人材育成 /次世代リーダー育成塾 <第5回>
No.327
はたらく
特集 集え、志し高き後継者たち! 農場経営に本格的な経営学を取り入れよう
次世代の牧場経営をリードしていく皆さんを応援するため、経営の「武器」になる実践的な経営学を、6回にわたってお届けしてきた特別企画も今回で最終回となります。第6回のテーマは、『アクションプランの設計』。経営のプロフェッショナル、タナベ経営の深澤さんによる最後の講義のスタートです。
酪農、肥育農家向け経営学セミナー「次世代リーダー育成塾」塾長、タナベ経営コンサルタント。経営のあらゆる課題解決において実績をあげている。売上げアップ、利益アップ、赤字脱却、人材育成など幅広い成果を上げ続けており、様々な業種での経験を活かしたコンサルティングを武器とする。
早いもので、最終回となりました。今回は、『アクションプランの設計』です。アクションプランとは、目的や事業計画に向けて「いつまでに」「何を」「どうするのか」を決め、実際に行動に移していくことです。大切なのは、プランをより具体的につくること。ではさっそくその方法を学んでいきましょう。
講義の1回目からを振り返りながらアクションプランの設計に必要なことをご説明します。事業を行うには、今行なっている事業が何のためにしているのか(=経営理念)という企業哲学を持つことが必要だとお話しました。
そして、その哲学からブレることなく、自分はどんな事業を確立していきたいかのビジョンイメージを持つことが大切です。
しかし、そのイメージは、単なるイメージではいけません。事業を継続し、維持していくためには、売上と利益のバランスがきちんととれていないと倒産してしまうからです。イメージを持ったものに対し、それが事業として成り立つかどうかを具体的な数字で計画していかなければいけません。そのために重要なのが、計数を把握することです。
4回目の講義で、計数には、損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)、資金繰り表の3つがあり、すべての計数に目的があるとお話しました。それらをしっかり把握して、ビジョンに沿った数字計画(=お金の管理)を作成してください。
売り上げの多い少ないに関わらず必ず発生する一定額の費用(=固定費)として人件費があります。将来的に人件費にいくらかかるのかを予測を立てるには、ビジョンを一緒に実現できる人員計画を作っていく必要があります。人は確かに必要ですが、むやみやたらに増やすと固定費がかさみ、出せるべき利益を圧迫することにもなります。最低限の人数で効率良く経営していくために重要になってくるのが5回目でお話した人材育成なのです。
上記の3つに加えて、アクションプランには、経営者の想い(魂)がこめられていないといけません。その想いとは、「何としても成し遂げる!」という意志を持つことです。
本田技研工業の創業者の本田宗一郎氏は、3人で創業した時から、世界で1番の本田になるという意志を持ち続け経営をし続けてきました。その結果、世界中で愛されるメーカーへと飛躍していきました。さらに、宗一郎氏の亡き後も、彼の意志は現在にも受け継がれています。そのように後世にまで受け継がれていくほどの強い意志を持てるかどうか。
自問自答してみてください。
意志が経営理念とリンクしているか。
その想いを貫けると信じられるのであれば、まず、5年間のファーストステップ事業計画をつくってみてください。
その熱量の高い事業計画こそが、アクションプランです。
ここから5年間の事業計画を具体的にどのように作成すれば良いか説明していきます。
STEP 1:事業の目的・動機を明確にする。
なぜその事業を行うのか、何を実現させたいのかを明確にしてください。
STEP 2:セールスポイントを明確にする。
事業の売上を作り上げる、商品のサービスの強み、弱みを正しく把握しましょう。
STEP 3:パートナーを明確にする。
想定される販売先、仕入れ先、外注先などを明確にします。
STEP 4:必要な設備、資金調達方法を明確にする。
事業に必要な設備、人材をどうやって確保するのか計画します。
STEP 5:「お金」の見通しを立てる。
STEP1〜STEP4を踏まえて、5年間の損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)、資金繰り表を作成する。
※1年目だけは損益計算書(P/L)、資金繰り表に関しては月別にも作成。その際、想定した数字の根拠もきちんと記載することが大切。
STEP 6:数字の目標が達成される仕組みを作る。
STEP5で出した数字を達成するためのシステムを整えます。
ここまでのすべてのSTEPができて初めて、事業計画(=アクションプラン)ができたといえるのです。
それぞのフェーズの注意点をさらに細かく解説していきます。
解説)STEP1〜STEP4
事業を具体的にイメージできる段階です。ここで具体的イメージのできない事業は必ず失敗するので、やめるべきです。つまり、この4つのステップが明確にならないなら、その事業に踏み入れるべきではない、ということです。
解説)STEP5
金融機関に借入をお願いする時には、融資担当の方に具体的な数字で事業の説明が必要です。それを経営トップができなければ信用されません。信用されない=融資が難しいということです。逆に、きちんと説明できれば、信用も増し、融資金額の金額幅が増える可能性も出てくるのです。STEP5の具体的な作成方法については、4回目の講義を読み返してください。
解説)STEP6
「できたのか・できなかったのか」をチェックのしやすいものを用意しましょう。もし可能なら、数字目標(定量評価)が設定できれば良いですね。そして、『誰が』『いつまでに』『どの様に』を意識したものを作るようにしましょう。『誰が』は、決して個人レベルでなくて、グループ、部門レベルでもOKです。それを年度別に作成し、1年目に関してはさらに細かく月別に作成することをオススメします。
以上が、実現できるアクションプランの作り方です。
ぜひ、参考にして頂き、経営者ご自身が納得のいくものを作成していただければ幸いです。
全6回にわたる授業はいかがでしたでしょうか?ご意見ご感想、ご質問はぜひこちらまで声をお寄せください。ご質問については、「どっこいしょニッポン」のfacebookページでピックアップしながら随時お答えしていきます。最後までお読みいただきありがとうございました!