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日本を驚かせるチーズを作りたい! 鹿屋発「kotobuki cheese」の挑戦。

この記事の登場人物

景山 淳平
チーズ工房「kotobuki cheese」
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「チーズは一日でもさぼると熟成の仕方が大きく変わってしまいます。毎日よく見て、観察して、それに合う対応をしなくてはいけません。だから真面目にひたすら、一生懸命作るしかないんですね」

そう語るのは、2018年5月鹿児島県鹿屋市にオープンしたチーズ工房「kotobuki cheese」でチーズ職人を務める景山淳平さん。島根県出身、10年前に奥様の出身地である鹿児島へ移住。長らく飲食に携わる仕事を経験後、チーズ職人へ転身しました。
チーズ作りは未経験ながらも、地道に勉強と試作を重ねて地元産生乳を使ったチーズ作りに邁進し、2018年10月に開催された「Japan Cheese Award」ではリコッタプレーン部門で「リコッタチーズ」が銀賞、フレッシュプレーン部門では「KANOYA CHEESE」が銅賞を受賞しました。

「kotobuki cheese」オープンからわずか半年足らずの快挙です。現在も、「県外の方に驚かれる、おいしい鹿屋産チーズをもっと作りたい」と、新商品開発に余念がありません。

未経験からどのようにしてチーズ職人の道に飛び込んだのでしょうか? 日々どのようにチーズ作りに取り組んでいるのでしょうか? 景山さんにお話を伺ってきました。

料理人からチーズ職人へ。試作を重ねた日々

「kotobuki cheese」は鹿児島で自社飼料の製造・販売を行う「寿商会」が運営しています。寿商会は、「地元畜産物の良さをもっと広めたい」という思いから、自社で飼料を卸している農家から畜産物を買い、飲食店経営を手掛けている会社です。

今までは黒毛和牛や黒豚を中心にレストランで提供していましたが、さらにその一歩先のステージへ。乳牛を購入して飼育を委託し、その生乳を使ったチーズ作りを始めました。それが、今回話題のチーズ工房「kotobuki cheese」です。

景山淳平さん。チーズ作りの合間に話を聞かせてくださいました。

「社長は畜産飼料の視察で出かけた北海道でおいしいチーズに出会って、ここ鹿屋も酪農は盛んだし、自社でチーズを作れたら面白いと思っていたそうです。自分は寿商会の運営する「Restaurant&bar Take」で料理人をしていたのですが、料理だけじゃなくてもっとその前段階のこと、つまり生産者側の仕事をしたいと思いチーズ作りに挑戦することにしました」

そうして未経験のチーズの世界へ。社長と一緒にヨーロッパや日本各地を視察で飛び回りました。イタリアのモッツァレラに感動し、スイスのラクレットに驚き、チーズ作りへの思いを増々強めていきました。日本では宮崎のダイワファームで見学したり、初心者向け研修へ参加したりと学びを重ねました。

 イタリアで、世界3大ブルーチーズの1つであるゴルゴンゾーラチーズの製造を見学。(提供:景山さん)

「学んだことは自分で実際にやってみないとわかりません。チーズ製造用に小さな機械を買ってもらい、レストラン仕事の空き時間や休日に試作を重ねました」

チーズ作りに欠かせないのが菌。病気に強い、酸味が強い、熟成が早いなど、菌ごとにさまざまな特徴があります。無数にある菌からふさわしいものを選ぶため、作りたいチーズのイメージを固めて、試作を重ねたそうです。それでも、思った通りになるかはわからないのが、チーズ作りの面白さであり難しさ。

「宮崎のダイワファームの方から、まったく同じ作り方をしても出来上がったものは同じにならないと最初に聞きました。まさにその通りでした。作ってみないとわかりません。学んだことを参考に作り、調整して、を繰り返しました」

