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映画『闘牛女子。』沖縄国際映画祭で上映!ひーぷー監督に久高さんへの想いを聞く

この記事の登場人物

真栄平 仁
タレント
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闘牛の盛んな沖縄県・うるま市に育ち、写真家として闘牛の魅力を発信し続けた“闘牛女子”久高幸枝さんの実話をモチーフに、親の代から牛たちと暮らし、牛に魅了されてきた主人公・友美と削蹄師を目指す青年の心の成長を描く短編作品『闘牛女子。』が、第13回沖縄国際映画祭で上映される。監督を手がけたのは、タレントの“ひーぷー”こと真栄平仁さん。作品に込めた想いを伺いました。

久高さんのエピソードはどれも牛への愛情に溢れていた

―――久高幸枝さんは以前どっこいしょニッポンでも取材させていただいて、いまだに皆さんに読んでいただいている人気の記事です。久高さんの生き様を20分という短編にまとめられるのは、大変な作業だったんじゃないかなと思うのですが、そのあたり、いかがでしたか?

真栄平 そうですね。僕も脚本を書く前に妹の彩さんや、お父さんお母さん、同居されている削蹄師のお弟子さんに取材をさせていただきました。3時間以上は話を聞いたかな。それを文字に起こして物語を組み立てていったんですが、最初20分のつもりで書いた台本が「40分はあるよ」って言われて(笑)

―――倍ですね(笑)

真栄平 舞台の台本はしょっちゅう書いているんですが、映像の台本の尺感がわからなかったので、慣れているプロデューサーの方やベテランの助監督さんに教えてもらいながら進めたのですが、どう20分にまとめるかというところが最初に苦労したところですね。

―――今作『闘牛女子。』の中で真栄平さんが一番伝えたいと思っておられることは何ですか?

真栄平 幸枝さんの“牛に対する愛情”ですね。暑かったら扇風機を当ててあげるとか、牛に対する愛情がとにかくハンパなくて。取材でご家族からお聞きしたエピソードもすべて牛に対する愛情の話だったので、そこが一番だなと思いました。

―――他に取材の際に印象的だったことはありますか?

真栄平 僕もうるま市出身で、実家の近くにも闘牛場がありますし、小さい頃から家の周りを散歩させている闘牛の姿などは見かけていたのですが、牛を飼っている人がこんなに手間暇と愛情をかけて育てているんだなということは今回話を聞いて初めて知りました。

―――うるまの方々にとって闘牛は日常的に見に行かれているんですか?

真栄平 そうですね。僕の場合はこの映画を撮ることになって、小さい頃に地元の闘牛場で見て以来初めて見たのですが、大会は定期的に開かれていますね。

―――飼育者の方々の話を聞いてから改めて見る闘牛は、いかがでしたか?

真栄平 まず牛ってこんなに大きかったんだな、と迫力に驚きました。あと闘牛ってチームなんですよね。老若男女、たくさんの人たちがチームで1頭の牛を育てていて、試合の後は勝った牛の周りに同じユニフォームを着たチームのメンバーが集まってくるんです。多い時は20人くらい。その光景にも、“こんなに関係者がいるのか”とびっくりしました。

―――以前幸枝さんも「牛と人との関係性が見える瞬間を撮りたい」とおっしゃっていました。

真栄平 2月に『写真集 闘牛女子。』の3冊目が発売されたのですが、闘っている牛の迫力が写真に収められていて、あれは、ずっと見続けて「今だ」と思った瞬間にしか撮れない写真だなと思うし、一方でファミリーの集合写真もたくさん載っていて、一頭の闘牛の周りに、どれだけその牛を可愛がっている人がいるかというのが見えるんです。

―――牛も家族なんだなというのがすごく見えますよね。

真栄平 本当に家族ですね。闘牛って入場曲も決まってるんですよ?

―――そうなんですか!? プロレスみたいな感じですか?

真栄平 そうそう。人によっては生でラッパを鳴らしながら入ってくる人もいたり。

削蹄師見習いの19歳のお弟子さんとの出会い

―――映画の内容についても教えていただけますか?

