農高アカデミー

第6回農高アカデミーレポート! 「最先端酪農の今~牧場で働くってどういうこと?」

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「畜産を勉強中の全国の高校生がオンラインでつながり、学べる機会を」ということで始まった「つながる農高プロジェクト」の農高アカデミー。6月6日(日)に開催した第6回農高アカデミーでは、ゲストの丸山純さんに、酪農業界のこと、これから求められる人材などついて一緒に考えていただきました。

▲将来を考える全国の農高生たちが、リアルに“働く”ということについて考えた今回のアカデミー!

<第6回農高アカデミーの様子は、こちらから全編ご覧いただけます。>

<以下、ダイジェストになります↓>

500頭飼養から2000頭規模へ拡大
朝霧メイプルファームについて

丸山 朝霧メイプルファームは、富士山の麓、朝霧高原にあり、今は乳牛450頭、肉用子牛100頭ほどいて、「成長力と組織力」の力で日本を代表する酪農牧場を目指しています。酪農には搾乳以外にも削蹄や餌作り、健康管理などさまざまな仕事があるので、それらを外部委託せず自分たちでできるように、“D・I・Y”を大切にしています。

丸山 知識や技術の「成長」のために、マニュアルはトイレ掃除から牛の診断のことまで300個以上あり、このマニュアルは常にみんなで改善しています。また、従業員全員に削蹄などのセミナーに参加してもらっています。「組織力」ではコミュニケーションも大切なので、ミーティングを随時行い、チャットツールを使って、仕事の相談やアドバイスをしたり、みんなが気軽に職場の改善を提案できる環境を作っています。

あと、「ジョブローテーション」という制度を取っていて、みんなが牧場の全体の仕事を把握しているので、お互いにサポートできたり、休みが取りやすくしています。そうすることで、一人ひとりが“従業員”ではなく“酪農家”になれるのかなと思っています。今は2000頭までの領地を確保して、規模拡大を目指しています。

かなり 規模拡大にあたって、地域との臭いの問題についてどう考えられているのかも聞かせていただけますか?

丸山 すごく良い質問ですね。これはほとんどの酪農農家が抱える問題で、基本的には糞尿問題があるから規模を大きくできないんです。朝霧高原は、国から「農業振興地域」といって農業をするための場所として指定されていて、だからこそできる、という部分があります。

りょうが 丸山さんの小さい頃の夢は何でしたか?

丸山 実は漫画家になりたいなと思ってました(笑)。19歳の時に、集英社に自分の漫画を持ち込んだことがあるんです。本を読むことも好きで、お話を作ったりするのが好きなので、その力が今、本やコラムを書かせてもらったり、従業員に何かを伝えたりする時に役に立っているのかなとは思います。
になりました。

農家件数が減少。
規模拡大傾向にある今の酪農業界について

丸山 酪農が他の畜産業と決定的に違うのは、日本では基本的に絞った牛乳をすべて買い取ってくれるシステムがあることなんです。野菜だったら採れすぎて捨てなければいけない、ということもあるよね。牛乳はさまざまな牧場から一度大きなタンクにすべて集められ、そこから各乳業メーカーに再分配されています。

だから経営が安定して、将来が読みやすいんです。そこが「農業の公務員」と呼ばれている理由です。生産者の数は、かつて40万軒ほどあった農家が今は後継者がいないなどの理由で1万4000軒ほどまで減っています。でも消費量はほぼ変わっていないので、個人酪農家が減る代わりに大きな牧場が牛の頭数を増やし、大規模が増えている状況です。

これからはどんな人材が求められるの?

…まずみんなはどんな牧場で働きたいと思う?

こうき 牛が健康で、従業員さんたちが明るいところがいいですね。

ほのか 牧場だから重労働なことはあると思うけど、特定の人に負担がかからないように工夫されているところがいいです。

たいち 一つひとつの作業にマニュアルがあって、休みがきちんとある環境。あとはいつも同じ作業ではなく、いろんな作業をさせてもらえて、自分の能力を生かしてくれるところがいいです。

あおい 毎日仕事面で自分が成長できる場面があって、飽きない牧場がいいです。

…ではどんな人材が求められると思う?

