牛にも人にもやさしい酪農へ、牧場の恵が目指す持続可能な牧場のカタチ

この記事の登場人物
栢本直行牧場の恵
福島県の岩瀬牧場の一角を借りて活動する「牧場の恵(まきばのめぐみ)」は、障害を持つ人と共に歩む“農福連携”の酪農を実践しています。代表の栢本(かやもと)さんが目指すのは、牛に無理をさせない持続可能な小規模酪農のあり方。その挑戦を通じて、人・牛・地域が共に生きる新しい未来を描いています。クラウドファンディングをきっかけに、そのモデルケースを全国へと広げる一歩を踏み出そうとしています。
もくじ
牛と人との“フェアトレード”

「牛から恵みをいただく以上、人間も牛の人生を価値あるものにしたい」。栢本さんはそう語ります。搾乳量を追い求めず、牛の体に負担をかけない飼養方法を模索しながら、牛と人が“対等に尊重し合える関係”を目指しています。牛にやさしい酪農を実現することが、人にもやさしい社会へとつながる。その信念が活動の原点です。
農福連携に込めた想い

栢本さんが農福連携に取り組む背景には、「人と自然、動物が共に生きる社会を作りたい」という強い想いがあります。障害者施設を見学したときに感じた閉塞感や低賃金の現実に疑問を抱き、農業の多様な仕事なら、障害を持つ人の個性を活かせるのではないかと考えました。そこから「酪農×福祉」という、これまでにない挑戦が始まりました。
牧場で働く障害者の方々にも大きな変化がありました。動物と触れ合う中で、無表情だった人が笑顔を見せるようになったり、サポートが必要だった人が自ら積極的に仕事に取り組むようになったり。彼らの丁寧な作業のおかげで牛舎は清潔に保たれ、獣医師や周囲の農家からも「ここまで綺麗な牛舎は珍しい」と高く評価されています。
目指すのは“持続可能な小規模酪農”のモデルケース

栢本さんの描く未来は、大規模化一辺倒ではなく「小規模でも続けられる酪農」。家族経営が可能な規模で牛を育て、地域や福祉と協力しながら6次化を進めることで、誰もが挑戦できる持続可能なモデルをつくりたいと考えています。これは、これからの酪農にとって新しい選択肢を提示するものです。
クラウドファンディングへの挑戦

今回のクラウドファンディングでは、ブラウンスイス牛のミルクを使った新しいチーズづくりに挑みます。世界大会で受賞歴を持つチーズ職人・水野さんと協力し、特別な乳製品を届ける準備を進めています。そのために必要なチーズ工房の設備資金を支援いただき、支援者には完成した乳製品をお届けします。
「食べ物を自分たちの手でつくり、健康に暮らせる社会を築きたい」。栢本さんはそう語ります。一次産業を基盤に、人が集い、共に働き、食を分かち合う場をつくること。そこに障害を持つ人も、牛も、地域の人々も共に生きていける仕組みを育てたい。その夢の第一歩が、今回のクラウドファンディングです。