真栄平 幸枝さんをモチーフにフィクションの形にしているのですが、ほぼ、妹の彩さんと削蹄師のお弟子さんから聞いたエピソードを入れています。架空のエピソードは1個だけで、同居していることにしているお弟子さんは、実際は幸枝さんが亡くなった後に住み込みで働きだしたという点だけですね。

―――そうなんですね。

真栄平 僕はこの削蹄師の子の目を通した幸枝さん、という設定で物語を書いたんですが、実際、亡くなる前に最期に幸枝さんに会っているのがこの子なんです。その時にどんな話をしたかもセリフに入れています。

―――実際に会われて、その削蹄師のお弟子さんを軸にしようと思われたんですか?

真栄平 そうですね。19歳の子なんですけど、めちゃくちゃ良いキャラなんですよ(笑)。僕が幸枝さんのご実家に取材に行って、仏壇に手を合わせて、お父さんお母さんに話を聞いていたら、お父さんと僕が名刺交換しているのを見ていたんですね、「俺も」って、段ボールを引きちぎってきて、そこに「削蹄見習 ◯◯」と自分の名前と誕生日を書いて、名刺がわりに僕に渡してきたんです。

―――めちゃくちゃユニーク! 良いキャラですね(笑)

真栄平 そうなんです(笑)。映画にもそのシーンを入れたんですが、その子とも幸枝さんのどういうところがすごいと思うか、もし生きておられたらどう言われていたと思うかといった話をして。

幸枝さんは闘牛に携わるうるま市民の “マドンナ”的存在

―――そもそも沖縄国際映画祭への出品作に幸枝さんをテーマに描こうと思われたきっかけは何だったんですか?

真栄平 沖縄国際映画祭には地元を盛り上げようというコンセプトがあって、今年で13年目になるんですが、昨年映画のテーマを何にするか考えていたところに、幸枝さんの訃報を聞いたんです。もちろん面白い方がいるなと知ってはいたんですが、実際にお会いしたことはなくて。そこで地元が同じうるま市だし、これは僕が撮らないといかんな、という使命感が生まれました。

―――地元の方にとっても嬉しいですよね。

真栄平 だから役者もなるべくうるま市の人にこだわって、タレントとか芸人とかラジオパーソナリティとか、足りない場合は僕の劇団員から入れて。

―――撮影のチーム感も強くなりそうですね。

真栄平 そうなんです。うるま市の結束というかね(笑)。「ひーぷーが映画撮るってよ」ということで、地元の方も皆さん協力してくださって、休憩所に公民館を使わせてくださったり、牛を飼っている場面も久高さんの知り合いの牛舎で撮らせてくださったりして。でも幸枝さんの力が本当に強かったと思います。牛飼いの方々は「幸枝のためだったら何でもやるよ」という感じで。お父さんも弟さんもずっと撮影の現場に立ち会ってくださって、僕らは牛を扱えないので、見えないところでずっと牛を見てくださっていました。

―――うるま市の方々にとって、久高幸枝さんはどういう存在だったのでしょうか?

真栄平 うるまは闘牛をやっている人が本当に多いので、闘牛をやっている人たちや牛を飼っている人たちの間では、本当にマドンナみたいな存在だったんじゃないかと思います。闘牛をやっている若いお兄ちゃんたちにとっては“姉御”のような。“闘牛女子”という言葉にぴったりですよね。

―――最後に、改めて映画に込めた想いを聞かせていただけますか?

真栄平 これは彩さんがおっしゃっていた言葉でもあるんですが、本人はこんなことは言わないだろう、とか幸枝さんの生き方から外れた撮り方は絶対にしたくないなという想いで撮りました。だからできるだけ幸枝さんの言葉や言い方は、リアルに再現するようにして。台本も上がった段階ですべて彩さんに見ていただいたのですが、「5回笑って1回泣いた」とおっしゃってました(笑)

―――次は長編も撮りたいという気持ちも生まれているのでは…?

真栄平 削ってしまった良いエピソードもたくさんありました。人の人生なので20分ではごく一部、断片的にしか表現できないなとは思っているので、これがもし評判が良ければ長編も撮りたいなとは思いますね。

○「島ぜんぶでお~きな祭 第13回沖縄国際映画祭」
4/17(土)~18(日)
『闘牛女子。』
上映は4/17(土)10:10~
※『こんな、菊灯りの夜に』と同時上映
桜坂劇場 ホールA
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©Okinawa Prefectural Government. All Right Reseved.

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○『写真集 闘牛女子。3』
久高幸枝/ボーダーインク
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