社で行い、肉質のよい種豚へと代々改良を重ねている。そんな母豚から生まれた子豚を、6ヵ月かけて旨味がのってくるまで育てた上で出荷。経済性や収益性から早く出荷する養豚農家もあるが、舞米豚はあくまでもおいしさを重視している点が違う。

こうして育てられた舞米豚の特徴は、“さし”が入りやすく、甘味とコクがあり、臭みがないこと。牛肉でよくいわれる、あの“さし”が、豚肉でも重要とは! 赤身の中に脂肪分がほどよくあると、それが保水の役目になって旨味が逃げにくくなるのだそう。
ちなみに、舞米豚のおいしさは科学的にも証明済みで、専門機関の分析によると、一般的な国産豚肉より旨味成分のオレイン酸などが豊富との結果が出ている。
今でも十分おいしい舞米豚だが、阿部社長は「飼料用米の割合を増やすなど改良を重ねて、みんなでもっとおいしくしていきたい」と意欲的だ。

舞米豚がコミュニケーションツールに!

山辺町の子どもたちに向けた食育活動でも舞米豚が活躍

2016年で誕生8年目となる舞米豚。飼料用米の収穫量が増えるのに伴って生産頭数も増え、今では年間6,000頭を出荷。今年は10,000頭の出荷を見込んでいるという。
出荷が増えれば、舞米豚を口にする機会が多くなるのが道理で、地元を中心に認知度は年々アップ。山辺町の子どもたちの食育活動や学校給食に登場したり、アイデア料理コンテストを毎年開催するなど、町を挙げて進めている取り組みも、その後押しになっている。

子どもたちに大好評という舞米豚の生姜焼き

―――阿部社長
「ありがたいことに、舞米豚は山辺の豚だと応援してくれる人が、大人から子どもまで増えています。ウチで生産していることがわかるので、舞米豚を手がける前はほとんどなかった消費者との直接的なつながりもできた。関係者、町の人ともうまくつないでくれる。舞米豚がコミュニケーションの潤滑油になっているんです」。

子どもたちから感想や感謝のメッセージが。社員の大きな励みに

町の人たちに温かく見守られ、さらには町の人たちの仲を取り持ってしまう豚は、なかなかいないだろう。
この山辺町のプロジェクトが、地域に根ざした地域農業再生の成功モデルとして、町外の養豚農家などから熱い視線を浴びていることにも注目したい。

舞米豚のおすすめメニューは?

最後に舞米豚のおいしい食べ方をご紹介。生姜焼きやトンカツといった定番もいいけれど、おすすめはしゃぶしゃぶと、塩こしょうで食べる肩ロースの網焼き。旨味がストレートに味わえて、とにかくおいしい!そうだ。
ただ残念なことに、舞米豚の精肉は今のところ地元でしか手に入らない。どうしても食べたいなら、山辺町内や山形市などの飲食店やホテルでは味わえるので、ぜひ山形へ!(東京にも味わえる店ありだが)。

舞米豚の旨味と風味が活きている加工品。フランクフルトや豚肉の味噌漬けなどがある

フランクフルトやベーコンといった加工品は、通販で入手可能です。

株式会社山形ピッグファーム

http://www.pigtarm.co.jp 

  • 営業時間:
  • TEL:023(664)5280 FAX023(664)7708
  • 定休日:
  • アクセス:

昭和40年(1965年)創業 代表/阿部秀顕代表取締役
年商17.8億円(平成26年) 肥育頭数21,000頭
本社:山形県東村山郡山辺町大字根際249
農場:松山農場(山辺町) 東根農場(山形県東根市)
*大規模養豚農家で手がけることは少ないとされる親豚の品種改良を
 自社で行い、より肉質のよい豚の肥育に取り組んでいる。

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