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福島県会津の歴史と文化とともに育った幻の地鶏「会津地鶏」

この記事の登場人物

酒井 毅
有限会社 サカイフーズ
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福島県会津地方に500年以上も前から生息していたといわれる会津地鶏。

会津地鶏は、会津地方の歴史のさまざまな場面において人々の暮らしや文化と密接に関わってきました。

そんな伝統的な地鶏の普及に尽力しているのが、会津を代表する養鶏農家・有限会社サカイフーズさんです。

会津地鶏の歴史や伝統文化との関わり、そして会津地鶏の素晴らしさについて、代表取締役社長の酒井毅さんに教えていただきました。

会津地鶏と会津の歴史

会津地鶏の歴史は、その昔、会津の地に平家の落人が観賞用として鶏を持ち込んだことから始まったといわれています。

当時は武士のたしなみとして鶏を飼うことが流行しており、鶏を飼うのは高尚な趣味という考えがあったとのこと。そして、自分の鶏をできるかぎり良いものにするために品種改良が行われ、その結果生まれたのが会津地鶏でした。

それから長い年月の間、会津地鶏の血脈はこの地で静かに受け継がれ続けてきました。

しかし、会津地鶏は身体が小さく産卵も少ない品種であるため、種の存続は危機的状況にありました。
そのため、昭和62年から63年にかけて福島養鶏試験場が種の増殖に着手し、種の維持に乗り出したのです。

同時に、鹿児島大学で行われた血液鑑定によって、会津地鶏が他の鶏とは完全に別種であることも確認されました。

このような経緯を経て、平成3年に福島県が会津地鶏の交配様式を決定。

▲会津養鶏協会「会津地鶏」パンフレットより

現在では県内の養鶏場が会津地鶏を飼養しています。

会津地鶏と郷土芸能との関わり

会津地鶏を前にして、まず目を惹かれるのはその美しい羽装。

そんな会津地鶏のオスの尾羽根は、500年以上前から会津地方の五穀豊穣を願う郷土芸能「会津彼岸獅子」に用いられていました。

出典:会津養鶏協会 公式サイト

この「会津彼岸獅子」に関して、会津に伝わる有名な話があります。

時は1868年、明治政府を樹立した新政府軍と旧幕府勢力および奥羽越列藩同盟が16カ月もの間戦いを繰り広げた戊辰戦争でのこと。

会津城に籠城していた会津藩主・松平容保の命で、会津藩総督・山川大蔵は会津若松城に帰城することになります。
しかし、すでに行く手は新政府軍に取り囲まれています。

そこで新政府軍の包囲を突破するために山川大蔵が行った奇策が、「彼岸獅子」とともに大楽団を結成し、敵の包囲のなかを堂々と行進して城中に入るというものだったのです。
あまりにも大胆なこの作戦に、新政府軍は呆然と見送るのみ。帰城は無事に成功し、彼岸獅子の逸話として現代にまで語り継がれています。

幻の鶏を守り、ブランド化を促進。「会津養鶏協会」とは

会津地方の歴史と文化に密接な関わりを持つ会津地鶏。

そんな会津地鶏の普及とブランド化を目的として、会津地鶏の生産者を中心に結成されたのが、会津養鶏協会です。

平成17年の結成以来、県と連携して会津地鶏の鶏肉・鶏卵の生産供給の促進、飼育・管理技術の向上などに取り組んでいます。
毅さんも15年ほど前から会員になり、活動に参加。

「協会では、会津地鶏をブランド化するために必要な活動に力を注いでいます。補助金の受け皿になったりポスターを作ったりなどの活動のほか、県と協力して飼育方法・エサ・品種改良などについての試行錯誤していくのも協会の大切な仕事です。」

平成18年には、会津地鶏を商標登録し、ロゴマークも作成。

現在では、福島県内はもちろん東北や北関東、東京などで会津地鶏の卵や肉が販売されています。

また、会津地鶏のPRの場として「会津地鶏まつり」を開催。

昨年は会津地鶏卵の無料配布や丸焼きの試食、会津地鶏を使った料理の販売などを行い、たくさんの人が訪れたそうです。

このほか、「会津地鶏味の会」という会津地鶏料理を提供する飲食店が集まる会も設立され、会津地鶏の普及に注力中。

このように、会津地鶏のブランド化は、会津養鶏協会を中心に関係各所が連携しながら徐々に進みつつあります。

そんな会津地鶏の魅力を伺ったところ、

「会津地鶏は、とにかく品種が良い鶏なんです。肉も卵もコクと旨味が強くて、本当に美味しい。これは、品種の良さゆえだと思っています。さらに、現在の会津地鶏は品種改良によって身体が大きくなり、エサをたくさん食べるようになりました。それもまた会津地鶏の美味しさの秘密ですね。」との答えが返ってきました。

▲会津地鶏の卵。産卵数が一般的な鶏より少ないため、コクや美味しさが凝縮している

今後は、他のブランド鶏のように卵専用の会津地鶏を作りたいという毅さん。また、会津地鶏を使った名物料理も開発していきたいとのこと。

長きにわたって会津地方の歴史と文化によって育まれてきた会津地鶏。今後も、会津地方が全国に誇るブランド鶏として、ますます大きく高く飛躍していくことが期待されています。

有限会社サカイフーズ

http://www.sakai-egg.co.jp/ 

  • 営業時間:ー
  • TEL:0247-36-1145
  • 定休日:ー
  • アクセス:福島県石川郡浅川町大字山白石字本内23