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元フリーターが貯蓄ゼロから 裸一貫で酪農経営者に!?[前編]

この記事の登場人物

矢野 琢也
矢野牧場
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平成28年、北海道中標津町で「矢野牧場」の営農をスタートさせた矢野琢也さん。第一印象からは真面目な人柄がうかがえ、実際にお話を始めると物腰もとっても柔らかです。そんな彼が少し照れくさそうに「フリーター時代」のエピソードから振り返りました。

矢野さんは兵庫県のご出身。かつて北海道のエコツーリズムに参加し、インストラクターとの出会いから自然とふれ合う仕事に興味を抱くようになりました。ところが、大学受験の失敗から人生の目標を見失い、フリーターライフを送っていたといいます。
「スーパー、レストランのホール、居酒屋のキッチン、ワインショップ…何事も長続きしませんでした。フィーリングが合わないと感じた途端にドロップアウトしていたんです」

甘えた暮らしを律するため、別海町の酪農バイトへ。

 
さらに、当時は実家に暮らし、食事も洗濯も任せきりだったと苦笑します。けれど、胸の内にはこんな生活を続けるわけにはいかないという思いもせめぎ合っていました。このままではダメになる。早く自立しなければ。そんな思いに駆られ、強制的に実家を離れるために自らムチを打ちました。

「できるだけ遠くで住み込みの働き先を見つけようと求人情報を探しました。僕は自然や体を動かすことが好き。この2点を重視したところ、別海町の酪農バイトが目に飛び込んできたんです」

平たくいってしまえば、矢野さんが北海道で酪農生活をスタートさせたのは甘えた暮らしを律するため。けれど、これが彼の人生を大きく変える転機になりました。

農業特別専攻科で学ぶうちに、新規就農の夢を抱いて。

フリーター時代の矢野さんは、自身も分析するように熱しやすく冷めやすいタイプ。ところが、こと酪農に関してはバイトの3日目に「天職」だと直感したのだそうです。

「命と向き合う酪農は、毎日が変化に満ち満ちています。朝、仕事に出かけるとあっという間に夕方。目配りを怠ると牛の死にもつながる大変な仕事ですが、その分だけ手応えが大きく、コレで食べていけたら幸せだろうと思うようになりました」

牧場の親方は、年齢が近く兄貴分のような存在だったとか。時に意見が食い違うこともありましたが、真正面からぶつかり、指導してくれたというのです。当時の矢野さんはミスが公になることを恐れていましたが、「酪農はウソをつけない仕事。失敗は良いけれどすぐに対処しなければ」と口を酸っぱく教わりました。

「そんな親方にすすめられ、働きながら酪農の知識や技術を学べる別海高校の農業特別専攻科に通いました。級友には酪農後継者も多く、たまに彼ら・彼女らの実家に手伝いに行くと多彩な飼養スタイルがあることに驚かされたんです」

農業特別専攻科のカリキュラムは2年間。酪農を学ぶにつれ、多くの現場をその目で確かめるにつれ、矢野さんは頭の中で「自分がもし牧場を経営するなら…」という経営者の視点を持つようになったそうです。

「規模は小さくても、つなぎ飼いで一頭一頭の体調を細かくチェックしたい。そんなスタイルで新規就農したいという夢を描くようになりました」

酪農ヘルパーとして働き、多彩な営農スタイルを吸収。

農業特別専攻科を卒業後、矢野さんは新規就農に向けて研修(新規就農するために定められた研修を経験すること)するかと思いきや、意外な道を選択します。中標津町の「有限会社ファム・エイ」に入社し、酪農ヘルパーとして働いたのです。

「研修では多くても2~3の牧場を経験するくらいだと思い、たくさんの酪農スタイルをこの目で見られる酪農ヘルパーの道を選びました。そのほうがいろんな営農手法を参考にしながら、いいとこ取りができると考えたんです」

会社も矢野さんがいずれ新規就農を目指すことに賛同した上で雇用。酪農ヘルパーとして汗を流しながら、牛の飼い方はもちろん、建物の構造や使用機械の型番、さらに作業動線にまで目を光らせる日々が始まりました。

「朝早くから夜遅くまで仕事をする牧場もあれば、作業性を高めて効率化を図っているところもありました。自分が新規就農した時には酪農ヘルパーを活用したいと考えていたので、第三者の自分が分かりやすいと思う業務の進め方を参考にすることが多かったです」

大学受験の失敗から人生の目標を見失い、仕事も長続きしなかった矢野さんが酪農と出会ったことで人生は大きく変わり始めました。酪農家として独立することを目標に向けて動き出しました。

後編は、矢野さんが独立に向けて行ったことや、最愛の奥さんとの出会いなど、酪農家になる夢をついに叶えた矢野さんの物語の完結編となります、お楽しみに!

矢野牧場

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  • アクセス:〒088-2685 北海道標津郡中標津町西竹584-2