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“もったいない”の発想から生まれた多角化経営

  • #六次化

この記事の登場人物

香川 憲一
香川ランチグループ
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今回取材させていただいたのは、1日に30万個、重さにすると約15トンにもなる卵を生産している「香川ランチグループ」さんです。

とても多くの卵を生産されていますが、卵の殻の表面に少しの傷が付いているだけでも出荷できずに規格外品となってしまいます(トップの写真は規格外品の卵です)。

この「もったいない卵」をなくす取り組みをしようというスローガンとともに、21年前から行っているのが規格外品に付加価値をつけ、茶碗蒸しや豆腐を作るという第6次産業です。

1日の卵の出荷のうち規格外品となるのは平均すると、全体の約1割。重量にすると約1.5トンにもなります。

その規格外品を使って茶碗蒸しや卵豆腐などを作るのは、香川ランチグループさんのグループ企業である加工品会社「宮崎デリカフーズ」さん。工場の見学通路のガラス窓からは、茶碗蒸しの具材をトッピングする風景も見ることができ、約1.5トンの卵から約3万食の加工食品が製造されています。

社員一丸となって流通ルートを構築

加工食品をつくった時、問題となったのが流通のことでした。消費者にとって身近な食品である卵はスーパーマーケットで店頭にたくさん並べてもらえますが、茶碗蒸しや卵豆腐は多くは置いてはもらえません。

そこで、どうやったらイノベーション(革新)が起こせるのか全社員が知恵を絞った結果、

「異業種である食品メーカーのところへ行き、『御社の商品を私たちに売らせてください』と営業をしました」

と、香川社長が話します。

うどん、焼きそばの麺、納豆、もやし、漬け物…他社の商品を運ぶことを申し出て、どんどん荷物を増やし4トントラックをいっぱいにしました。そして、その中に自分たちの商品も入れて頂けました。1店舗に1000パックではなく、1000店舗に1パックずつでも納品するという発想で、自ら流通ルートを切り開いたのです。

次代にニーズがあるのは、ローカル色のある加工品

 色々な影響を受けマーケットが先細りしていく中、課題はどれだけ卵を売ることができるのかということでした。

「僕らのような一地域の養鶏場が、大型の養鶏場と同じ土俵に立っていては勝てません」と香川社長。

釜めしの素やおでん、豚軟骨の煮込み、鶏もつの煮込み…「宮崎デリカフーズ」さんでは、さらに卵と鶏肉以外の農産加工品の道も広げています。

このときに大切になるのが、ローカル(地方)色。たとえば宮崎デリカフーズさんでは「おでん」のネーミングを「宮崎おでん」にすることで、高級スーパーやデパートなどで販売したときに、コンビニのおでんとの差別化が図れます。地方の農業が生き残っていく道は、この地域色にあると香川社長は考えます。

物産館を中心として地域おこしを図る

香川ランチグループさんの工場の敷地内にあるアンテナショップ「善太郎屋」では、地域の人々が作るさまざまな6次産業化した商品を販売しています。

そのアンテナショップ「善太郎屋」をのぞくと、香川ランチグループさんの卵のほかに、地元で作られたドレッシングや焼き肉のたれ、ふりかけなどの加工品が所狭しとズラリ。ロールケーキやシュークリーム、また地元の農家がつくるいちごを使ったロールケーキなど、新鮮で季節感ある商品も並びます。

その中の一角に、表面に少しの傷が付いているだけで規格外品となった新鮮な卵の詰め放題コーナーも。

ここで販売される商品の一部は、全国へ流通している卵と一緒に県外へ出荷されます。「香川ランチグループ」さんと宮崎の中小企業が手を取り合い、お互いに協力して地域を盛り上げているのです。

そんな「香川ランチグループ」さんが目指すのは、地域に愛され、地域とともに成長していく会社。会社工場の前には「アッパレ!農園」という貸し農園が設けられ、地域の人々によって野菜が植えられたり、花畑にしたりしてウサギを飼育し「ラビットファーム」にしようという試みも。

社員の研修室では毎月高齢者向けの健康教室も開催し、今後は学童保育の場所にする予定もあるなど、地域に開かれた存在として、さまざまな計画を考えているそうです。今後の取り組みにも注目したいですね。

農事組合法人 香川ランチグループ

http://kagawa-ranchi.com/ 

  • 営業時間:
  • TEL:0983-27-2005
  • 定休日:
  • アクセス:

事業内容
・農業組合法人 香川ランチ(雛生産・鶏卵加工・鶏卵販売)
・宮崎デリカフーズ(㈱)(鶏卵加工・食品販売)
・有限会社 美国フーズ(食鳥処理・加工・販売)
・香川ランチ物産館 善太郎屋

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