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放し飼い=安心安全とは限らない?価格の優等生「卵」を支える最新養鶏事情

この記事の登場人物

倉持産業 株式会社
倉持産業 株式会社
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わたしたちの食生活で欠かせない食材といえば、「卵」。

栄養豊富で「完全食品」といわれていると同時に、その値段は“価格の優等生”と評されるほど変動が少ないことでも知られています。

そこで今回は、卵の栄養価や安全性を保ちながら安定した価格を実現するためには、どのような生産者の努力と工夫があるのか、最新の養鶏事情を取材しました。

42万羽の命と卵の安全を守る徹底した衛生対策

卵の生産量で日本一を誇る茨城県※1。

その常総市に本社を構える倉持産業株式会社は、会社全体で1日に120万個もの卵を出荷する養鶏業者です。

緑豊かな東茨城郡にある養鶏農場では、およそ42万羽の鶏を飼育しており、通常のケージ飼育のほか、「平飼い」という飼育方法をいち早く採用。安全で美味しい卵を出荷するとともに、省エネや環境問題にも積極的に取組んでいます。

事務所で出迎えて頂いたのは農場長の方と、農場長代理の方。

挨拶もそこそこに、さっそく鶏舎を取材しようとした私に「まずはこちらを着てください」と、新品の上下のつなぎとマスクとヘッドキャップを差し出されました。

農場内に菌やウイルスが入るのを防ぐため、作業員はもちろん、訪問者も徹底した防疫に配慮しなければいけないのです。靴も専用の長靴が用意され、所定の場所で毎回消毒します。

「もしも鶏舎内に有害な菌が入れば、卵の表面に付着したり、鶏を通して卵の中に入ってしまう可能性もあります。鳥インフルエンザなどから鶏の命を守ることは当然ですが、卵の安全生を守るうえでも農場内を清潔に保つことはとても大切なのです。」と、農場長。

安全な卵のヒミツは、鶏のストレスを減らすこと?

現在の日本の法律では産卵期間中の鶏に抗生物質を与えることはできません。つまり鶏が病気になったら、事実上治療はできないのです。鶏が病気になるリスクを減らし、かつ卵の価格を維持するため、通常は鶏をケージで飼育します。

ところが倉持産業さんでは、通常のケージ飼育を残しつつ、あえて鶏の自由度が高い「平飼い」や「エンリッチドケージ」と呼ばれる新しいケージ飼育にも挑戦しています。

「『平飼い』とは、読んで字のごとく鶏を平らな場所に放し飼いで飼育する方法です。鶏が自然に近い状態で生活できて運動もできるから、より健康的な飼育ができるとされています。でも単に外で放し飼いにするだけでは感染症にかかるリスクがあります。というのも鶏は動くものは何でも口にする習性がありまして、そこには寄生害虫がいる可能性もあるわけです。」

そのリスクを回避するために、倉持産業では平飼い専用の鶏舎をつくり、より安全な環境で飼育できるよう工夫しているんだとか

また、「エンリッチドケージ」とはヨーロッパで発案された最新の養鶏ケージで、従来のものに比べて鶏が自由に動ける範囲が格段に増えています。

「平飼い」も「エンリッチドケージ」も、ストレス軽減や運動不足の解消など、鶏の健康状態に気を配っているのが特徴です。

鶏や環境に配慮した飼い方が、人や地球に優しい循環を生み出す

今回の取材で驚いたのは、養鶏場内のきれいさと、臭いのなさ。

実際に鶏舎の中にもお邪魔しましたが、真夏だというのにハエなどの虫も飛んでいませんでした。よく見ると、鶏舎はすべて高床式になっていて、鶏糞は網目状の床から下に落ちるようになっています。だから鶏の生活するエリアはいつも清潔。

「予防すれば臭いも虫も発生しない。手間をかけることで薬剤を使わずに害虫や病原菌から鶏を守ることができるのです」

こう話すのは農場長代理の方。

鶏糞を一日に3回も清掃することで悪臭や害虫の発生を抑え、鶏たちは衛生的な環境で産卵できます。なお鶏や卵に配慮して、鶏舎内だけでなく農場内の環境の管理も徹底しているそうです。

ところで先ほど回収された鶏糞はどこへいくのかというと、同じく場内にある堆肥場で発酵させたのち、鶏糞堆肥として販売されています。

こちらも卵と同じくらい好評で、2015年には県のコンクールで県知事賞を受賞したそうです。

飼い方を工夫することで鶏は健康的になり、それが産卵数の維持や卵の安全性、ひいては卵価格の安定につながります。

同時に鶏糞の発酵処理や堆肥などの再利用は、臭いに悩まされることのなくなった地域環境のみならず、地球全体にとっても有益な循環を生みだしているのです。

※1「鶏卵流通統計調査(平成26年)」(農林水産省統計部)より

倉持産業株式会社 

くらもちさんぎょうかぶしきがいしゃ

〒303-0044 茨城県常総市菅生町683-1
【TEL】0297-27-1131(代)
【FAX】0297-27-1314