「闘牛女子」として。女性だからこそできる闘牛の魅力の伝え方
この記事の登場人物
久高 幸枝フリーカメラマン
「闘牛」と聞くと、多くの人はスペインをイメージするのではないでしょうか。
しかし、実は日本でも各地で古くから闘牛が行われています。
そのひとつが沖縄県。特にうるま市には県内初のドーム型闘牛場「うるま市石川多目的ドーム」があり、月に数回に行われる大会にはたくさんの人たちが足を運びます。
もくじ
そんな沖縄県で、闘牛を広める活動しているのが久高幸枝さんです。幸枝さんは牛を飼育する家系の長女として生まれ育ち、現在は沖縄の闘牛を世に広めるべく精力的に活動しています。
そもそも、沖縄の闘牛ってどんなもの?
沖縄の闘牛の起源は定かではありませんが、少なくとも明治時代の後期からは闘牛が行われていたといわれています。戦争で一度中止となったものの、その後地元の人たちの思いにより復活。現在も沖縄全体で400頭ほどの闘牛が飼育されており、定期的に闘牛の大会も開催されています。
▲県内初のドーム型闘牛場「うるま市石川多目的ドーム」。年間約20回の闘牛大会を開催している
スペインの闘牛が「人対牛」で行われるのに対し、沖縄を含めた日本各地に伝わる闘牛は「牛対牛」。“闘う”という本能を残した牛同士を闘わせ、どちらかが逃げたら勝敗が決まるという、相撲に近いルールです。
「沖縄では一昔前まで農耕の目的で牛が重宝されていて、一家に一頭は牛がいました。畑で牛同士がじゃれあっている様子が闘牛の起源になったという話もあります。」と幸枝さん。
また沖縄では、農耕用の牛が年老いて役目を終える時、最後は皆で食べることが弔いになると考えられていたそう。
「人間が命をいただく前に神様に捧げる。牛にはそういった“儀式”としての意味もあったのだと先輩方から教えられました。」
幸枝さんと闘牛の出会い
沖縄の伝統文化である闘牛と幸枝さんとの出会いは、幼少期にさかのぼります。
幸枝さんの家は代々続く牛飼いの家系。幸枝さんは弟さんと一緒に子どもの頃から闘牛を育ててきました。
「小学校低学年のある日、弟と2人で父に突然連れて行かれました。車で着いた先は、知り合いの闘牛仲間の牛舎。そこでたくさんの仔牛がいる中から『一頭ずつ選んでいいよ』と言われ、私と弟は初めて自分の牛を買ってもらったんです。」
幸枝さんは自分の牛に『昇龍隼』と名前をつけ、それからは学校が終わるとまっすぐに家に帰ってはやぶさの世話する生活をしていました。
当時は、どれだけ運動させて、どれだけいい草を与えて、どれだけ綺麗にしてあげるか、弟と必死で争っていたといいます。
「闘牛女子」として闘牛のPRに尽力。女性ならではの視点で闘牛を盛り上げる
幸枝さんは現在も闘牛を育てながら、“闘牛女子”として沖縄の闘牛を盛り上げ魅力を伝えるべく活動をしています。
フリーのカメラマンとしても活躍している幸枝さんは、2013年に「写真集闘牛女子。」を出版し、2017年には「写真集闘牛女子。 2」を出版。
また、日頃から「闘牛女子」とプリントされた自作のポロシャツを着て歩き、広告塔を担っています。
このほか、最近では「チーム闘牛女子」と「チーム闘牛男子」を発足し、サポーターの数は県内だけで50名以上。チーム闘牛女子は、闘牛の試合が終わった後、リングの中でパフォーマンスを披露したり、観客にグッズやお菓子を配ったり、さらには「闘牛女子杯」という大会を企画するなど、これまでの闘牛の歴史ではなかった試みで新しい客層を集めています。
しかし、ここで気になることが。
自身が闘牛を育てている幸枝さん。
女人禁制の伝統があるため、闘牛士として自分自身が試合中のリングに立つことはできず、試合では弟さんが牛のセコンドを務めます。
社会における女性の活躍推進が叫ばれる昨今ですが、幸枝さんはこうした闘牛の伝統をどう捉えているのでしょうか?
「よく誤解されがちですけど……私たち闘牛女子の目的は、闘牛で女性の活躍の場を広げることではなく、闘牛そのものの魅力を多くの人に伝えること。闘牛の主役はあくまで“牛”なんです。その舞台に私たちが立とうという気持ちはありません。」
しかし、と幸枝さんは続けます。
「試合が終わった後のパフォーマンスや、生の試合を目の当たりにして感じた闘牛の良さをたくさんの人に紹介することは女性の得意分野。これからの時代で闘牛を盛り上げていくためには、私たち女性の力が必要だと信じています。」
出過ぎることはなく、しかしただ裏方に回るのでもなく、自分のアイデアで、自分たちにしかできない方法で、闘牛の発展を後押しする。その姿勢に女性ならではのしなやかさを感じました。
2016年より沖縄闘牛カレンダーを発行。5年目になる来年を最後にカレンダー作成を終了します。
皆さんの期待に応えられるような素敵な作品に仕上げますので是非、お楽しみに。
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