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心身ともに健康な鶏を育む二層式平飼いと、美味しい卵の秘密とは?!【前編】

  • #六次化

この記事の登場人物

東 慶良
(有)東康夫養鶏場

この記事の登場人物

友加里
たまごソムリエ
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宮崎県えびの市の大自然の中で、こだわりの養鶏を営んでいる「康卵(こうらん)の里」さん。ここでは全国的にも珍しい「二層式平飼い」という飼育方法の研究に取り組まれています。 一体どんな飼育方法なのか?そして美味しい卵の秘訣など、こだわりの飼育法を(有)東康夫養鶏場の東さんにたっぷりとお話を伺いました!

二層式平飼いってどんな飼育方法?

 早速ですが、二層式平飼いとは、どのような飼育方法なのでしょうか?なぜ、この方法をとりいれたのでしょうか?

そもそも平飼いってなに?

鶏の飼育はゲージ飼いと言われる檻の中で行われるのが一般的です。それに対し平飼い(ひらがい)とは、鶏舎の内や屋外で地面に放して、自由に動き回り運動できるようにした飼い方です。止まり木なども設置されており、より野生に近い状態で飼育する方法です。
平飼いでは、鶏が自由に動き回ることができるため、限りなく自然の状態で飼育できるので鶏がのびのびと生活することができます。
デメリットとしては、糞や害虫を食べてしまいお腹を壊すこともあり、産卵率の低下につながる場合もあります。衛生管理も大変で、糞がそのまま鶏の生活エリアにたまるので、掃除に大変な手間がかかります。

 種鶏場※では昔、この飼い方をされていたみたいなので、これは全く新しいことではないんです。二層式というのは、段差を作って糞を下に落とすという仕組みでできています。網をしいて、その上で飼育するという方法です。
普通の平飼いって、基本的に地面の上に直接鶏を放して飼育していると思うんです。動物なので、糞をしますよね。その上で鶏が生活をしていると、鶏自身の糞をついばんでしまったりすることがあるんですよ。地面をひっかきながら突っつくのは鶏本来の習性ですから。それで病気にかかるなどして、体調を崩してしまうことがあるんです。
※種鶏場とは、ひよこになるための卵(受精卵)を生産する農場。

のびのびと生活する鶏たち

 なるほど。それは、一般的にあまり知られていないことですね。

 それで、糞に接した生活をしていて本当に大丈夫なの?という疑問がもともとあったんです。なので、二層式にして糞の上を歩くことなく生活できるようにしました。

もともとうちの会長は、「ブランド卵の康卵」を作るうえでも、そういう生活をさせたくないからこそ、ゲージで飼う中で最高の卵をどうやったら作れるか?ということを一生懸命頑張って考えてきたんです。

康卵は、そんな誇り高い卵なんですけれども、一方でケージ飼いだから食べないんだというお客様がいらしたんです。

 それはどういうことですか?

台頭してきた新しい価値観の消費者

 お客様から、おたくの卵は平飼いですか?というお問い合わせをいただくことがあるのですが、そこで平飼いではないことをお伝えすると残念がられてしまうケースがあります。他にも、スーパーや百貨店などのバイヤーさんからも、平飼い卵の取り扱いについて聞かれることがあります。

欧州から広がるアニマルウェルフェア

2012年にヨーロッパの養鶏はアニマルウェルフェア※1の観点から、バタリーケージ※2の飼育環境を禁止し、新しい基準を設けエンリッジドケージ※3という飼育方法を採用しました。それによりヨーロッパのスーパーでは平飼いされた卵が当たり前に並ぶ様になり、消費者の価値観もそれに合わせて変化してきている。
※1 アニマルウェルフェアとは、生き物としての家畜に心を寄り添わせ、産まれてから死を迎えるまでの間、家畜をストレスから解放し、行動要求が満たされた健康的な生活ができる飼育方法を目指す畜産のあり方とその概念。
※2 バタリーケージとは、ワイヤーでできたケージを連ねて何段も重ね、その中に鶏を収容する近代式の集約飼育方法です。
※3 エンリッジドケージとは、1羽当たりの飼養面積は、最低750㎠、巣箱、敷き料、止まり木などを設置することが決められた飼育方法です。

 なるほど、そのニーズに応えるために平飼いを始められたということですか?