ほのか 機械など新しい技術などを使えるように学ぶ意欲が高い人かなと思います。

しょうご 知識を持っている人が求められるのかなと思います。

…丸山さんはどう思われますか?

丸山 やっぱり向上心があることかなと思います。経験がなくても、新しいことへチャレンジしたいという意欲があることが大切で、ロボット化・AI化が進み、いろんな仕事がロボットに置き換わる中で、この先人間に求められることは“スペシャリストであること”なのかなと思っています。搾乳要員として雇用された人が、搾乳ロボットを導入したからもう必要ありません、と言われたのでは困りますよね。だからこそいろんな技術を身につけて、特定のスペシャリストを目指すというよりは、2つ以上の高度な仕事ができるようになっていくことが大切かなと思います。

…自分の働きたい牧場探しや仕事の
イメージのギャップを減らすために、今できることは何かあるかな?

こうき 僕は高1の時に、近所の酪農家さんに電話して、1週間ほど研修に行かせていただいたことがあるんですが、その時に自分の思っていた酪農の仕事とは全然違っていて驚いたんです。手搾りをイメージしていたら、自動搾乳機を使っていて。だから実際にいろんな牧場を回って見てみてから選べばいいのかなと思います。

まお 私も昨日初めて外部の牧場さんに研修に行かせてもらったんですが、すごい勉強になって、実際に見てみないとわからないことってたくさんあるなと思いました。

丸山 実は今日、みんなが牛が可愛いから牛と一緒にいられればいい、って明るい面だけを見ている子たちなのかなと思っていたんです。そこに冷たい水をかけてやろうかなと思っていたら、みんなすごくよく考えていて、本当に感動しました。インターン制度も調べればいろいろあると思うので、活用するのはすごくいいことだと思います。熱意や情熱、探究心はどの業界でも役に立ちます。

今日のお話はあくまでも僕の牧場の話で、牧場によっていろんな考え方、多様性があるので、若いうちにいろんな牧場を知って幅を持った方がいいんじゃないかな。酪農って専門的だからこそ、視野が狭くなってしまいがちだから、本を読んで価値観を増やすことも大切なんじゃないかなと思います。僕のおすすめは上橋菜穂子さんの「獣の奏者」です。ぜひ読んでみてください。

■農高アカデミーに参加していかがでしたか?

 かなり(高1)
私の家も酪農家で、小さい頃から家を継ごうと思っていたのですが、最近少し迷いもあって。今日のお話を聞いて、まずはいろんな価値観を増やしてからよく考えて決めようと思いました。

 ほのか(高3)
これまでは漠然と“こんな牧場で働きたいな”くらいしか考えていなかったのですが、単に牧場の規模や手当が良いかどうかだけでなく、牧場によって考え方も違うんだなと学びました。

 あおい(高2)
牛関係の仕事に就きたいとは思っていたのですが、お話を聞いてその気持ちが強まりました。従業員として働くなら、どこの牧場にも雇ってもらえるような柔軟な人になりたいと思います!

 ともき(高3)
牛が可愛いというだけ牧場に働きに入るのでなく、もっと他のことにも興味を持って仕事をしていくことが大事なんじゃないかなと思いました。

 まお(高2)
話を聞く前は、500頭規模の牧場にはマニュアルがあるとは聞いたことがあったのですが、従業員の成長などをしっかり考えておられる牧場さんもあるんやなと知れたことが新鮮でした。

 若林先生(埼玉県杉戸農業高等学校)
採用する側のお話を聞かせていただけたことは生徒にとっても良い機会でした。マニュアル化は、多くの生徒で動物を見ている本校でも作業を一本化するために有効だなと思います。

 梅野先生(埼玉県熊谷農業高等学校)
中でも印象的だった「2つの愛」のお話は、産業動物として牛を見る一方で、愛情を持って仕事をするという、動物を扱う立場としてとても大切な気持ちを表しているなと感じました。

次回農高アカデミーは7月下旬に開催予定!
ゲスト:眞榮城美保子さん(繁殖農家)

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