チーズ作りに使う生乳は毎朝、景山さん自ら委託先の地元酪農家へ行き仕入れています。寿商会こだわりのTMR(混合飼料)を食べた牛の生乳は、脂肪分が高く濃い味でチーズ作りに適しています。80~120Lを仕入れて、63℃で30分低温殺菌するところからチーズ作りは始まります。

 生乳を殺菌する機械。

馴染みやすいチーズからスタート。

そうして半年くらい仕事と試行錯誤の日々を重ねた後、2018年5月に「kotobuki cheese」をオープン。「Restaurant&Bar Take」の隣に併設し、作ったチーズはレストランでの提供も。最初はフレッシュタイプのチーズ提供から始めます。

モッツァレラチーズ。真っ白でつやつや、ぷるんとしていて見るからにおいしそうです。

「レストランでそのまま提供できるものをと思い、クリームチーズ、モッツァレラ、裂けるチーズなどのフレッシュタイプチーズから作り始めました。フレッシュタイプは癖がなく、生乳のおいしさが活かせます。それに幅広い層のお客さんにとって馴染みやすいので」

その後、徐々に熟成タイプも試作を重ねて提供するように。鹿屋ホワイト、熟成白カビチーズなどは後から生まれました。熟成タイプはいろんなお酒に合い、チーズ好きに好まれる味です。

 鹿屋ホワイト。

 モッツァレラを熟成させてつくるスカモルツァ。時間をかけて旨味がぎゅっと凝縮されていきます。

オープンと同年の2018年10月、「Japan Cheese Award」ではリコッタプレーン部門で「リコッタチーズ」が銀賞、フレッシュプレーン部門では「KANOYA CHEESE」が銅賞を受賞しました。

チーズを裏返す作業をする景山さん。きちんと手と目をかけるのが日課です。

「でも、やればやるほど奥深いです。モッツァレラは練る固さ一つで食感がすごく変わるんです。あと、そのままレストランで提供するならいいのですが、パック詰めで出荷した時に柔らかすぎると配送の過程で崩れてしまいます。おいしいのをつくるのはもちろんですが、先の流通まで考えて作らないといけないと思いました」

 隣の「Restaurant&Bar Take」では、現在10種類程度のチーズが常に並んでいます。チーズはネット通販でも購入可能

「チーズ盛り合わせプレート」も「Restaurant&Bar Take」店内で食べられます。まずは食べてみて、気に入ったのを買って帰るのがおすすめです。

鹿児島らしいチーズを模索中

現在、新しくチャレンジしているのは、鹿児島の焼酎を使ったチーズ。外皮を塩や酒で洗いながら熟成させるウォッシュタイプチーズを、鹿児島らしい焼酎で作ろうとしているところです。

 チーズを焼酎で洗う様子。

「これからは、せっかくだから鹿児島の土地らしいチーズを作りたいです。地元の大海酒造さんが『面白そうだね』と焼酎のサンプルをくださって。種類によって香りや味が変化するので、いろいろ試作しているところです。地元らしさも大事ですが、もちろんおいしくないと意味がありません。だからこの土地らしさを生かしながらもしっかりおいしいチーズを作っていきたい」

焼酎で洗うごとに熟成していくチーズ。微妙な色や様子の変化を、景山さんの目は捉えているようです。

焼酎のチーズは、順調にいけば今年の秋ごろ発売できるそうです。私は一足先に味見させていただきました。口に入れたとき、焼酎らしい香りはほとんどせず、爽やかさを感じる風味で、チーズの旨味は濃厚。お酒のつまみにじっくり味わうもよし、ピザにのせて食べるもよし、楽しみ方の広がりそうなおいしいチーズでした。

日々堅実にチーズ作りに向き合いながらも、新しいチャレンジを続ける景山さん。ここ鹿屋の地でから発信されるチーズのこれからが、楽しみでたまりません。

kotobuki cheese

http://kotobukicheese.com/ 

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  • アクセス:〒893-0007 鹿児島県鹿屋市北田町5-5