何度もピンチを乗り越えた「牛とろフレーク」!
この記事の登場人物
藤田 惠有限会社十勝スロウフード
「有限会社十勝スロウフード」の「牛とろフレーク」は、品切れになることも少なくない超人気商品。(関連記事:あの「牛とろフレーク」の製造工場に潜入!)
ですが、ここまで知名度が高まるまでの道のりは決して平坦ではなかったそうです。一体、どんな困難が立ちはだかったのでしょうか?
もくじ
魚の「トロ」に見立てた「牛とろ寿司」が出発地点。
牛とろフレークの原型を生み出したのは十勝スロウフードの関連牧場ボーンフリーファーム。サーロインやヒレといった消費者が好む部位は価値が高い一方、その他はニーズがほとんどなかったことを課題に掲げていました。
「立派に育てた牛を余すところなく食べてほしい」を合い言葉に商品開発を始め、本来は流通に乗らないような部位で生食用のひき肉を試作したところ思いのほかおいしかったとか。そこで帯広の寿司屋さんに協力をあおぎ、魚の「トロ」に見立てた「牛とろ寿司」を握ってもらったのが牛トロフレークの出発地点です。
「その後は製造の精度を高めていき、袋入りの牛とろフレークが誕生したのが平成9年。2年後には今のカップ入りの商品が生まれました」と代表の藤田惠さん。テレビ番組や雑誌の紹介という後押しもあり、牛とろフレークは順調な歩みを進めていくように見えました。
O-157やBSEの問題が大打撃に。
牛とろフレークが商品化された当初は生食用としての販売。食中毒や家畜の病気など食品業界を揺るがす問題が起きると風評被害は避けられなかったといいます。
「O-157やBSEのニュースが報道されるたび、当社への注文はピタリと止んでしまいました。関連牧場のボーンフリーファームがいくら健康な牛を育んでいても、工場がどんなに衛生管理を徹底しようとも、食肉業界を不安視する流れには逆らえなかったワケです」
それでも十勝スロウフードは根気強く商品の安心・安全を発信し、ようやくお客様が戻りつつありました。けれど、今度は「生食」を根底から覆す大事件が起こってしまったのです。
生ハムづくりの手法が、「牛とろフレーク」の救世主。
まだ記憶に新しい平成23年のユッケ集団食中毒事件。このニュースが全国を駆け巡ると、生食用の肉に対する規制がたちまち強まりました。牛とろフレークも例外ではなく、一時は製造を中止するところまで追い込まれたそうです。
「牛とろフレークは生食用だからこそ舌の上で脂がとろけ、口中に肉の甘みが広がる商品でした。なので、肉の生食を禁じられるともうお手上げ。正直なところ、会社をたたもうかとも考えましたが、従業員の生活を預かる立場としてそう簡単にギブアップするわけにはいきませんでした」
藤田さんは生食の味わいと舌ざわりを再現できないか頭を悩ませ、試行錯誤を重ねます。失敗の連続で諦めかけたその時、救世主となったのは生ハムづくりの手法。牛肉を一度塩漬けすることで「非加熱食肉製品」として提供するアイデアを思いついたのです。
「集団食中毒事件から半年。ようやく以前の生食用と比べてもひけをとらない品質まで引き上げ、新たな牛とろフレークをお客様にお届けできるようになりました。多くの方に愛していただいているこの商品も、山あり谷ありの道をたどってきたんです」
と、藤田さんはいたずらっぽく笑います。
最近ではハンバーグやウインナーといった商品のほかにも、ハツやギアラなどの内臓を使った珍しい燻製も開発。「牛を余すところなく食べてほしい」という思いを実らせるために、十勝スロウフードは進化を続けています。
有限会社十勝スロウフード
- 営業時間:月~金曜/10:00~17:00 土曜/10:00~12:30
- TEL:0156-63-3011
- 定休日:日・祝日
- アクセス:北海道上川郡清水町御影499-8