【名人会特集・前編】名人和牛を生み出す「名人会」。東京食肉市場での枝肉講習会に密着
この記事の登場人物
名人会茨城県畜産農業協同組合連合会
もくじ
「名人」は、牛肉の美味しさを追い求めて作られた配合飼料。
穀物をメインにした独自ブレンドが人気で、全国の肉牛生産者に利用されています。
「名人会」とは、そんな「名人」を利用する生産者が集まった組織。よりよい牛肉を作るために、定期的に情報交換や勉強会といった活動を行い、肥育技術の向上に努めています。
今回ご紹介する肉用枝肉研究会は、その活動のひとつ。
この研究会の目的は、事務局を務める茨城県畜産農業協同組合連合会・菅田衆一さんによると「自分の牧場の特徴や傾向をつかみ、肥育方針の決定や飼養改善に活かしてもらうこと」とのこと。
今回で52回目の開催となる肉用枝肉研究会とはどのようなものなのでしょうか?
茨城県畜産農業協同組合連合会が全国の名人和牛の生産者を一堂に集めて定期的に行っている研究会にお邪魔させていただきました。
こちらの前編では、枝肉講習会の様子をレポートします。
配合飼料「名人」とは?
まずは簡単に、配合飼料「名人」についてご紹介します。
名人は茨城県畜連が開発した飼料で、「日本人が主食として食べている最も美味しい穀物を与えた牛が最もおいしい牛肉」という考えを元に作られています。
原材料は、小麦・トウモロコシ・大豆粕・米ぬかなどの穀物がメイン。最大の特徴はシモフリを入れるのに適していることで、上質なシモフリ牛を育てる飼料として注目を集めています。
「肉質等級は高い順から5~1の5段階で評価されます。シモフリがほとんど入らない赤身の肉が1等級で、シモフリの量が増えるごとに等級が上がっていきます。赤身の中にどのようにしてシモフリを入れていくかが肥育の一番難しいところですが、名人で育った牛ならアベレージで上物と呼ばれる4等級には入ってきます」
和牛に名人を食べさせて、日々の管理に努力を加えることでさらに上質で美味しい牛肉を作ることができるのこと。しかし、さらに上質な牛肉を作るには、売れる肉の仕組みを学ぶ必要があると菅田さん。
名人会が主催する肉用枝肉研究会の目的は、売れる肉の仕組みを知り、それぞれの牧場で実践してもらうこと。
研究会の講習では、格付の方法を学び、売れる枝肉の仕組みを紐解いていきます。
牛肉の等級はどのようにして決まるのか?この研究会のキモとなる評価方法についてご紹介。講習会に潜入してきました。
枝肉の評価方法を学ぼう
枝肉の評価のメインとなるのは、歩留等級と肉質等級の2つの要素。この2つを基準に枝肉の評価が決まります。
枝肉の第6~7肋骨間と呼ばれる箇所を切り開き、高級部位であるロースの部分を見て判断します。
評価は誰でもできるわけではなく、格付のプロである日本食肉格付協会によって行われます。
「歩留等級はA.B.Cの3段階。肉質等級は1~5の5段階で評価され、全部で15段階に分けられます。格付の最上級は歩留りAの肉質5、A5ランクと呼ばれるものになります」
・歩留等級・・・1頭からどれくらいの肉が取れるかを評価。脱骨後もたくさんの肉が取れる、肉厚でムダな脂のない枝肉ほど等級が高い。
・肉質等級・・・「脂肪交雑(シモフリ)・肉の色沢・肉の締りときめ・脂肪の色沢と質」の4つの項目の総合評価
「同じ500キロでも、細くて長い枝肉と厚くて身が詰まった枝肉では最終的な肉量が変わってきます。そのため、1頭でより多くの肉量を確保できる枝肉の評価が高くなります。肉質等級は、シモフリを代表とする肉の質を表します。4つの項目を1~5の間で評価して、その中で一番低い等級がその枝肉の等級になります。脂肪交雑が5でも、肉の色沢が1なら、その枝肉の等級は1ということになります。」
会場いっぱいに吊るされた枝肉をひとつひとつ確かめ、それぞれを評価していきます。これに加え、いくつかのポイントをチェックして総合評価を行うと菅田さん。
格付以外の評価として代表的なのが以下の5つの項目です。
・体型・・・歩留を評価する際の指標のひとつ。厚く肉が詰まった体型が評価される。
・モモヌケ・・・シモフリが一番乗りにくいモモのシモフリの量。モモにもシモフリがある場合は評価が高い。
・はしり・・・背骨の際についた肉。骨の隙間から盛り上がるように肉と脂がはみ出していると高評価。ロースの部分にあたり、太ければ太いほど高級部位がたくさん取れるため高評価となる
・ケンネン・・・腎臓の横にある脂の固まり。適切な時期に出荷されたかどうかを確認できる。ケンネンが小さくなっていると高評価。
・カミ・・・筋肉の組織間についた脂。筋間と呼ばれ、無駄な脂が多いと枝肉としての評価が低い。
「さまざまな評価ポイントがありますが、要は歩留り(使える肉が多い)が良く、枝肉全体のバランスが良くシモフリがある枝肉がもっとも高く評価されます。生体で770キロあった場合、精肉になるのは280キロ前後といわれていて、重量は三分の一程度まで減ってしまいます。そのため、同じ体重でも商品として使える部分が多く、かつシモフリが全体にある枝肉がもっとも高値で取引されるのです」
名人会の肉用枝肉研究会を通して学べるのは、大きく分けると以下の3点。
・牛の値段はどのように決まるのか?
・高値が付く枝肉とそうではないものの間にはどのような差があるのか?
・そして、高値がつく枝肉を作るにはどのようなことが必要なのか?
仕組みを学び、たくさんの枝肉と自分の枝肉を見比べることで、自分の牛の特徴を把握して、それを飼養管理の改善に結びつけることができます。
この会に参加する意義について、「肥育の難しいところは、結果が出るのが2年先になること。失敗は許されないからこそ、多くの事例を確認できるこの研究会に参加する価値があるのです」と菅田さん。
次の日に開催されるセリと講評会では、どのような学びを得ることができるのでしょうか?
【名人会特集・後編】名人和牛を生み出す「名人会」。東京食肉市場でのせりと講評会に密着 では、その模様を詳しくご紹介します。
茨城県畜産農業協同組合連合会
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