ブランド牛「こぶ黒」を生み出した牧場の家族の話。
この記事の登場人物
松本 尚志まつもと牧場
全国的に知られる名産品「日高昆布」を飼料に混ぜ与えるというユニークな発想でオリジナルブランド牛「こぶ黒」を生み出した、まつもと牧場のオーナー松本尚志さん。「こぶ黒」がブランド牛としての地位を確立するまでには、家族の強い支えがあったといいます。
もくじ
無数あるブランド牛のひとつから、業界に知られる名ブランドへ
現在のまつもと牧場の運営体制は、尚志さんとご長男夫妻が繁殖から肥育までの一貫生産を、奥様の照世さんと次男が食肉加工を担当し、さらに百貨店の催事や地元イベントに出店するなど、営業活動にも取り組んでいます。
地元はもとより、全国への卸業もスタートさせ、こちらのオーダーも高まる一方。受注がまかないきれず、セリで買い戻すこともあるとのこと。
「うちの牧場が『こぶ黒』の商標を取得したのは平成21年のこと。ただ最初の数年は、全国に無数にあるブランド牛のひとつでしかありませんでした」
しかし東京のある食肉業社のプロが、赤身の濃厚さに加え、『食べ飽きしない脂(サシ)』に最大級の評価を与えたことで、その名は業界内外に一挙に広まっていきます。
「等級はA-4でしたが、等級を超えたおいしさという評価もいただきました。さまざまな試行錯誤を経験してきましたからね、純粋に嬉しかったです」
実際にそれを食した消費者からも「さっぱりしておいしい」「噛むごとにジューシーな味わいが広がる」「いくらでも食べられる」という声が届くように。
「親をサポートしたい」と故郷に戻った息子たち。
さらに尚志さんが喜んだのは、このブランド牛の生産を手伝うべく、二人の息子が故郷の三石(新ひだか町)にUターンしてくれたこと。
両親の負担を少しでも少なくしたいとの思いから、長男は高校卒業後に酪農関係の仕事に就き、次男は横浜の精肉店で知識や経験を積み、実家の牧場で働く道を選んでくれたのです。
「自分は先代の酪農を継ぐためにしぶしぶこの町に戻ってきましたが、息子らは親父とお袋のためにと帰ってきてくれたんです。我が子ながら本当に頭が下がります」
今でも尚志さんが忘れられないのは、修行中の次男が実家に送ってくれた荷物。その中に入っていた手紙には『がんばれ!まつもと牧場』とのメッセージが入っていました。
「がむしゃらにやってきましたが、振り返ると、家族の支えや励ましがあったからこそ、がんばれたんだと思いますね」
『こぶ黒』を一貫管理してみたい。そこから広がる家族の夢。
酪農が苦手で畜産へ。よそと同じが嫌でこだわりの飼育に。一流ブランドに負けないとの思いで昆布の飼料を。そして子どもたちのUターン……
尚志さんの人生の節目に合わせるように、まつもと牧場は順調にその規模を拡大。生産される『こぶ黒』も業界が注目するブランド牛へと成長しています。
「現在の飼育頭数は270頭にまで拡大していますが、ここ数年はセリにかけてもすぐに馴染みの買手が手を上げるため、常時完売状態が続いています。本当にありがたいですね」
今後の目標は自分たち家族の手で『こぶ黒』の販売まで行うこと。
繁殖から肥育、食肉加工から販売まですべて一貫管理できれば、さらに経営のビジョンが浮かんでいくと尚志さんは言います。
「例えば『こぶ黒』を調理する飲食店と提携したり、あるいは自分たちで提供する『こぶ黒レストラン』を経営したり、あの丘陵に牧場を眺められる場を作ったり、あとは…」
大きく広がる尚志さんの夢。けれどそれらすべては、そう遠くない日に現実になるのではないでしょうか。
まつもと牧場
- 営業時間:ー
- TEL:0146-35-3253
- 定休日:ー
- アクセス:〒059-3354 北海道日高郡新ひだか町三石川上360