【牛男子④】体はガッチリ、心はホッコリ。そんな彼が描く素敵な夢とは?
この記事の登場人物
齋藤聡竹下牧場
牧場で働く若者らしい、ガッチリした体つき。でもタマゴ型の顔には、愛嬌たっぷりのスマイルがはじけています。お名前は齋藤聡(さいとうさとし)さん。北海道の東部中標津町の竹下牧場で働く、とても明るくチャーミングな牛男子です。
もくじ
「東日本大震災で痛手を負った酪農・畜産の力になりたい。」
齋藤さんは横浜市の出身の24歳。幼いころから動物が好きで高校は生物工学科に、専門学校でも動物の生態や飼育法を学びました。
「将来は動物園や水族館で働きたいと思っていました」
そんな時に起こったのが、国内観測史上最大の震度と津波を記録し、多くの犠牲者を出した東日本大震災。広がる被害報道を目の当たりにし、齋藤さんも行き場のない憤りや悲しみを抱えます。
中でも彼の目を釘付けにしたのが、被災地の牧場の映像。牛舎や放牧地に残された牛たちのつぶらな瞳、断腸の思いで牧場を去らなければならなかった人々の悲嘆にくれる様子を見て、胸がズキズキと痛みました。
迷路をさまようような塞いだ日々。そんな中、齋藤さんの頭の中にひとつの考えが浮かびます。それは大きな痛手を追った酪農や畜産の世界をもう一度盛り上げてみたいということ。
「牧場で働き、いつか独立して日本の畜産や酪農を引っ張っていこう、そんな思いが浮かんできたんです。その時点で動物園の夢をキッパリと捨て、牧場への就職を希望しました」
その後学生時代のツテをたどって別海町の酪農研修牧場へ。1年間ほど座学や実習などの研修を経て、2014年春、「ここなら間違いない」と研修牧場が太鼓判を押す、有限会社竹下牧場に就職を果たしたわけです。
毎日が変化の連続。だから牧場シゴトはやめられない
搾乳、飼料の調合、餌やり、放牧、敷きワラの交換さらにトラクターを操りながらの牧草収穫などなど、齋藤さんは朝から夕まで牧場の中を走り回ります。
「うちの牧場は『それが牛にとって良いこと?』がテーマ。与える飼料も牛舎の環境も、牛たちが喜ぶことを基準にしているんです。確かに手はかかるけれど、おいしく安全な牛乳は牛たちにストレスのない環境の中で作られるものですからね」
勤務して2年半。新人さんも入社し、齋藤さんもまだ若いながら先輩スタッフに。もう一人前……と思いきや、まだまだと首を振ります。
「生き物が相手だし、最終的には食品を作る仕事でもあるので、とにかく奥が深い。同じことをやってるようで、天候から牛の体調さらに生乳の品質まで、毎日さまざまな変化があります。そのかすかな違いを見逃さず、臨機応変に対応していくのが自分たちの使命。経験不足による苦労もありますけれど、その何倍も楽しいですし、やりがいも感じますね」
独立の夢を支えてくれる将来の奥さんと出逢いた〜い!
さてさて、仕事の話はここまで。ところで齋藤さん、プライベートはどんなことしているんですか?
「つい最近、3LDKの町営公営住宅を借り、念願の一人暮らしを始めたんです。なので、休みの日は洗濯や掃除に追われることも。こう見えて結構マメなんですよ。そうそう、料理にもチャレンジしています。とはいってもカレーが多いですけど(笑)」
それでも時間が空いたら、大好きな車に乗って美しい風景の中をドライブしたり、友人たちを誘って中標津のマチナカに食事に行ったり、飲みに行ったりもするそう。
「仲間と一緒にワイワイ過ごす時間が大好き。どちらかというと聞き役で、他の人を立てることが多いですね。まわりからは『もっと自分を前に出しなよ』なんて言われるんですけどね」
笑みを絶やさない表情、やさしさがにじみ出る口ぶり、細やかな気配り。お話をしていてもその温和な人柄がじんわり伝わってきます。ところで齋藤さん、彼女は?
齋藤さんの案内で中標津町の観光名所「開陽台」へ。見どころはなんといっても、地球の丸さが体感できる330度のパノラマビュー!
「北海道に来て思うのは、景色も牧場の規模も人の心までスケールが広いということ」と、斎藤さん。
あいにくの曇り空でしたが、緑の草原と紅葉のコントラストは見事!
「自分が訪れていない観光地が、まだまだ山ほどあるんです。機会があったら、道東周遊ドライブもしてみたいなぁ」
開陽台のレストランのイチ押しは、新鮮な地元のミルクをふんだんに使ったソフトクリーム。甘いものも大好きという齋藤さんと一緒にパクリ!うん、まろやかでおいしい!
「よく耳にすることだけど、北海道は素材がおいしいですね。何を食べてもはずれがない。これも北海道で暮らす魅力かも」
そんな斎藤さんに気になる質問を……彼女はいるんですか?
「残念ながら…(笑)でもほしいなって思っています」
そんなお年頃ということもありますが、『いつか独立して牧場を作り、酪農や畜産を元気にする』ためには、そろそろ将来の奥様になる方と出会いたいという思いも。
「自分の奥さんになる人彼女に牧場の仕事をしてもらうかどうかはまだ考えていません。どんなことも二人で話し合うような、小さくてもあたたかな家庭を作りたいと思っています」
と言いながら、照れくさそうに頬を赤らめた齋藤さん。
こんなピュアで素敵な男性だもの、出会いさえあればすぐに彼女は出来るはず。取材陣はみなそう感じたのでした。