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【牛男子⑤】趣味はギター!“かっこいい酪農”を目指す、かっこいいお父さん

この記事の登場人物

廣澤友和
株式会社グローリーデーリィファーム
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群馬県桐生市で株式会社グローリーデーリィファームを営む廣澤友和さん。畜産業界のネガティブなイメージを変え、「畜産を“かっこいい仕事”にしたい」という廣澤さんは、家族を愛し、人生を楽しむ術を知っているステキな男性でした。

バイクを愛するやんちゃな少年が、畜産業に足を踏み入れた理由

現在の株式会社グローリーデーリィファームは、もともとは廣澤さんのお父さんが経営されていた牧場でした。実は、少年時代の廣澤さんは、けっこうやんちゃだったんだとか。「学校に行かないことも多かった(笑)」といいます。でも、家の手伝いとして牧場の仕事だけは、幼少期からずっと毎日欠かさずしていたそうです。

「特に小さい頃は、牧場に手伝いに行けば親の顔が見られるというのが嬉しかったですね。当時、両親は早朝から深夜まで牧場にいたので、家ではなかなかゆっくり一緒に過ごせなかったんです。」

このように、小さな頃から牛が身近な存在だったという廣澤さんですが、だからといって酪農家になりたいとはまったく思っていなかったそう。では、どうして酪農家に?

「高校卒業するとき、就職活動をしたくなかったんです(笑)で、ちょうどそのとき父親が牛舎を増設して、人手が必要な状況だったんです。それで、ひとまず家の仕事をしようかなと。」

今でこそ畜産に熱い想いを抱く廣澤さんですが、実は当時は別に夢があったのです。

「バイクが好きだったので、ハーレーをキャッシュで買って東京に出たいと思っていました。結婚も30歳まではしないと決めていた。それで、牧場の仕事でお金を貯めて…と考えていたんです。」

高校卒業後すぐにお父さんに。男としての決断が、人生を変えた

▶19歳の頃の廣澤さんと奥さまのミワさん

しかし、廣澤さんの人生は、仕事を始めてわずか1カ月で大きく変わることになります。
高校時代からお付き合いしていた現在の奥さまの妊娠が発覚したのです。そして、3カ月後の7月には入籍。そこで、廣澤さんがとったのは、「目の前の仕事に専念する」という選択肢でした。

当時まだ10代だった廣澤さんですが、「自分の夢よりも何よりも、男として家族を養うことへの責任感や意気込みが一番大きかった」といいます。

▶奥さまと。長男リク君が1歳になったとき

「でもあの頃は、ほんとにダメなやつでしたよ。 人に厳しく、自分に甘く(笑)やりたいようにはやるけど責任はとりませんよ”っていうかんじで、うまくいったら自分のおかげだけど失敗したら人のせい……っていうスタンスでした。ほんとひどかった(笑)」

廣澤さんはそう笑いますが、高校卒業からわずか3カ月でお父さんになって家族を養うという決断をするのは、生半可な気持ちではなかったはずです。

▶ミワさんのお父さま、お母さまと。長女シュリちゃんの七五三のとき

また、廣澤さんは、その頃のことをこう振り返ります。

「特に子どもが小さい頃は、ものすごく仕事が忙しくて、朝の6時に家を出て夜中の12時過ぎに帰ってくる毎日でした。嫁さんは家で赤ちゃんの世話、僕は仕事。二人だけだったら、とっくに破綻していたと思います。でも当時、僕ら家族は嫁さんの実家にお世話になっていて、本当に助けられました。嫁さんのお母さんが僕の帰りをいつも待っていてくれて、必ず温かいごはんを出してくれて。そういった人の支えがなければ絶対にここまでやってこられませんでした。自分は本当に人に恵まれていると思います。」

何より大切な家族との時間

その後、廣澤さんは、2012年に実家の牧場を引き継ぎ、代表となります。さらに、名前も株式会社グローリーデーリィファームに変更。

お子さんたちも立派に成長し、現在では高3の息子さん、高1と小2の娘さんがいます。お休みの日には、息子さんのサッカーを見に行ったり、お子さんたちとショッピングに行ったりすることが多いそう。長女のシュリちゃんは、まわりの友達から「シュリのお父さんかっこいい」とよく言われるんだとか。子どもたちにとっても自慢のお父さんです。

家族団らんの場にもお邪魔しましたが、廣澤さんの明るくオープンな性格がご家族の輪の中心にあるんだなという印象を受けました。お子さんたちに「お父さんの好きなところは?」と聞いてみたところ、ふたりともちょっと照れくさそうでしたが、こんなふうに答えてくれました。

リク君「サッカーの試合を一緒に見に行けるところ。趣味が合うとこですかね。」
シュリちゃん「あんまり怒らないところ。お出かけに連れていってくれるところ。公園に家族で行って、バトミントンするのが楽しい。」

しかし、「子どもが小さいときは、仕事が忙しくて子どもと交流する時間があまり持てなかったんです。」と、廣澤さんは言います。

「それって大人の都合としては“致し方なかった”で済ませられるけど、子どもからしたら関係ないですよね。」

そんな後悔に似た気持ちもあって、今は家族との時間やプライベートを充実させることを大切にしているのだそうです。

「畜産業は、生き物が相手なので、現状長期休みはなかなか取れません。でも、 “酪農だから休みが取れない”という状況はなくそうとしています。今までは家族で長期休暇をとって旅行にも行けなかったけど、来年こそは絶対1週間くらい休みをつくって家族旅行に行こうと計画しています。」

趣味はギター!

廣澤さんには、趣味があります。それは……

ギター!

高校時代に楽器をはじめ、仕事の合間にバンド活動をしていたそうです。

この日は、昔からの仲間の今泉さん(Bass)と蕪木さん(Drums)とともにスタジオに集まっていただきました。みなさん職業はバラバラですが、普段から飲みに行く仲。ですが、バンドとして一緒に演奏するのは、7年ぶりとのこと。

日本のロックバンド、ブランキー・ジェット・シティの大ファンだという廣澤さん、ブルーのデニムシャツにワインレッドのGretsch製ギター。

「今回をきっかけに、またバンド活動をしたい」と盛り上がる3人の顔は、まるで少年のようにキラキラ輝いていました。

理想に燃える酪農家として、父として、ひとりの男として。これからも廣澤さんの模索と構築の旅は続きます。