 それもありますが、私たちがこの飼育方法を始めた一番の理由は『卵を食べることによって健康になってよりよい人生を送っていただきたいという想い』です。
平飼いをすることで、心身ともに健康な鶏が産んだ康卵の里の卵をお客様に提供できます。康卵を始め、健康な鶏が産んだ卵を食べてもらうことでお客様自身の健康や幸せにもつながると考えています。

そして、先ほどの「アニマルウェルフェア」という価値観が今後、日本でも増えていくだろうと思うので、そのときのために今からノウハウを会社として持っておく必要があると思ったからですね。

卵を生み出す秘訣は?

 健康といえば、飼育方法だけではなく、お水にもこだわっていらっしゃいますよね?

 そうなんです、電子イオンを取り入れています。
電子イオンは一般の養鶏場では取り入れているところは少ないと思います。簡単にいうと、マイナスイオンのことです。

電子を餌と水に流し込むことで、餌と水が酸化して劣化するのを防ぐ効果があります。その電子が豊富な餌や水を摂取することで、鶏が健康な状態を保つことができると思い取り入れてきました。

「本当に体に入れても安全」と自信をもって言える商品を作りたいという思いから、会長が農薬などに頼らない飼育方法を決断した当初、電子技法との出会いがあり、実際に取り入れてみると、鶏の卵の質や鶏の体調が驚くほど健康になり、あらゆる面で圧倒的な違いを感じたそうです。

イメージです

 実際、一般消費者が感じるほどの変化はあるのでしょうか?

 変わります。敏感なお客様は「卵の味が何か変わった気がするから確認してみて」と言われたことがあります。
なんでだろうと思って調査したら、何かのトラブルでその電子イオンの機械の電源が切れていたんです。

もう40年以上も電子イオンを使い続けています。
うちの卵の美味しさの最大の秘訣の一つはこの電子イオンだと思います。

二層式の平飼いとゲージ飼いの差は??

 ちなみに二層式の平飼いと、ゲージ飼いの飼育方法では何か変化はありましたか?

 今のところ大差は感じていないですね。
味が悪くなることもなく問題ありませんでした。産卵率に関しては、現段階でいうと落ちることもないです。
ただ面積あたりの生産性でいうと低いのは確かですが、産まれる卵の数が極端に少ないとかという感覚はないですね。

 鶏の様子を実際に見て、元気に育っている感じはありますか??

 そうですね。だんだん私たちにも慣れてくるので近寄ってくるようになりますし、動物らしさを感じますね。のびのびと生活している感じはかなりありますね。表情もよく見えます。走り回ったり大きく羽を広げて羽ばたいたりもしますよ。

2層式平飼いの様子(動画)

それで変わらずに卵を収穫することができてしっかり販売することができるのであれば、そういった鶏をどんどん増やしていっていいのかなと思っています。

あとは1羽あたりに必要な面積が多い分、一般の方々にとって卵の価格が少し高くなってしまうので、なかなか求めてもらえないものかとは思うのですが、これまで「康卵」を買ってくださっているお客様には、味わっていただけるのではないかと思っています。

 少しずつでも、多くの方々に届いてもらいたいですね!

 あとは、一般的な平飼いと二層式の最大の違うポイントは、糞と離すかどうかですね。

 ちなみに二層式は何人のスタッフさんで管理されているんですか?

 この農場では私ともう一人従業員がいて、あとは卵をとってくれるパートさん2人くらいですね。がこの方式の今の規模だけでいうと、1人でもできちゃうくらいです

 そうなんですね。二層式を始めてスタッフ側には何か変化はありましたか?

 そうですね。のびのびとしている鶏を見たときに、心が安らいで楽しくなるよねという感覚はあるようですね。ちょっとした動物園に来た感覚になります。

 いい環境ですね。最後に、二層式で感じたメリット・デメリットがあれば教えてください。

 そうですね、メリットはやはり糞と離せるし、汚れないので管理しやすいですね。
従業員の作業のしやすさも考えたんです。ただもっと増やして行こうとなると除糞の方法など改善しなければいけないと思います。

デメリットは除糞が大変なところですね。これからもっと改良していかないといけないなと思っています。コストとの兼ね合いになるんですけどね。

コストをかければおそらくクリアできるのですが、売れなければ設備投資できないので、これから改良し、試行錯誤しながら頑張っていきたいと思います。

(有)東康夫養鶏場

  • 営業時間:平日9:00-17:00
  • TEL:
  • 定休日:日祝
  • アクセス:〒899-4312 宮崎県えびの市大字坂元1640

「あなたの健康を守りたい!」そのような気持ちで、創業以来真心をこめて、本当に安全で安心できる卵の生産に取り組んでいる養鶏家。現在、九州・沖縄をはじめ、関東や関西のスーパー様へ鶏卵の販売・卸し事業をしています。

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