畜産を学ぶ

【番外編】“高校牛児”たちが抱く熱き将来の夢

高校
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1月16日(木)・17日(金)東京・品川で開催され、和牛を肥育する全国の農業高校30校が参加した「第3回和牛甲子園」。ここでは熱き闘いを見せた“高校牛児”たちの素顔をご紹介。受賞が叶わなかった牛児たちにも、それぞれの夢とドラマがありました。

 
本イベントの醍醐味は、1年以上に及ぶ時間と情熱を燃やしてきた青春の日々の闘いと共に、同じ畜産の道を進む全国の同世代の仲間との出会いも大きい。回を重ねるごとに、他校のレベルの高さに刺激を受け、牛児たち参加への意気込みも高まっている。趣向を凝らした活動発表はもちろん、束の間の2日間を楽しむためにも、準備は万端だ。

他校のレベルの高さに刺激を受け
「次こそは」と高め合う仲間たち

2年連続の優勝校、岐阜県立飛騨高山高等学校の水尻さくら(高3)さん、糸田葵(高2)さんは、お揃いのお団子ヘアにお揃いのブーツスタイルで参加。中谷拓夢(高2)くんも高校牛児たちの間では、もうお馴染みの顔だ。

とても聞き取りやすい発表を見せた宮城県小牛田(こごた)農林高等学校は、この甲子園のためにお揃いのトレーナーを作成。発表タイトルに合わせ、書道有段の阿部未奈(高3)さんが「濃厚は飲み物」の文字を、佐竹青空(そら)(高3)さんがイラストを担当した。阿部さんがこの高校に入ったきっかけは、お姉さんが通っていたことと、ちょうど高1の年に宮城県で共進会が行われる予定だったこと。「ゼロからの勉強でしたが、可愛い牛のことなので、全然苦にはならないです」と笑顔。

 今年3度目の出場となるベテラン、宮城県立水沢農業高等学校は、すべての高校と交流を深めるために、参加校全員にお土産を持参。これを話題のきっかけとして、会話が弾む。

交流会では皆、できるだけ用意した名刺を交換し合い、出会いを楽しむ。同じ道を志す同士、仲間意識は強い。

今年卒業となる3年生に
卒業後の進路についても聞いてみた

岐阜県立大垣養老高等学校 生産科学科の岡田奈美(高3)さんは、兵庫県立農業大学校へ進学。ここで和牛の生産についてさらに学び、地元へ帰って学んだ技術を飛騨牛に取り入れたいと考えている。そんな彼女も、高校入学時にはこのような進路は想像しなかったという。「もともとイルカのトレーナーになりたくて海洋高校に入りたかったんですが、女子寮がなかったために叶わなくて。でもここで先生に出会って、牛との出会いが私の進路を決めるきっかけになりました」

  栃木県立鹿沼南高等学校 畜産同好会の中沼真結(高3)さんは、「おばあちゃんが牛の繁殖農家だったんですが、私が生まれた時に大変だったのでやめちゃったんです。でも私は馬などたくさんの動物の中で育ったので、やはりこの道に進みたいと思っています」。最近ではカメラを持参し、大切な出会いの思い出を残しているのだという。

 鹿児島県立鹿屋高等学校の久保晴暉(高3)くんは卒業後、北海道の酪農学園大学の獣医学部に進む。闘牛を育てている徳之島の実家で幼い頃に見た獣医さんに憧れた。今、その夢は実現に向かって進み始めている。

“繋がり”は強い。

中でも、10代に築いた関係は、無敵だ。
SNSがある現代であればなおさら、これから先たとえ距離が離れていても、互いに情報を共有し合ったり挫けそうになった時は励まし合える仲間となる。

審査の結果には、涙を飲む高校もたくさんあった。しかし、皆、来年度の参加に向けた肥育はすでに始まっている。卒業する牛児たちは夢に向かって新たな道を、そしてその背中を見た後輩たちが、また一歩その歴史をつないでいく。