思わず絶句のパノラマビュー!日本最北の牧場へ。
この記事の登場人物
新保株式会社 宗谷岬牧場
水平線の向こうに浮かぶ島影は異国の地サハリン。取材班はわが国最北の地、宗谷岬に降り立ちました。ただし目的地はこの旅情感たっぷりの景勝地ではなく、その背後に横たわる広大な丘陵地帯。ここが宗谷岬牧場。その名が示すように、日本で最も北に位置する牧場なのです。
もくじ
周氷河地形という美しい丘陵に広がるパノラマの風景
宗谷岬を横切り、丘陵地に伸びる一本道を高台へ。頂に着くと同時にフロントガラス全面に美しい牧草地のパノラマが広がります。その向こうには荒々しい波を立てる大海原と弧を描く水平線。
緑のじゅうたんのあちこちに林立する発電用の風車のふもとには、のんびりと草をはむ牛たちの姿も。広大な北海道でもここまでのスケールと美観を誇る牧場は、そう多くはないでしょう。
そのあまりの壮大さに見とれていると、背後から「ようこそ」の声が。迎えてくれたのは、株式会社宗谷岬牧場の新保常務です。
「放牧されているのは繁殖用の和牛です。雄大にして牧歌的なこの風景を眺めにやってくる観光客も多いんですよ」
宗谷岬牧場は肉牛の肥育と酪農に取り組む農業生産法人。実はこの宗谷の他に、天塩や声問、産士の4つの地区で牧場を運営しています。
「宗谷の経営面積は1400ha。(うち採草地や放牧地は1060ha)すべての牧場の面積を合わせると2000haを超えます。この広さは日本屈指でしょうね」
牧場を支えるのはロボットをはじめとする最新設備
宗谷岬牧場の業務は、黒毛和種などの肉牛を飼養する「肥育」、全国から優秀な種雄牛の産仔を導入しバランスの取れた素牛の生産を行う「肉用繁殖」、1日あたり約11,000kgの生乳を生産する「酪農」、さらに飼料自給や自然にやさしい循環型経営を目指す「飼料作物」という4つの部門で構成されています。
「牧場全体での飼育頭数は、肥育牛で約5200頭、繁殖牛で2000頭、乳牛で約900頭ほど。中でも肥育牛は出生から出荷までの飼料や治療歴などきめ細かく情報管理し、厳しい生産基準のもとで、品質の高い枝肉生産を実現しているんです」
そういって胸を張る新保常務の案内で清潔感漂う育成牛舎へ。飼育されている仔牛たちにミルクを与えているのは……ロボット!
「一頭の仔牛に一日2~5リットルのミルクを正確に自動給餌しています。耳標でそれぞれの個体を識別しているので、与え過ぎたりすることもありません。逆にあまり飲まない仔牛がいたら病気なのでは、という速やかな判断もできます」
この先進システムはほんの一例。近代的なフリーストール牛舎、大型ロータリーパーラー、排水浄化処理施設、試料調製庫など、この広大な牧場は業界の先陣を行く多彩な設備によって支えられているのです。
「道内はもちろん、道外からも視察に訪れる方も多いです。設備のスケールや先端科学に基づく効率的な飼育法を学んでいかれるようですね」
自然と共存共生する新時代の乳肉複合経営を
牛舎を離れ、再び新保常務と高台へ。大きな夕日が海に沈みかけています。
「この雄大で尊い自然に調和した畜産と酪農を確立するのも、この牧場の大切な使命だと思っています。一頭一頭に自然循環型の牧草を与えるのも、粗飼料自給型の一貫経営を目指すのもそういった牧場の理念の表れなんです」と、新保常務。
ふと強まる海からの風。わが国最北の牧場に、わが国最初の秋が訪れようとしていました。
農業生産法人 株式会社宗谷岬牧場
http://www.soyamisaki-farm.co.jp
- 営業時間:要問合わせ
- TEL:0162-76-2456(本社)
- 定休日:要問合わせ
- アクセス:〒098-6758 北海道稚内市宗谷岬328