夢は独立!次世代リーダー育成塾にかける若手酪農家の思い
この記事の登場人物
松崎 友寛清水牧場
以前、当サイト内で「第2期 次世代リーダー育成塾」の無料モニター募集企画を行いました。そこで見事のモニターに当選された酪農家の松崎友寛さんにお話を伺いました。
もくじ
夢を諦めた過去。若手酪農家が考える「従業員が定着しない本当の理由」とは
松崎さんは愛知県刈谷市で三代にわたって続く「清水牧場」で従業員として働く26歳の若手酪農家。 子どもの頃から動物が好きで、動物に関わる仕事がしたいと考え、高校を卒業後は農業大学校に進学して酪農を学びました。 その後、農業大学校を出た松崎さんは、すぐに清水牧場に就職したわけではありません。独立を夢に見ながら酪農の世界に飛び込んだ松崎さんは、理想と現実の狭間で揺れ、紆余曲折を経てようやく現在に至ったようです。
「農業大学校を卒業してからいくつかの牧場で働きましたが、どこも長くは続かず……一度はこの業界から離れ、半年ほどマンションの内装の仕事をしていたこともありました。しかし、酪農家として独立するという夢を諦めきれず、学生時代に実習でお世話になった清水牧場の主人に相談をすると、『うちにおいで』と優しく声をかけていただけて、再び酪農家として復帰できました」
一度は酪農業の中で挫折を経験した松崎さん。複数の農場での経験を経て、酪農の従業員が定着しない“本当の理由”を肌で感じていました。
「私が一度酪農を辞めようと思った最大の理由は、やりがいを感じられなかったから。他にも同じような理由で仕事を辞めていく人を何人も見ました。もちろん、牛は相変わらず大好きだし、酪農の仕事が楽しいことも変わりません。しかし、経営者側がなかなか仕事を教えてくれず、任せてくれないので、いつまで経っても従業員は“作業者”の域を脱することができませんでした。なぜ仕事を教えてくれないかというと、それは意地悪ではなく、忙しくて教える時間がない、もしくは、教え方がわからないから。経営者が管理側の立場に回らず、現場で勘に頼ったオペレーションを続けてきた結果、業務の平準化ができず、後継者も育たず、生産性も上がらないという悪循環を繰り替えしている農場が本当に多いのだと痛感しました」
酪農の経営に興味を抱き、清水農場で始めた“小さな改革”
自分自身の経験から、後継者が育ち、生産性が上がる酪農経営の正しい在り方を考えるようになった松崎さん。 清水牧場で日々の仕事に勤しむ傍、ゼロから独学で経営を学んだり、先進的な取り組みをする酪農家の集まりに参加をして意見を交わすなど、自分の中でできる取り組みを始めるようになりました。 そして最近は現場レベルで“小さな改革”を始めたそうです。 「女性の従業員と哺乳の状況をメモするようにしました。子牛に哺乳したミルクの量や時間、健康状態などを記録しています。これまでは哺乳する量に決まりがなく、その都度『だいたいこれくらい』と感覚であげていたので、ときには小牛が下痢になってしまうこともありましたが、その原因を追求することもありませんでした。そのため、子牛の品質は下がり、同時に飼料もかなりのロスが出ていたのです。記録をとり、オペレーションを平準化させることで、売り上げUPやロスの削減ができ、同時に新しい人材を迎え入れるときの教育もしやすくなると思います」
想像以上に実践的!これからの次世代リーダー育成塾に期待すること
酪農の経営に熱い関心を寄せる松崎さんは、「次世代リーダー育成塾」の存在を知るとすぐに参加を決意。
現在(取材日時点)1回目の講座を受講したところですが、率直な感想とは?
「思っていたよりもかなり内容が濃くて、正直驚きました。開催地が北海道なので、もう少し旅行気分かと思っていましたが……朝から夕方まで講義がびっしりでお昼休憩は40分となかなかスパルタ(笑)私のように本気で経営を学びたいと思っている人には最高です。1回目は経営コンサルタントの深澤宏さん(株式会社タナベ経営)が経営のノウハウを解説してくださいました。『会社を成長させたいのであれば倒産を知れ』ということで、失敗事例などをもとに具体的な経営戦略を紹介してくださって、非常に実践的な内容でした。自分で考えて発表するような時間もあり、心地よい緊張があったのも良かったです。今後は他の参加者さんとの交流を深めながら、特に『人材育成』について学んでいきたいです」
それでは最後に、松崎さんに今後の夢をお聞きしました。
「いつかは空き牛舎などを引き継いで自分の牧場をもちたいです。そこでは全従業員が働きやすく、週休2日で休める職場環境を実現したいですね。また、行政機関や市町村とも連携して、シルバーの方や1人暮らしで孤立している方も働き手として受け入れるなど、地域と寄り添った酪農を目指します。そのためには、今は経営を学ぶことが必要不可欠。次回の『次世代リーダー育成塾』も楽しみです!」
松崎さんのまっすぐと見つめる瞳から「従業員が働きやすい酪農を実現したい」という熱意が伝わってきました。
2020年の3月まで予定されている全6回の育成塾が終わるとき、松崎さんは何を学び、何を思い、何を感じるのでしょうか。
来年の春に、またお話を伺いたいと思います。
清水牧場
- 営業時間:見学/10時~14時 体験/5時45分~10時半
- TEL:0566-21-6023
- 定休日:ファシリテーター不在の時
- アクセス:〒448-0813 愛知県刈谷市小垣江町明門89-1